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朝を歩け。  作者: 維酉
1st Album【東へ!】
116/176

111 浮き輪

 島に着くと、そのまま戸殿家の別荘に直行した。ゆかのお父さんが運転するワゴンで、海辺の邸宅まで。


 きれいで自然豊かな島だった。海水浴はもちろん、釣りもできるし、山でヒッチハイクもできるらしい。港でもらったパンフレットを見ながら、一年生は盛り上がっている。


 別荘に着くと、軽音楽部には巨大なひとつの部屋が割り当てられた。ダブルベッドが両脇に二つずつ並び、まんなかには丸テーブル。ウォークインクローゼットもあり、おおきなテレビもひとつある。


 はしゃいだのは、もちろん、かうな。


「すごい、ダブルベッドだっ!」

「わっ、牛ちゃん、もうのぼってる」

「ダブルベッド、はじめて見ました! わたし、うえで寝ていいですか⁉」

「いいよ。じゃ、だれがどこ使うか、さきにきめちゃおっか」


 かうなの下は、シーが使うことになった。で、のこり四人は、みきとねね、しおとゆかの組み合わせ。どちらも、前者が一段目で、後者が二段目だ。


 軽音楽部は六人なので、ダブルベッドはひとつ余る。そこは荷物置きにでも使って、と、ゆかのお母さんにいわれていたので、そうする。


「荷物片づけたら、いこうか」


 みきの号令で、玄関まででる。潮風がふわりと香る。


 またワゴンに乗りこみ、近くのおいしいごはん屋さんまで。島でとれた海産物がメインの、有名なお店らしい。


「ごはんたべたら、どうしよっかぁ」と、ゆか。「早速、海かなぁ。とことん遊びつくさないとね~」

「ずっと移動だったのに、元気だなー。ま、いくけど」


 予定もきまった。ごはん屋さんで、おいしい魚料理に舌鼓を打ち、軽音楽部とゆかのお兄さんは、歩いて別荘までもどる。両親は買い出しに、車を走らせていった。


 そう遠くなく、十分程度で着く。


 水着をとって、裏手のビーチまで。出たり入ったりだ。


 で、浜辺の更衣室で着替える。


「ねねちゃん、髪結んで」と、シー。

「え、うちでいいの?」


 ねね、たのしそうに、シーの長い髪を編みこむ。器用なもので、あっというまに仕上がってしまう。


「わっ、ねねちゃん、すごい!」と、かうな。


 シーも鏡を見ながら、満足そうに肯く。


「みんな、ちゃんと日焼け止め塗った?」

「おー、忘れてた」

「あぶねえな……」

「よぉし、いこっか~」


 ゆかを筆頭に、ぞくぞくとビーチに繰り出す。


 きらきら輝く海。熱い砂浜をサンダルで駆けて、波打ち際へ。


 別荘裏のビーチは、戸殿家の私有地らしい。みきたちのたのしげな声を遮るものはない。あるのは、繰り返す波音だけ。


「くらえ、ねねちゃん!」

「きゃっ、もう、冷たいよー!」

「牛ちゃん、隙あり」

「わぷっ」


 一年生、ずいぶんたのしんでいる。一方の二年生は、のんびりしながら、パラソルを立て、レジャーシートを敷く。


「なんていうか」と、しお、一年生を見守りつつ、「ねねって、意外とスタイルいいな……」

「……」みき、なんともいえない表情をして、「まぁ、姉が姉だし……」

「おにいちゃーん、わたしの浮き輪、どこにやったっけ~?」


 ゆか、離れたところにいるサングラスの兄に、駆け寄っていく。パラソルの下、ビーチチェアに寝そべって、なんだか知らないが数学書を読んでいる。


「たのしいのかな、あれ」と、みき。

「さぁ……でも、いもうとがいもうとだし……」


 浮き輪をもって走ってくるゆかを見ながら、しお、そう答えた。



陈诗涵チェンシーハン 高校一年生】


 平川高校の一年生。

 クールな見た目で、不思議ちゃん。


 夏休みの目標は「お百度参り」。近所のお寺に通っていたが、ねねに「お百度参りは神社だと思う……」といわれ、ショックを受けた。

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