107 ラジオ体操
みき、インターフォンが鳴ったので、でると、軽音楽部の一年生がいた。
「いらっしゃい。どうぞ、上がって」
「お邪魔します」と、口々にいって、みき宅にあがる。
「すみません、いきなり押しかけちゃって」と、シー。
「気にしないでよ。ま、あんまりもてなせないけど」
みき、とりあえずダイニングテーブルに座らせて、冷えた麦茶をだす。ついでに、ちいさな編みカゴにお菓子をいくつか盛る。
「しおはもうすぐくるだろうし、先にはじめちゃおっか」
いうと、一年生さんにん、肯いた。
ことの発端は、昨日、かうなからのライン。来週に控える旅行のあいだに、ゆかの誕生日があるのを知って、なにかサプライズでも仕掛けたいとのこと。
わるい提案ではないので、みき、快諾して、ゆか以外のメンツを今日、家に招いた。作戦会議のためである。
「で、サプライズって、具体的になにするの?」
「それなんですけど……」ねね、おずおずと、「色紙とか、くるまえに買ってきてはみたんです」
ビニル袋をとりだす。なかには、かわいらしい色紙と、シールがいくつか。
「でもっ! それだけだと味気ないですし、どうせなら、なにか味わってほしくてっ!」
「味わう?」みき、腕を組む。「あぁ、ま、たべものがいちばんよろこぶだろうな、あいつ」
「わたしたちもそう思って! もちろん、誕生日プレゼントも用意して、ケーキは手作りしてみたいなぁと」
かうなのことばに、みき、考える。たしかに、よろこぶと思う。
「みき先輩は、ケーキをつくったことありますか?」と、シー。
「うん、あるよ。ケーキづくりなら力になれると思う」
と、いっていたら、またインターフォンが鳴った。みき、でると、しおである。
合流して、いまのところの案を説明。
「ケーキなー」と、しお、肯いて。「いいんじゃね? ゆかの親御さんに頼めば、キッチンも使わせてもらえるだろうし」
「そうだな。あとは、どんなケーキにするかだけど」
作戦会議は進んでいく。ケーキについては、だいたい案がまとまった。
で、そのつぎは、色紙にメッセージを書く。余白はねねとシー、かわいいイラストで埋めていった。そういう才能もあるのか、と、みき、感心する。
これで、作戦会議は終了。しだいに、ただの雑談にきりかわっていく。
「先輩たちは、もう水着買いましたか?」
「うん。わたしは買ったよ」
「あたしも買った。競泳水着」
「つまんねえから絶対やめろよ」
「冗談」
わたしは浮き輪も買いました! と、かうな、たのしげに。
「うちは、ここ最近、ずっとジョギングを……」
「お、えらい」と、みき。「わたしもやってる。仲間だね」
「時間帯、いつやってます?」シー、身を乗り出して、「やっぱり朝方?」
「そうだね。昼は暑いし」
「うちも、朝に……公園のラジオ体操があるから、起きるの早くて」
「ラジオ体操?」
「あっ、えっと、ちがうんです! 小学生にまざってるわけじゃなくて、いやあの、まざってるんですけど……!」
聞くと、ちょっとしたボランティアで、小学生の見守りをしているらしい。夏休み、早朝のラジオ体操をいっしょにして、スタンプを押しているんだとか。
「その、ほとんど、おねえちゃんの付き添い、なんですけど」
「そっか。えらいね、ねねちゃん」
みき、褒めると、なおさら縮こまってしまった。
【夏井みき 高校二年生】
平川高校の二年生。
毒舌だが、根はやさしい。
夏休みの目標は「しっかり稼ぐこと」。遊びの予定はいれつつ、空いた時間にはがっつりバイトのシフトをいれている。




