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まるで、暗闇で本物の悪魔でも見たような、ひどい怯え方だった

「そう揺するな。ちゃんとわかってるって」


 俺は苦笑して頷く


「というわけで……一人は由美、じゃなくて、この桜坂由美さんを」

「ああっ!?」


 感極まった由美の声に、女教官と仕送りポーンはぎょっとしてたが、藤原は落ち着いたものだった。多分こいつ、俺達をスカウトする前に、余計なことも調べてる気がする。


「ああ、もちろんそうだろうね。いいとも。他には?」

「いやー、まだ初日でなにもわからないんだから、四人はあんた――藤原さんが選んでくれると有り難いんだが」


 本当は仕送りポーンとか選びたいんだが、なんか俺、嫌われてそうだしな。


「……構わないが、選択の基準というか希望は?」






「美人でスタイル良くて、性格も良くて、それなりに強い子」


 場が静まり返ったが、構わず続けた。


「それと、女の子限定だと嬉しいかも。ここじゃレアだからとか言って、こそっと男を入れるのは、俺的にはNG」

 

 正直に希望を告げると、由美を除く女性二人が思いっきり顔をしかめてくれた。

 仕送りポーンの子なんか「さいっっていっ」とか言いやがったしな。

 むせ込むように笑ってんのは、藤原だけだ。


「いやぁ、かなり正直で、ごくごく当然の希望だと思うがなあ」

「いや、そうだね……ははっ。個人的には、強い子という希望が最初に来てほしかったが。はははっ」


 目の縁に浮かんだ涙を指で擦り、うんうんと藤原が頷く。

 笑いすぎだろ、おっさん。


「それなら、こうしよう。もうすぐ校内バトルというか、ギフトでやり合う集団戦があるんだ。その結果を見て、選べばどうかな?」

「あ、いいですね、それ!」


 俺は思わず破顔したが、「ちなみに君も参加するんだが」と言われて、げんなりした。

 なんだそれ、めんどくさい。





 結局、おとがめらしいお咎めはなく、ついでのように藤原が「集団戦は明後日で、正式な所属クラスが決まるのは、それ以降となる」と説明して、お開きとなった。

 なんのことはない、お咎めらしいお咎めはなく、勝手にナイトとやらにされただけである。もちろん、俺としては誰かの部下になるよりはいいが。


 ただ、学園長室を出た瞬間、仕送り――じゃなく、ポーンの高梨沙由理が俺をじっと見つめた。





「……告白するつもりなら、俺の心の準備はできているけど?」


 試しにそう持ちかけると「誰がよっ」と険しい声で言われた。


「そうじゃなくて、あなた……霧崎君? あのフードコートで彼とやり合った時、なにをしたの? なにかのギフトなのかしら、元ナイトの人がああなったのは?」

「あんた、じゃなくて高梨たかなしはどう見えたんだ?」


 試しに俺が訊くと、彼女は悩ましい顔で首を振った。


「霧崎君はほとんどなにもしていなかったよう見えた。なのに、どうして彼はあんなり怯えてたの? まるで、暗闇で本物の悪魔でも見たような、ひどい怯え方だった。普段は怖い物なしみたいな様子だったのに」

「う~ん……普通の人間である限り、むしろ怖がった方がいい相手ってのがいるんじゃないかな? その意味じゃ、むしろあいつはまともだと思う」


 関係ないが、高梨が「暗闇で本物の悪魔でも見たような~」と例を挙げたのは、ひどく正解に近い。もちろん俺は悪魔じゃないし、前世は魔王だったという話も、完全に信じているわけじゃないが。


 だが、高梨ははぐらかされているとでも感じたのか、不服そうな顔で俺を見た。


「もういいわ。とにかく、あたしを庇ってくれたことにはお礼を言います。……でも、明後日の集団戦では手抜きはしないから」

「それだけど、集団戦ってなんだ? どういう方式で戦うんだろう。今頃気付くのもアレだが、普通はギフトなんか使うと、生死の戦いになっちまうんじゃないか? 少なくとも俺が使うと、よほどギリギリまで加減しないと、まずそうなる」


「あたしも詳しくは知らない……入学したばかりだし。でも噂では、レゾナンスシアターっていう名のギフトを持つ、これも入学したての女の子がいて、その子の能力で誰も怪我せずに存分に戦えるとか?」


「レゾナンスシアター? 共鳴映画館? なんだそれ」

「知らない。言ったでしょ、あたしも新入りだもの」

「なのに、もう実戦部隊のポーンになれたのは、大したものだ」


 機嫌を取るためにヨイショしてみたが、これは裏目に出た。


「イヤミで言ってるの、それ!?」


 逆に高梨は気を悪くしちまった。

 そういや、俺は成り行きとはいえ、さっきナイトにされたんだっけ、ははっ。


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