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朝を歩け。  作者: 維酉
1st Album【東へ!】
115/176

110 フェリー

「フェリーって、なんだかわくわくしますよねっ!」


 かうな、出港まえのフェリーに乗りこんで、はしゃいでいる。


「牛ちゃん、走りまわると危ないよ」と、シー、たしなめて、「というか、牛ちゃんは乗りなれてるんじゃないの?」

「たくさん乗っても、わくわくが消えることはないんだよっ」


 で、かうな、シーとねねを連れて、デッキまででる。それを見守りつつ、みき、


「お誘いいただいて、ありがとうございます」と、ゆかのお母さんに話しかける。

「いいのよぉ。旅行なんて、人数がおおければおおいだけ、たのしいんだから」

「たのしみだねぇ」と、ゆか。「向こうは、おさかながおいしいんだよ~」


 やっぱり食のことばかりだった。


 三泊四日の旅行、一日目。ちょうどフェリーに乗りこんで、もうすぐ出港の時刻である。


 旅行のメンバーは、ゆかの家族――ゆかとお兄さん、ご両親――と、招待された軽音楽部員が五名。戸殿家所有の別荘に宿泊する。


「でも、二時間って、暇だよねぇ」

「ま、そうかもなー」しお、首肯して、「なにする? あやとり?」

「いや小学生か。てかキツいだろ、二時間もあやとりするのか?」

「創作あやとりしようぜ。まず紐という概念からくつがえす」

「それはもうあやとりじゃない」


 みき、しお、ゆか、手持無沙汰で、窓際、テーブルのある席にとりあえず座る。ゆかの家族も、ちかくに固まっている。


 髪をすっかり短くしたゆか、兄に向かって、


「そうだ、おにいちゃん、オセロない~?」


 いうと、でてくる。携帯できる、ちいさめのオセロセットだ。


「いや、これ、ふたり用のゲームだろ」

「あ、そっか~!」ゆか、びっくりして、「おにいちゃん、さんにんで遊べるゲームない~?」


 またも、でてくる。ウノにトランプ。旅行の必需品ともいえる道具だ。


「よし、じゃ、みき。これを託す」


 しお、トランプをみきに渡す。


「なにやるんだ?」

「まずはシャッフルじゃない?」

「そうか? まぁ……」みき、トランプをる。「で、なにやるんだ?」

「扇状に広げて、あたしがカードを選ぶから」

「当てれねえよ。マジックなんてできないっての」

「ざんねん」


 いっていたら、アナウンスが流れて、船は動きだした。さんにん、窓の外に視線をうつす。しばらく海を見ながら、雑談する。


「うぅ、先輩……」


 と、かうなが帰ってきた。お団子あたまがぼさぼさになっている。


「今日、風がつよくて……」

「そっか。おとなしく、なかにいなよ」

「そうします……」


 髪がキマっていないと、気分も落ちこむ。シーとねね、荷物からクシを取り出して、とかしてあげる。


「切ったららくだよぉ」と、ゆか。「そう、このくらい」

「短くなっちゃったもんなー」

「しおは最近、伸びてきたよな」

「あー、めんどくさくて……」

「それもどうなんだ」

「でも、ゆか先輩、ショートも似合ってますよ……!」

「ありがとう、ねねちゃん~」


 とはいえ、髪が短いだけで、印象はがらっとかわる。黙っていれば、の話だが。


 ゆか、喋りはじめると、かっこよくショートにしても、きゅうにのほほんとした雰囲気をただよわす。


 らしいといえば、そうなのだが。


 それから、かうなの髪が整うと、みんなでトランプをして盛り上がった。



【大矢かうな 高校一年生】


 平川高校の一年生。

 元気はつらつ、明るい子。


 夏休みの目標は「早寝早起き」。ひとりでは難しいので、いっそのこと、ねねのラジオ体操のボランティアに参加しようかと考えている。

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