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そちらには、ギフト戦士のジョウ・キリサキがいるからです

 俺と、最後に倒したあいつが、互いに閉鎖結界などを使った結果、後から関係者が監視カメラを見たところで、なにがなんだかわからない状態だったらしい。


 そりゃまあ、閉鎖結界に入った途端、監視カメラからは消えるものな。


 ついでに、俺がヤバい連中を呼び出した記憶は、あの仕送り高梨の記憶からは消したはずなので、あいつが密告することはないと思う。


 ……このように俺は、監視カメラが役立たずだった話を聞いたところで特になんとも思わなかったのだが、俺とリーナと由美の三名だけ、なぜか居残りというか撤退した仲間から置き去りにされてしまった。

 しかも、藤原に呼び出され、駅の守衛室を貸し切りで独占し、おっさんと不景気な顔を見せ合うこととなってしまった。


 タバコの臭いが籠もってて、リーナと由美が顔をしかめている。


 俺も吸わない方なので、決して好きな臭いじゃないが……それより、藤原が俺達のみと話したがっていることにやや警戒していた。

 人を呼び出しておいて、なにやら考え込んでいるおっさんが妙にうっとうしく、俺は自分から水を向けてやった。




「あー、死体は残ってない――いや、残っているけど細分化されているのは俺のせいではあるけど、少なくとも敵が全滅したのは本当だけど?」


 俺を援護するつもりか、リーナと由美が何度も頷いていた。


「え? ああ、その件だね……うんうん」


 なんだよ、その件じゃなかったのか。


「まあ、君達が監視カメラの映像から突然消えて、また再び現れたことや、なぜか途中で高梨君が口元を汚して急に改札口のみんなのところへ現れたことなど、『わー、説明できないことが多くて、困るなぁ』とは思ったよ、うん。でもまあ、それはもういい。幾らか逃げた可能性はあるが、残りの敵が駅構内から消滅したのは事実だし、元より自衛隊の方には『こうなった以上、捕虜の奪還よりボーダー殲滅を優先する』と最初から言ってあるしね。幸い、敵を何名か倒した証拠はあるから、それでごまかせるさ」


「政府はともかく、自衛隊がそれで納得するか?」

「せざるを得ない」


 ニヤッとワルそうに藤原が笑った。

 しかもこいつ、軍服のポケットから銀色の金属水筒みたいなの出して、ぐびっと呑みやがった。ありゃ絶対ウイスキーとかだな。


「ふうっ」


 藤原は素早く水筒を仕舞い込み、何事もなかったように続けた。


「私を解任する権利は自衛隊の方にはないし、仮に我々の組織が解散したとしたら、困るのは日本政府や当の自衛隊の方でね。どうせ彼らには対抗手段がないんだから、下手なことはできないよ」


 あっさりと言い切ってくれた。


「ギフト持ちはティーンの少女が最も多く、ボーダーに対抗するには、これを組織化するしかない……最初から結論は出てるし、世界中でそういう傾向にあるのに、我が国は対応が遅すぎた。それもこれも、未だにボーダーの侵食率が他国より少ないお陰なんだが。ただまあ」


 藤原はいま気付いたような顔でとっくりと俺を見た。



「正直、推測に過ぎないとはいえ、君の力はあまりにも巨大だな。別にこの目で見てなくても、激辛シチューを床にぶちまけたようなあそこを見れば、それくらいわかる」



「丈さまが強くて、なにか困ることでもあるんですかっ」

「誰よりも戦ったんですよ、我が――いえ、丈さんはっ」


 由美とリーナが尖った声で言い返す。

 おい、そういう口の利き方すると、いよいよ俺の怪しさが際立つだろうが。


 特にリーナの変わりようは、おっさんが「このガキ、金髪美人を洗脳しやがったな?」と疑われても、おかしくないレベルだ。


 ……とはいえ、魔王の臣下は魔王その人に対し、どうしてもトモダチ関係みたいな会話はできない……無理にそうしようとすると、ひどく苦しくなるらしい。


 しょうがないので、俺が自分でフォローした。


「なあ、バスターソードってあるだろ?」





「ああ、昔の両手持ちの剣ね」


 面白そうに藤原が頷く。


「それが?」

「俺はだな、アリに対するバスターソードだと思ってくれ。使う力の桁が違うんだよ。指で摘まんで殺せばいいんだが、そういう細かいことはできないのだな、うん」


 いや、別にやろうと思えば細かい殺し方もできるが。

 とはいえ、このたとえも決して間違いじゃない。


「言いたいことはわかった」 

「えっ、ホントに!?」

「うん、本当に」

 

 またニヤッとおっさんが笑う。


「幸いねぇ……君にふさわしい任務が転がり込んできたんだなぁ」

「えーっ」


 俺は誰に遠慮することなく、顔をしかめた。


「俺、まだ嬉し恥ずかしの学校生活を、一日たりとも送ってないんだけど。待機か、それか激戦か……どっちかしかなかったぞ」

「我が学園の基本的役割は、ボーダー退治だよ。君が一番、我が学園の理念に沿っているさ」

「……真顔で言うな、真顔で」


「そこで、本題に入るが(無視かいっ)、実は我がサンシャイン学園に――というより、実は君を名指しで、他国から救援要請が来ている」


「平和ボケした日本に救援要請って、どこの田舎国家だよ?」


 冷笑して俺が言い返すと、藤原は簡単に教えてくれた。


「この前、うちの学園と似た訓練所が全滅するのを見たよね? 救援要請が来たのは、そこの国からだ。ヨーロッパの辺境に位置する小国家だが、今や国土失陥の危機が迫っている。なにしろあの動画以後、ボーダーの侵攻は全然止まっていないからね。本当に国ごと占領されるとなると、初めての国土侵略ケースとなるなあ。当然、今や世界中が固唾を呑んでいるのさ……その割に、助力する国家が少ないが」


「それにしても、なんで俺が……ていうか、まさか俺だけで救援行けとは言わんよな?」

「まさか!」


 二人して立ち上がりかけた女の子達を目で抑え、藤原が力強く言う。


「リーナ君と由美君を連れて行っていいよ」


 ――おいこらっ。一人と大して変わらんだろうがっ。

 と喚きかけたが、俺は気が変わった。気遣いがいらないから、その方がいいか。


「うふふふふっ」

「よかったあっ!」


 ……由美達も抱き合って喜んでるし。


「それに、不思議なことに孤軍奮闘の向こうの王女は、『なぜ我が国に、というより、我が学園に救援要請を?』と尋ねた当方に対し、『そちらには、ギフト戦士のジョウ・キリサキがいるからです』と答えるのだな。さて、これは一体どういうことか? ちょっとこっちも不思議に思ったわけだ。……君に心当たりは?」


 人の悪い笑顔を広げ、藤原が俺を見つめた。


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