113 ハイキング
二日目。二年生とゆかのお母さん、山にハイキングへ。
初心者でも、一時間ていどで展望デッキに着くというので、ためしに登っている。海もよいが、山の自然もみごとなものである。
みき、ゆかのお母さんに話しかけて、
「自然がいっぱいで、いいところですね、ここ」
「そうでしょう! 十年まえかしら、お仕事できてから、旦那がすっかり気に入っちゃって」
山道はずいぶん歩きやすい。小鳥のさえずりが響き、そよそよとした風が吹く。真夏だが、山のなかはおもいのほか涼しい。
「デッキの景色もすてきなのよ。町が見渡せて、海もかがやいて見えるの」
いわれて、みき、期待がふくらむ。
「ちょっと休憩~」
途中にあった休憩所で、ゆか、水筒のお茶をごくごく飲む。
「ちょうど中間地点なんだなー」と、しお、看板を見ながら、「ここからあと三十分か」
「ゆか、だいじょうぶそう?」
「うん~。すぐいこっかぁ」
いちばん体力がないゆかでも、平気そう。ほんとうに、ちょっとした散歩といった具合で歩けている。
再度、出発。進行方向から、カップルらしい若い観光客がおりてくる。
ほかにも、すれちがうひとはいた。おじいさんから、子ども連れまで、だれもがおだやかに山道を歩く。
「山って聞いて、身構えてたけど」と、しお。「意外となんとかなるもんだなー」
「だな。ゆかも、ふつうに着いてきてるし」
「向こうもたのしくやってるかね」
しお、海のある方角を見やる。一年生は、ゆかのお父さん、お兄さんといっしょに、朝から釣りに出かけている。
「かうなちゃん、張り切ってたね~」
「そういや釣りずきだったな、あの子」
「あたし、釣りしたことねーなー。興味はあるんだけど」
「あとで合流するか? けっこう長くいるつもりなんだろ」
「それもいいね~」
と、いっていたら、開けた場所にでた。展望デッキだ。
予想よりずっとはやい。みき、腕時計を見ると、やはり再出発から十五分ていどで着いている。
「みんな若いから」と、ゆかのお母さん。「あら、わたしも若いってことになっちゃう」
展望デッキからは、たしかに島を一望できた。港町に、透きとおる海、境界線の見えない青空。
ゆかのお母さんが写真を撮ってくれる。そのあと、ベンチに座って、お手製のおにぎりをたべる。お昼ごはんにと、ゆかのお母さんとみきが、つくってきたものだ。
邸宅のキッチンはおそろしく広かった。白を基調にしたきれいなアイランドキッチンで、みき、島にきていちばん興奮したかもしれない。おにぎりも、気合いをいれてつくった。
「うまいか?」
「うん、おいしい~」
「みきちゃん、さすがねぇ。わたしより上手につくってくれたもの」
「そんな、大したことないですよ」
みきも、ひと口。いい塩加減で、なかなかうまい。
「きれいな場所だなー」しお、たべながら、「あそこらへんか、釣りしてるの」
「向こうは、おさかなたべてるのかなぁ」
「そうだろうな。よく釣れるらしいし」
景色をながめながらの昼食に、身も心も休まる。しばらくまったりして、それから下山した。
【笹田うめ 高校二年生】
夏休みの目標は「部活をがんばること」。卓球部で大会に出たり合宿にいったり、忙しくも充実した日々を送っている。




