表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
1st Album【東へ!】
114/176

109 旅行当日

 旅行当日。みき、集合場所の駅前に出向くと、いちばん乗りだった。いつものベンチで暇をもてあそんでいると、


「おはよ~」と、髪を切ったゆかに声をかけられた。


 髪を切った、ゆか。


 そう。髪を切った、ゆかがいた。


 ずっと伸ばしていた黒髪を、ばっさり切って、ショートになっている。


「え⁉」と、みき、度肝を抜かれた。「え、おまえ、だれ⁉」

「ゆかだよぉ、愛しのゆかちゃん」

「あ、ごめん……あまりの衝撃に、つい」


 みき、まじまじと、ゆかを見つめる。コンクール以来、会う機会はなかったが、その一週間のうちになにがあったのか。


「え~、照れる~」と、ゆか、まのびした口調で、「そんなにかわいいの~?」

「うん。かわいいが……なんで切ったんだ、そんなに」

「暑くて~」

「暑くて……え、それだけ?」

「うん~。ドラム叩くときも、たまに邪魔だったし」


 理由はわからないでもないが、とはいえ、突飛な変化であるのはたしかだ。


 あれほど髪を伸ばすのもたいへんだったろうに、こうもばっさりと短くしてしまうとは。


「おまえ……髪って、そんなにすぐ伸びないんだぞ」

「うん、知ってるよ~?」

「おはよー」


 と、しお、やってきた。白のトランクケースを引きずり、こちらに向かってくる。


「……」が、しお、ゆかを見て、「これ、なに?」

「そうなるよな」

「ひどいよ、ふたりともぉ。かわいいでしょ~」

「かわいいけどさー……きゅうすぎない?」

「でも、夏休みだよぉ? これくらいの冒険、するよねぇ」

「冒険しすぎなんだって」


 と、駅のほうから一年生もやってきた。ゆかの姿を見るなり、


「え、えっと……」かうな、目をぱちくり。「はじめまして……?」

「かうなちゃんまで~!」

「えっ、ゆか先輩ですか……⁉」ねね、口をあんぐりあけて、「な、なにかあったんですか? 悩みとか……失恋とか……」

「ちがうよぉ、ひと夏の冒険だよぉ!」

「すごい冒険ですね……」


 シーまで、表情を崩して目を見開いている。


 一方のゆか、心外といったかんじで、頬をふくらます。


「だれもかわいいっていってくれない~!」

「いや、かわいいんだって。でも、きゅうなんだって」

「そうですよ、ゆか先輩」シー、肯いて、「おなじ長髪組として、シンパシーをかんじてたのに……」

「かんじてたのかー……」

「え~、でも、むかしはずっと、ショートだったんだよぉ」

「そうなの?」

「むかしって、小学生のころだろー」

「うーん、かわいいと思ったんだけどなぁ」

「かわいい、かわいいですよ、すっごく!」


 かうな、失言を挽回しようと、激しく肯定する。まぁ、だれも、似合ってないとは思わない。


「かわいいよね~?」と、ゆか。

「かわいい」みき、もうあきらめて、肯く。「なにかあったわけじゃないなら、べつにいいよ……」

「そういえば、ゆかの家族はー?」

「駅でお土産買ってくるって~」

「お土産?」

「うん。別荘の管理人さんに」


 いちどう、納得する。別荘の管理人というワードの異次元さには、この際、驚いてもしかたないので、だれも触れない。


 戸殿家が揃うまで、歓談して待った。



【戸殿ゆか 高校二年生】


 平川高校の二年生。

 おっとり、マイペースな性格。


 夏休みの目標は「冒険すること」。ばっさり髪を切ったのはそのひとつ。あとは、見知らぬ料理をたべて冒険したいと思っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ