表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝を歩け。  作者: 維酉
1st Album【東へ!】
111/176

106 エンペラー

「みきちゃんの水着……」と、うめ、不安そうに、「ほんとうに、わたしが選んでよかったの?」


 みき、店員さんから紙袋をうけとって、肯く。来週の旅行に備えて、今日は買い出しにきていた。


 ちょうど部活が休みだったうめを誘い、ショッピングモールまで。いくつかショップを渡り歩いて、気に入りを見つけた。


 ショップを出て、みき、


「ありがとね。ほら、わたしひとりだと、ずっと悩んじゃってたし。それにうめちゃんのセンス、信頼してるから」

「あ、それはうれしいけど……ののちゃんとかも、力になってくれたんじゃない?」

「いや、まぁ……あの子を呼ぶと、どれだけ試着させられるかわかんないし……」

「あぁ、そうかも」


 うめ、納得してしまう。その光景が、容易に想像できる。


「このあとどうしよっか?」と、みき。「帰るには早いし、ほかも見てく?」

「うん。いろいろできてるみたいだし」


 今日、きてみると、いれかわっている店がいくつかあった。モールじたい、どうやらリニューアルの真っ最中らしい。


 気ままに散策していると、


「あ、ねこカフェできたんだ」


 うめ、見つけて、窓から店内を覗いてみる。何匹ものきれいげなねこが、自由にそこらを闊歩して、エサをもらったり撫でられたり、あるいは人間を無視している。


「お金を払ってねこの下僕になる――イイと思いませんか、みきちゃん!」

「うん……いいかたはどうかと思うけど」


 ということで、並んでみる。意外とすぐに順番はきて、窓側のテーブル席に通された。


「わ~、かわいい! この子、なんていうねこかな?」


 早速うめ、近くにいた、白と茶色の長毛種を撫でている。


「ノルウェージャンかな」と、みき、屈んで、「たしか、首輪に名前が書いてあるって」

「ふんふん。虎太郎っていうんだね」


 ほかにも、ねこ、さまざまいる。写真を撮ったり、抱っこしたり、ふたりともたのしんでいる。


「お、コーヒーもおいしい」


 みき、座ってひとごこち。コーヒーとチーズケーキは本格的で、たべていると、ひざのうえにグレーの毛並みのねこが乗ってきた。


「わぁ、みきちゃん、ねこにもすかれるんだね!」うめ、写真を撮る手がとまらない。「その子はなんて品種なの?」

「ブリショーだよ。いいかおしてるよね」


 名札を見る。ポンデモローマ二世という名前らしい。虎太郎との激しい落差。


「なんというか、勢いがある名前」と、うめの評。「わたしも撫でていいかな」

「だいじょうぶじゃない?」


 が、威嚇された。


「どうして……」うめ、かなしそう。「あ、ねこの名簿もあるんだ」


 テーブルのうえに、QRコードが載った札があり、どうやら読みこむと名簿が見れるらしい。ためしに、ふたりでサイトに飛んでみる。


「ポンデモローマ二世……」と、うめ、紹介文を読み上げる。「美ねこだが、尊大で、ひとに懐きにくい性格。ポポロンの女王様……だって」

「ふうん、おまえ、女王なのか」

「でも、懐いてるよね」


 みきが撫でると、のどを鳴らす。なんだか、最近、へんなのに懐かれやすいな、と思う。


「じゃ、みきちゃん、エンペラーだね」

「やめてよ」みき、苦笑して、「ここで撮った写真、あとでゆかに送ってあげる?」

「うん。きっとよろこぶよ」


 退店時まで、ポンデモローマ二世、ひざのうえだった。



【ポンデモローマ二世 ねこカフェの女王】


 ねこカフェ〈ポポロン〉の一員。

 尊大でひとに懐かない、ブリティッシュショートヘアー。


 寄り付く人間を選び、気に入る人間がいないとキャットタワーのいちばんうえに陣取っている。その姿から〈ポポロン〉の女王とあだ名され、かわいがられている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ