表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛に飢えた魔王と独占欲の強い妃   作者: 時計塔の爺
第1章
2/14

少年とその母親

遅れました

なにぶんテストがありまして

今回は少し刺激が強いので、注意してください

誤字脱字とうがございましたら教えて下さい

  時は少し遡る


  「キーンコーンカーンコーン」


  偏差値40より少し下の私立高校で、帰りのホームルームの終終わりを伝えるチャイムが鳴り響く 。


  「さーてと、行きますかね~」


  このクラスで気の抜けた声が発せられた。

  彼の名は「澤部(さわべ) 菊池楼(きくちろう)」。

  彼の制服は、入学して数ヵ月たっていないのにズボンは所々破れており、白シャツは黄ばんでいた。

  髪は所々寝癖が跳ねており、目の下にはくまができている、見るからにだらしなく見えてしまう。


  「イチ!!ニッ!!サン!!、イチ!!ニッ!!サン!!」


  ドン!!


  「うわっ!!」


  校門を潜ろうとしたら、後ろからきたランニング途中の陸上部の部員にぶつかった。

  だが、彼らは菊池楼のことなど見向きもせずいってしまった。


  「はーぁっ、全くひどいですね~、謝罪の一言ぐらいいうものでしょ~」


  口ではそういうものの、彼の感情に怒りはなく、服の埃を手で払いながら学校をあとにする。


  「今何時だろう」


  ふと呟くとボケットの中のケータイを開き時間を確認する。


  午後 4時 38分


  画面に写る数字を見て菊池楼の目が細くなる。


  (不味いな、少し急がなきゃですね)


  するとさっきまでのだらしない表情から一変し、とても鋭く、何人たりとも寄せ付けないような雰囲気を見にまい、彼は歩幅を早めたのだった。



  ◆◇◆◇


  (門の前)

  菊池楼は早めた足取りをようやく止めた。

  見ると彼の前にはひとつの門があり、その塀には

 

  「金山精神科」


  と彫られた看板がかけられている。


  「はぁー、今日もこの時間にこれてよかった...」


  そう呟くと彼は鞄から手鏡を取り出し、


  「寝癖はいつも通り、くまもよし、制服もよし、口調も完璧ですね...」


  手鏡を覗きながら自分の状態を確認する。

  そんな彼を近くの通行人は変なものを見る目で見るが、彼は気にしなかった 。


  「でわでわ、行きますかね~」


  手鏡をしまいながら、またあの気の抜けた口調を呟きながら彼は病院ないに足を運ぶ。


  「今いきますよ、お母さん...」



  ◆◇◆◇



  (金山精神科受付)

  菊池楼は病院の扉を開き中にはいる。

  そしてなれた足取りで受付の前にたつ。


  「あら、菊池楼君こんにちは、いつも同じ時間ですごいわね」


  「いえいえ一ノ(いちのせさん慣れっこですよ、それにしても今日もお美しくて何よりですよ」


  ここの病院の受付に座る看護婦、一ノ瀬は見た目は二十歳のように若々しい、だがどこか大人の女性といった雰囲気をまとった魅力を持つ女性だった。


  「まぁお上手ね、今日もお母さんのところでしょう、はいっどーぞ、部屋は分かるわよね?」


  このような社交辞令を笑顔で交わしつつ、菊池楼は彼女から102と書かれた鍵を渡される。


  「ええ、いつもありがとうございます」


  これが彼の目的である。

  別に彼は一ノ瀬を口説きにここへわざわざきたのではない。

  この鍵の部屋、正確にはその部屋に住んでいる患者に会いに来たのだ。

  そう、「澤部(さわべ 千尋(ちひろ

  彼の実の母親のもとに...





  ◆◇◆◇


(102号室)


  「ふぅ~...行きますかね~」


  彼は手の中の鍵を使い扉を開く。

  精神科の病室は、患者が暴れて逃げ出すのを防ぐために鍵がかかっているのだ。


  「ガチャッ」


  白くなにもない部屋だった。

  いや、その言い方はおかしいだろう。

  確かに壁のすみには時計がかけられ、部屋の真ん中にある小さな丸いテーブルの上に花瓶に生けられたユリのはなが咲いており、二つの木でできたイスがそのユリを挟んで向かい合うように設置されている。

  ひとつしかない窓には鉄格子がはめられ、外からの風が白いカーテンをなびかせている。

  この、白で統一された部屋の中に四十代の女性が二つの椅子の片方に座り、ただ壁にかかった時計を見つめていた。

  その女性、澤部千尋は元々は長く艶のあったであろう髪は、大半が白く染まり、艶が失われ、荒れ果てており、あのほっそりとした腕には肉があまりついておらず、ガリガリに痩せ細り骨と皮のみ、あの美しかった顔立ちも、今ではやつれ、頬がこけ、目はすでに生気を失い、まるで生きた死体のように、変わり果てていた。


  「やぁ千尋、元気~?」


  千尋は菊池楼の声で失っていた生気を取り戻し。


  「龍一郎りゅういちろうさん!!おかえりなさい!!」


  と喜びの涙を浮かべながら 菊池楼に抱きつく。

 

  「千尋、いい子にしてた~?」


  「ええ、もちろんよ龍一郎さん!!、龍一郎さん!!」


  ちなみに龍一郎とは菊池楼の実の父親であり、母親の千尋がこうなってしまった原因でもあった。

  そもそもこの夫婦は近所でも有名なおしどり夫婦だった。

  そしてこの間に生まれた菊池楼も両親から愛をたくさんもらって生きてきた。

  しかしその幸せだった家庭はいきなり崩壊へと向かっていくことになる。


  父親、龍一郎の突然の死である


  あれは、菊池楼が中学一年生の頃、龍一郎は、会社から帰る途中の道のりで通り魔に襲われた。

  犯人はすぐに捕まり、龍一郎も病院へと運ばれたが、その一時間後息を引き取り、二度と帰らぬ人となったのだった。

  だが、悲劇は終わらなかった。

  龍一郎の保険のおかげで、お金には困らなかったものの母親、千尋が現実を受け止めることができず狂いだしたのである。

  毎日のように龍一郎の名前を繰り返し叫び続け、菊池楼に罵声を浴びせた。


  母にどう接したらいいのかわからない


  母の笑顔をどうしたら取り戻せるのかわからない


  そのときの菊池楼の心は、毎日の虐待により、光を失いつつあった。

  だが、そんなある日、彼は希望の光が見えた。

  何がどう見えたのか知らないが、今の菊池楼の格好、寝癖だらけの頭に目のしたのくま、黄ばんだシャツをまとい、ふざけた口調の菊池楼を、千尋が龍一郎だと思い込み始めたのである。

  もう菊池楼には、この方法にすがるしかなかった。

  それから彼は、龍一郎になりきるようになった。

  母親の機嫌を損ねぬように。

  近所の人の通報により、この金山精神科に強制入院させられてからも毎日菊池楼が同じ時間に面談に来ることにより千尋は落ち着きを取り戻したのだった。

  だから彼はこの病院から一番近い高校に入り、こうして母親に会いに来るのが日課となっていったのだ。

  自分よりもレベルの低い高校を受け、部活、クラブ、委員会に属さず、個の格好でいるからクラスメイトの誰からも相手にされない

  そんな生活を送るのも、全て母親のため、千尋のためだった。

 

  「ねえねえ見てよあなた、みてみて、このユリきれいでしょ♥️」


  「あぁ、とてもい~ね~、君のようだ」


  (演じなければ、母さんが望む父さんの人物像に!!)


  彼は必死に母親の望む龍一郎を演じ続けた。


  「あなた、愛してるわ♥️」


  「ぼ~くも~だよ♪」


  (母さんの望む父さんのように...)


  必死に演じ続けている菊池楼の心に痛みが走る。

  彼は気づいてしまったのだ。


  (この愛は俺に向けられていない)


  それはいつもここに来ると実感させられていた。


  (俺の姿は母さんには見えていない...)


  菊池楼の心はだんだん沈んでいく。


  (愛が欲しいなー...)


  そう心の底から感じてしまう菊池楼。


  だがそう思うことにより彼は痛恨のミスをしてしまうことに、まだ彼は気づいていなかった。


  ファッサ...


  テーブルの上に生けられたユリの花の部分が落ち、風にのって足元まで来たのだ。

  彼はなにも思わず花を拾おうとかがむと、


  「ガタン!!」


  かがんだときに、左肩をテーブルにぶつけてしまった。

  すると運命のいたずらか、テーブルの上にある花瓶が倒れ、


  「バシャッ」


  中の水が菊池楼の頭にかかったのだ。


  「つべたっ!!」


  「キャー、龍一郎さん!!」


  だが、頭がぐしょ濡れになった菊池楼をみて、千尋は表情がだんだん険しくなる。


  「...あなた、龍一郎さんじゃないわね...」


  「!!!」


  (なぜばれた!?)


  そう思い手鏡を覗きこむとそこには寝癖が水の重みでぺしゃんこになった菊池楼がいた。


(まずい!!)


  だがもうおそかった。


  「...あなたなんか龍一郎さんじゃない...返して...龍一郎さんを返してー!!」


  千尋はテーブルの倒れた花瓶に手を伸ばし、菊池楼の頭を何度も殴った。


  「まっ、待って!母さん、僕だよ!息子の菊池楼だよ!」

 

  「そんなの知らない!、返して、龍一郎さんを返して!」

 

  菊池楼が何をいっても千尋の手は止まらない。

  菊池楼は涙を浮かべながらそれでも叫ぶ。

 

  「おっ落ち着いて母さん!僕だよ、菊池楼だよ!父さんと母さんの子供だよ!わからないの?」


  しかし、それでも千尋は暴れ続ける。


  「あなたなんか知らない!、あなたは龍一郎さんじゃない!、あなたなんていらない!」


  (...この言葉は聞きたくなかったんだけどな~)

 

  千尋は菊池楼のことなど眼中になかった。

  千尋は龍一郎ではなくなった菊池楼は、例え実の息子であろうと必要ないのである。


  「グガッ!!」

 

  「返して!!龍一郎さんを!!返してー!!」

 

  何度も何度も菊池楼を殴る千尋。

  騒ぎに気づいた一ノ瀬が、何人かの職員をつれて止めに入る 。


  「...菊...池楼君!!...菊池楼...君...!!」


  一ノ瀬が彼を焦った様子で呼んでいる。

  しかし、もう彼の意識はもうろうとしていてハッキリと聞き取れていない。


  (なんかもう疲れたな~)

  菊池楼は絶望していた。

  母親の気持ちに、この世界に、そして自分自身に。

  だが、それと同時に父親、龍一郎を羨ましく思っていた 。


  (こんなにも愛してくれる女性と結婚した父さんは、幸者せだよ...)


  「...菊...池...楼君...!!...」


  (一ノ瀬さんが俺を呼んでいる、でももういいや、疲れたよ、あー、俺も誰かを狂うほど愛してみたかった...狂われるほど愛されてみたかった)

  菊池楼の意識が失われていく。

  それと同時に菊池楼の影がだんだん濃く、大きくなり、彼の体を包み始めた。


  「菊池楼君、菊池楼君!!」


  「千尋さん、落ち着いてください!」

 

  「グガッ、あっうー、カッ...」

 

  がくっ!


  この白い病室では、一ノ瀬は菊池楼の名を呼び続けている


  「ダメよ!!、目を開けて!!、菊池楼君!!」


  千尋は職員に薬で眠らされていた。

  そして、一ノ瀬に抱えられていた菊池楼の体は影に包まれて..............消えた。





  ◆◇◆◇

 

  (体が重くない...)


  俺は意識を取り戻した。

  どうやら俺はどこかに寝かせられたらしい


  「あら、気づかれましたか♥️」


  俺のそばに一人の女性がたっている。

  長い銀髪をなびかせた、美しい女性だ。

  彼女は口を開き、俺にこう告げてきた。


  「あなたを異世界に転送させていただきました、あなたは今日から魔王です。

  私と一緒に暮らして、暖かい家庭をつくりましょう♥️」


  「....................は?」


次は来週ぐらいに出します

読んでくれているありがとうございました!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ