出会い
(魔王城、主無き部屋)
「...暖かい 」
気づくと俺は、ベットの中だった。
どうやら一ノ瀬さんが倒れた俺をここに運んでくれたんだろう。
部屋の中は夜なのか暗くカーテンの隙間から射す青白い光が部屋に射しているだけである。
「ッンーーー!?っアぁ~~」
俺はおもいっきり寝たまま伸びをした。
だがそこで、俺は声をかけられた。
「あら、気づかれましたか♥️」
(!!!ビックリした。)
暗くてよくわからなかったが、俺の横には女性が立っていた。
俺は慌てて体を起こす、
(この人が俺を介抱してくれたのか?)
「たっ助けていただき、感謝します。」
とりあえずお礼を言う。
そういえば、俺は何で倒れたんだっけ?
そう疑問に思う俺に女性は
「いーえ、いいんですよ。
それよりも暗くてもなんですし、明かりを点けましょう。」
といって、彼女は手を
「パンッ!」
と軽く叩くと、部屋に明かりがついた。
俺は、噂のインターネットに家電を繋いで、自動的に動かしてくれるというあれか、と思い、天井に視線を向ける。
しかし、それを見たら、そうではないことに気づいた。
(!!!、し...シャンデリア!?)
そう、そこには三段形式の、逆円錐形で作られ、一本一本の蝋燭に火が点ったシャンデリアが、美しく銀色に輝いていた。
(えっ、えっ、ここは?ここはどこなんだ?)
そう思い、俺に話しかけてきた女性の方に視線を戻すと、
(!!!)
そこには長い銀色の髪をなびかせ、金色に輝いた目をもつ、肌の白い美しい女性が立っていた。
◆◇◆◇
「あの~、大丈夫ですか?」
不意に彼女から声をかけられた。
どうやら俺は、彼女に見とれていたようだ。
「いっいえ!、だっ大丈夫です!、はい。」
慌てて俺は言葉を返す。
名前も知らない美女に声をかけられるとテンパってしまう。
「そうですか...よかったー♪頭から血を流してらっしゃったので心配しましたの。」
彼女は 微笑みを俺に向けてくる。
彼女の微笑みは、まるで桜のような美く、夜空に浮かぶ満月のようにミステリアスだった。
俺は顔に熱が帯びてくるのを感じながら、右手で殴られた傷をさわろうと後頭部に回す。
だがしかし、
(!!!、傷がない!)
どういうことだ、俺は確かにあのとき花瓶で頭を...
「ツッ!!、ガァーー!!!!!!!アーーーー!!!!」
俺が倒れる寸前の記憶がよみがえってくる。
...そうだ、俺は金山精神科で、そこに入院している母さんのお見舞いにいって...
「...頭を、花瓶で割られたんだ...」
思い出した、思い出してしまった。
叫ぶ。
叫ばずにはいられない。
そうしないと俺の心が壊れてしまう気がして、それが怖くて、情けなくて、
「アァーーーーー!!!!ッツ!ック!!!ガッ!!」
どれだけ叫んだだろう、1日中叫んだ気もするし、ほんの一瞬にも感じられる。
だが、俺はようやく落ち着きを取り戻した。
そして、変わらず俺の横にたっている銀髪の美女の方に視線を向ける。
彼女は俺に心配の眼差しを送っていた。
「もう大丈夫ですか?」
「えっ...ええ、なんとか落ち着きました。」
とんだ醜態をさらしてしまった。
「でっ!でも、そんな無理をなさらずに...ここは時間がたっぷりありますから、まだ休んでいた方がよろしいのではないかしら。」
「いいえ、大丈夫です。
そんなことより教えて下さい!あなたは誰なんですか?
ここはどこなんですか?」
俺は彼女からの心配の言葉を遮り、彼女に迫る。
すると彼女は少し微笑み、俺と向き直す。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。
私の名前はラニラ、『ラニラ・ブロッサム』と申します。」
ラニラと名乗る彼女を俺は眺めて考える。
見た目からなんとなく思っていたけど、日本人ではないようだ。
というかなんとなくある仮説を思い付いてしまったが、そうではないことを祈る。
「えっと、ラニラさんですね。
俺の名前は『澤部 菊池楼(さわべ きくちろう)』といいます。一体ここは、というか何で俺の頭の傷かなくなってるんですか?」
「えーっと、そんな一気に言われてもあれなので、順番に言いますね。
まずここはどこか、ここはあなたの生きてきた世界とは違う世界、人々はここを魔界と呼び、この場所は魔王城の一室です。」
「はい???つまり異世界?」
「ええ、突然ですがあなたを異世界召喚しました。あなたは今日から魔王です。これから二人で暖かい家庭をつくっていきましょうね♥️」
「へ?」
「うふふ♥️」