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朝を歩け。  作者: 維酉
1st Album【東へ!】
119/176

114 さかな

「え、これ、釣れんのー?」


 しお、まったくといっていいほど釣れない。かれこれ一時間である。


 釣りにきていた一年生に合流し、しお、教えてもらったのだが、うまくいかない。


 一方のみき、ゆか、どちらも一尾は釣っている。それで満足して、さきほど海辺の散歩にいった。


「あたしだけ、まったく釣れねーんだけど……」

「な、なんででしょうねっ……?」


 いいつつ、かうな、ヒットする。きたきた! と、たのしげに。


「だいじょうぶです、ちゃんしお先輩」と、近くのシー。「わたしも朝からいますが、まったく釣れていません」

「なにもだいじょうぶじゃねー」

「ほ、ほんと、どうしてだろうね……?」


 ねね、リールを巻くかうなを見守りつつ、首を傾げる。


 ちなみに、午前中にいちばん釣果をあげたのは、ねねらしい。


「よっと!」


 かうな、さっくり釣り上げる。きれいな色をしたアジだ。


「わたしのお昼ごはんは、ふたりに釣ってもらいました」

「あー……ま、気長に待とうぜ」

「はい」


 とはいえ、釣れる気配はない。ボウズの予感がする。


「あ、みき先輩だ!」


 かうなの視線のさきには、ゆかと堤防を歩く、みきの姿。充分歩いてきたのだろう、こちらにもどってこようとしている。


 みき、帰ってくるなり、


「どうよ、しお」

「そろそろ飽きてきたなー……」

「わかります」シー、肯き、「でも、ここでやめると負けた気がして」

「そうなんだよなー」

「なにと戦ってるんだよ」

「あれ、ゆか先輩、なにか買ってきたんですかっ?」


 見ると、ゆか、片手にビニル袋をひっさげている。にまりと口元をゆるめて、


「そこのお店で、アイス、買ってきちゃった。みんなのぶんもあるよぉ」

「おーっ!」


 溶けてしまうまえに、カップアイスを開ける。島の牧場でとれた牛乳を、ふんだんに使ったものらしい。


 ねね、


「これ、くるとき、気になってたんです……!」

「やっぱり~? わたしも、あとで買おうと思ってて~」

「なにも釣れてないけど、アイスはうめー」

「おいしいです。なにも釣れてませんが」


 釣果ゼロのふたり、かなり悔しがっている。


 それからも少々粘ったが、だめだった。ゆかのお父さんが迎えにきて、お開きになる。


 で、道具をもってワゴンに乗りこむ。


「釣れねーの、けっこうクルなー……」

「……」シーも、かなり静かになってしまった。「しばらく引きずりそうです」

「まぁまぁ」みき、苦笑い。「元気だしてよ、ね?」

「そうだ! みき先輩も、おさかな捌けましたよねっ?」


 かうな、落ち込むふたりと違って、疲れも見せずいきいきしている。


「捌けるといえば、捌けるよ」みき、首肯して、「まぁ、うまいわけではないけど」

「今日はおさかなパーティーだねぇ」


 その日の晩は、新鮮な魚料理が食卓に並んだ。

【新藤くづき 高校二年生】


 平川高校の二年生。

 学業は飛びぬけて優秀だが、それ以外の能力が壊滅的。


 夏休みの目標は「模試の判定をよくすること」。夏期講習に通いつつ、家でも受験生顔負けのスケジュールで勉強している。勉強がすきなので苦ではないらしい。

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