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愛に飢えた魔王と独占欲の強い妃   作者: 時計塔の爺
第1章
11/14

意地悪問題

 

「...か、母さん!!!」


 玄関から出てきたのは母『千尋』だった。

 自分の目の前にいる母の姿は若々しく生気に満ち溢れていた。

 長く手入れの行き届いた艶のある黒髪、年を感じさせない若々しい肌は壊れる前の母の姿そのものである。

 花壇の手入れをするのだろう、日に焼けないよう麦わら帽子をかぶり袖の長い服を着ている、軍手を着用した手にはガーデニング用のスコップを握っている。


「あ、、あの!」


 思わず声をかけてしまった。

 これはあのショタが俺に見せている幻覚であるはずなのに、そうわかっているのに目の前の母、母の姿をした幻影に声をかけずにはいられなかった。


 しかし母さんはまるで見えていないかのように俺の前を素通りしていった。

 思わず肩に触れようと右手を伸ばすが、すぐに空を切る感覚を覚えた。

 俺の右手が母さんの体をすり抜けたのだ。

 つまり俺の姿は母さん、いやこの世界の人物には見えないし声も聞こえない、触れることもできないということになる。


 つい呆然とすり抜けた自分の右手を見てしまう。

 同時に胸ポケットから覗いているビー玉が少しくすんで見えた気がした。


「...クソッ!!!」


 思わず壁にこぶしをたたきつけてしまった。

 が、しかし


 ダンッ!!!


 という鈍い音が響いた。


「キャッ!!! なに!?」


 音に驚いた母さんが俺のほうに振り向いた。

 だが肝心なのはそこではなかった。

 俺はこの世界のものに触れることができるのだ。


「え~ 鳥でもぶつかったのかしら。びっくりした~ 」


 母さんはそのまま花壇のほうへと歩いていった。


 いろいろ試してみたがどうやらこの世界の人間の視界に入っていないものならば触れることができることが分かった。

 同時に俺自身が携帯したものは視界に入った瞬間俺の体をすり抜けることも確認した。 

 また、あのビー玉だが、どうやら俺の精神状態に反応して変化が見られた。

 先ほどのように気分が落ち込むと黒くくすむ。

 くすんだビー玉は元には戻らなかった。


「あのショタは一体何が目的なんだ。結局何をすればいいのかがわからないままだぞ。」




 ◇◆◇◆




 青空の空間の元、ピエロ姿の幼児は変わらず白い椅子に腰を掛け紅茶を楽しんでいた。

 ティーカップから離した口元を三日月のように曲げ笑みをこぼす。

 手に持った手元の紅茶の水面には首を傾げる菊池楼の姿が映し出されていた。


「ん~~♪ 苦戦しているようだねぇ。まぁ当たり前か。でも大丈夫。なぜ僕が君をそこに送ったのか、この試練が何を意味するのか、す~ぐにわかるさ~♪

 ...というより、もうわかってるんじゃないのかな? ()()()()()()()()()()()()()()


 幼児は楽しそうに笑うとテーブルに置いてあったクッキー数枚をそのぷにぷにした手で握りしめ、口に運ぶのであった。

次回「ひびの入ったビー玉」

更新予定日 2,022年 1月15日

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