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ボーダーは、加速って使えないのかな?


 俺はついでに、リーナに尋ねた。


「周囲に仲間がいる状況じゃ、遠慮せずに頭を狙う方がいいなと思って撃っちゃったけど、頭部が破壊されても、乗っ取りは証明できるものかな? 今後の参考に訊きたいが」


 俺は間違えない自信あるのに、少女殺しで責められたらたまらない。


「大丈夫です。後から血液を調べれば簡単にわかります」


 リーナが保証してくれたので、ほっと息を吐いた。

 傷より、そっちの方が気になっていたのだ。 

 ちなみに、体内に残った魔導弾は勝手に身体から排出されてそれで問題なかったが、新品のバトルスーツは大穴が開いていた。


「防弾効果ないのか、このスーツ……使えないなあ」 


 不満を口にする俺を、高梨が落ち着かない表情で眺めていた。

 片方に寄せた変形ポニーテールの先をしきりに弄ったりして、情緒不安定そうに見える。


「なんだよ……ファラオのミイラをうっかり踏ん付けたような顔して?」

「なに、そのたとえっ。私はただ、貴方があまりにも非常識なんで、呆れてるだけよ」

「そうか。ならおまえの常識が間違ってたというだけだな」


 笑顔で言ってやったとたん、通信が入った。


『こちら、藤原。あー、霧崎君、現在地はどこかな?』

「こちら霧崎。別にサボってるわけじゃないよ。たった今、応援に向かう途中の地下二階でボーダーを一匹見つけ、倒したところ」


『そうか。……ちなみに今、地下一階の改札付近は阿鼻叫喚の有様で、敵味方が入り乱れて撃ち合いの最中だ。君は簡易脳内スキャンせずとも、敵がわかるようだから、急いで事態を収めてくれないか』


「了解。一分くれ、すぐに駆けつける」


 無線を切って、俺は二人を促した。


「聞こえてたと思うけど、急ごう」

「はいっ」

「わ、わかったわ」


 俺は先頭に立ってすぐに走り始めた。






 地下一階へ向かう、最後の長いエスカレーターを駆け上る途中、俺は専用銃のマガジンを抜いて、まだ一発も減ってないマガジンと交換しておいた。

 そして、俺が最後の数段を上がり切って、地下一階フロアに現れた途端、いきなり特徴ある光の尾を引いて魔導弾が数発ほど風切り音立てて至近を掠め、俺はうんざりして怒鳴った。


「おい、撃つな! 俺は味方だっ」


 だいたい、改札前のちょっとした広場がここから見えるが、そこにいるのは全員、バトルスーツ着用の仲間である。


「ナイトの霧崎ね、霧崎! 撃つ前に、この正直そうな顔を見てくれっ」


 選挙運動のように連呼しつつ、彼らに近付く。

 遮蔽物の陰に隠れて臨戦状態なのは、当然のように女子ばかりで、しかもなぜか二つのグループに分かれて睨み合っていたりする。


 しかも、その辺に数体ほど死体が転がっているという……。

 知り合いが入ればそいつに訊くのだが、あいにく知らない子ばかりだった。




「……おまけに、ルークのナントカいう奴は、もう死んでいるしな」


 結局、運命は変えられなかったらしい。

 俺に文句言いかけたあいつは、顔半分が吹っ飛んで俯せに倒れている。


「他にルークとかナイトとかいないのか? この場を仕切れる奴? ていうか、なんで味方同士睨み合ってるんだよ?」

「あたしが説明しますっ」


 幸い、ポーンの記章つけた一人が手を上げた。

 改札の陰に身を潜めたままではあるが、俺に向かって説明してくれた。


「制服警官が『報告させてほしいっ。実は最深部のトンネル付近で新たな敵が』なんて言いかけて近付いた途端、いきなりルークの古暮さんの頭を撃って、殺しちゃったんです。そしたら、いつからまじっていたのか不明ですけど、仲間うちで周囲の味方に発砲する子が出て、それを機会に、撃ち合いが始まっちゃって」

「……もしかして、ナイト以上の子って、もう撃たれた後?」


 転がってる死体の一人が、ナイトの記章付けていたので、思わず尋ねた。


「そ、そうなんです。それでみんな疑心暗鬼にかられて……脳内スキャンの機械がいつの間にか破壊されてて、誰が敵かわからないし」

「あー、なるほど」


 俺は肩をすくめ、ざっと現場を見渡した。


「なら安心してくれ、俺には見分けがつくから。全員、そのままそこで動かないように」


 穏やかに言ったのに、いきなり立ち上がって銃を構えた子がいた。

 しかも、俺に向かって。


「そういうあんたこそ、ボーダーでしょうが!」





 引き金を引く指に力が入ったようだが、あいにくその時には俺がそいつの背後に回っている。


「ボーダーは、加速って使えないのかな?」

「――っ!」


 至近から後頭部に撃ち込んでやった。

 べしゃっと俯せに倒れてしばらくもがいていたが、さすがにすぐ動きが止まった。


「それと、おまえだ!」


 密かに俺から離れようとしている元仲間にも、連続で撃ち込んでやる。最後の一人は、覚醒したリーナが仕留めた。


「お見事!」

「いえ、丈さまこそさすがです」


 リーナがとろんとした目で俺を見てくれて、ひどく落ち着かない気分を味わった。


「よし、みんな聞いてくれ! ひとまず今、この場に残ったのは、全員味方ばかりだ」


 俺が宣言した途端、少しほっとしたような空気になったが、まあでも、まだ半信半疑というところだろう。


 遮蔽物から出て来たのは、生き残りメンツの半分くらいだったからな。


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