表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/41

空路は、(怪我人が大量に出た以外は)今のところ順調


 俺達はバトルスーツなどの荷物は各自トランクに詰めたままで、今は学生服でこの軍用機の内部に座っている。


 学園の車と同じで、内部左右にそれぞれベンチがあり、兵員が座る仕様――だが。

 俺達三名の斜め前には、なぜか金髪野郎が三名ほど座して、ニヤニヤとこちらを見ていた。とはいえ、全員が由美とリーナを見ているんだけどな。


 まあ、妹が送って寄越したんだし、あまり乱暴なこともしたくない。


 それで、珍しく俺は、じろじろ見る方は大目に見てやっていた。

 すると――飛び立ってからしばらくして、今度はパイロットとは別の誰かがのしのしと操縦席の方からこちらへ来た。


 もうなんというか、小型のクマが迷彩服を着たような外見であり、スキンヘッドである。おそらく髪が残っていれば金色なんだろう。

 多分、サブパイロットって奴かね?


 これはもしかして、昨晩のうちに由美に言語変換の魔法をかけてもらっておいたのが、早速役に立つか? と密かに思っていると、やっぱりだった。

 推測だが、このクマ副パイロットは、俺達が自分とこの故国(ソランとかいう小国な)の言語など、しゃべれるはずはないと思ったんだろう。


 だから、笑顔で話せば、なにを言ってもバレるわけないだろうと。

 で、中央に座す俺の前に仁王立ちして、いきなりニカッと笑った。




「やれやれ、貴様みたいなクソガキ東洋人を呼びつけるとは、殿下もなにを考えてらっしゃるのやら。てめーらの取り柄は、女が美人でスタイルもいいってことだけだぜ。本来なら、この機からも放り出して――」


 そこら辺で俺はもう大人しく聞くのをやめ、いきなりそいつを指差した。


「風船みたいに浮け」


 俺の不可視の力を受け、そいつの巨体が嘘のように軽々と浮かぶ。

 途端に、本人はもちろん、遠目に眺めていた他の三名の野郎達が、ぎょっとしたように会話を止めた。


「こっちに通じないと思って、好き放題を言ってんじゃない。支配者としての俺の目から見れば、国の根幹を腐らせ、王に恥を掻かせる兵ってのは、まずおまえみたいな脳みそ空っぽのクソ馬鹿だ。役立たずのおまえ達と違って、こっちは呼ばれて来てやってんだよ。礼儀知らずはいっぺん死ぬか、おい?」


「うううううっ! うー、うーーっ」


「はっ。真っ赤な顔してからに。うーうー呻くだけじゃ、なにも伝わらんぞ? まともにしゃべれ。安心しろ、言葉は全部通じてるし、俺の話もソラン語で聞こえてるだろ?」

「グググッ」


 相手は答えなかった。

 というより、答えられなかったという方が正しい。


 まあ、俺が座り込んだまま、そいつの首を巨体ごと持ち上げてるからな。こいつの仲間から見れば、スキンヘッド野郎は、なぜか俺の少し斜め上の空中で、首筋押さえてジタバタ暴れているように見えるはずだ。


 ダー○・ベーダーごっこは、楽しい。


「おい、貴様っ」

「中尉殿を放せ!」

「き、気味の悪いことをしやがって」


「無礼者っ」

「我が君の御前よっ」


 三人目が近付いた時点で、由美とリーナが素早く立ち上がり、そいつらに向かった。

 由美がまず、三人目の発言者を無造作に蹴飛ばして壁に叩きつけ、そして唖然として見ていたもう一人を、そっちを見もせずに「上がれっ」と声に出し、宙に浮かせる。


「なっ、なんだっ」

「うるさい」


 向き直ると親指をさっと下に向け、今度はボールみたいに床に叩きつけた。

 最後の一人は、リーナがとうに首筋を肘でぶん殴り、昏倒させている。


「丈様、殺しておきますか?」


 由美が当然のように問う。


「そこまでしなくていい。しかしこのクソスキンヘッドには、せめてとっくり説教をだな」


 と思ったんだが……ぎらっと向き直ると、とうに泡噴いて気絶してやんの。まだ俺、座ったままなのに。

 由美じゃないが、人間は見た目が頑丈そうでも、アテにならんなぁ。


 ため息をつき、死なないうちにそこらへ放り出した。

 結局、最後まで立たずに済んでしまったじゃないか。




『なんの騒ぎだっ』

 

 空港で後ろに立ってた、しかめっ面のパイロットの声がした。


「どうせ、隠しカメラで見てただろ、おまえ? 部下の教育くらい、ちゃんとしておけ。俺達がこいつらを殺さなかったのは、王女に多少は遠慮してるからだが……また同じことがあったら、今度は殺すからな? 次は遠慮しないから、はっきりと警告しておく。弱いくせに吠えまくる犬は嫌いなんだよ。わかったか?」


『い、いや。私は――』

「やかましい! 話は以上だっ」


 最後に命じると、本当に黙り込んでくれた。

 おお、言ってみるもんだな。


「リーナ、悪いけど、ちょっと膝を貸してくれる?」


 打って変わって、俺にしては優しい声を出す。


「――っ! よ、喜んでっ」


 いや、涙ぐまんでも。


「わ、わたしがっ」

「いやほら、由美にはいつもやってもらってるから、たまにはな」


 それ以上言われないうちに、リーナの膝の上で、ささっと頭をお腹の方へ向ける。

 相手が弱すぎて気分悪いので、少し眠ろう。


 まだ当分着かないだろうしな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ