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朝を歩け。  作者: 維酉
3rd Single【夏への扉】
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100 コンクール前日

「じゃ、明日は八時に、駅前集合ね。そこから車で移動します」


 前田先生のことばに、部員いちどう、肯く。


 八月にはいり、明日はいよいよコンクール本番。あっというまだったが、やれることはやった。


「みんな、今日はゆっくり休むこと。万全の状態で臨むように」

「わかりました!」かうな、力強く返事して、「九時に寝ます!」

「健康的でよろしい」


 ということで、解散。みき、ギターケース担いで、階段をおりていく。


「牛ちゃん、あんなこといってたけど」と、みきのうしろで、シー。「ほんとに九時までに寝れるの?」

「だ、だいじょうぶだよ! たぶん」


 ちょっと頼りない。みき、聞こえる会話にくすりと笑って、


「そっちもだいじょうぶ?」と、となりを歩くゆかに、訊く。

「だめかもぉ」

「あいかわらず、すなおだな……」

「また夜中に電話しちゃうかもねぇ」

「ま、それはいいけど」


 文化祭の前日も、ゆか、ねむれないで、グループ通話をはじめた。今日も、なんだか、かかってきそうな気がする。


 みき、うしろを振りかえり、


「ねねちゃんも、心配かも」

「えっ、あっ、うちは……!」もうすでに、かおが強張っている。「せめて占いは見ないようにします……!」

「わたしもそうしようかな」シー、苦い顔で、「運命はみずからでつかみとるものだし」

「おー、かっこいい」


 ひとりだけ、しお、能天気だ。いつもどおりの調子である。


 みき、頼もしいような呆れたような、苦笑い。


「そういやおまえ、休憩時間になにか読んでたな」

「え? あー、あれね。催眠術の本」

「なんのために?」いって、みき、思いだす。「あ、緊張をとくため?」

「このあいだ効かなかったの、悔しかったから……」


 オカルト本だったけど、と、しお、ため息つきつつ、ニヒルな笑みを浮かべる。


 後輩おもいなのか、ただの負けず嫌いなのか。どっちもあるだろうが、なににしろ、オカルトをたのしめるくらいには余裕があるらしい。


 みきとしても、それはちょっと、うらやましいところだ。


 学校をでて、しばらく歩き、それぞれ別れる。みき、ひとりになって、帰りしな、


「あ、みきさん」と、声をかけられる。「奇遇ですね。いま帰ってきたんですか?」


 見ると、私服姿の新藤くづき。青いブラウスに、すっとした線のパンツを履いている。


「うん。くづきちゃんは、塾帰り?」

「そうです。ついでに、さつきを拾っていこうと思って」


 いもうとのさつきは、近くの公園で、友達といっしょに遊んでいるらしい。夕飯までに帰らすよう、親に頼まれたんだとか。


 歩く方向がおなじなので、いっしょにいく。


「軽音楽部さんは、たしかコンクールが近いんですよね?」

「そう。というか、明日」

「そうだったんですね!」くづき、目をみはって、「応援してます、がんばってくださいね」

「ありがと、くづきちゃん」


 と、公園に着く。たしかに、小学生が何人かで遊んでいて、そのなかにさつきもいる。


 まだ門限まで時間があるという。もうすこししてから、声をかけることにきめる。


「わたし、文化祭、見れませんでしたが」と、ベンチに腰かけ、くづき。「軽音楽部さんのステージ、大成功だったんですよね。みなさん、そうおっしゃっていました」

「部員のみんなが、がんばってくれたおかげだよ」

「ふふ、みきさんのそういうところが、すきなんです」


 くづき、にっこり微笑む。なんだかわからないが、みき、恥ずかしい。


「いつかわたしも、軽音楽部さんの演奏、聴いてみたいです」

「うん。機会があれば、きっと教えるよ」

「はい、ぜひ」


 それからすこし世間話をして、さつきに声をかける。さんにんで、並んで帰った。さんざんに、蝉の鳴き声がした。



【新藤くづき 帰宅部】


 帰宅部の二年生。

 品行方正、しかしドがつくほどの天然。


 成績は、留学するまえから学年トップクラス。勉強で頼られることもおおい。とはいえ学力以外のパラメータが著しく低い、愛されキャラ。

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