5話 アベント
昨日すっぽかした分
二回投稿、へへへ
なぜ木だけで人形を
作っていたのだろう。そしてなぜ
全ての人形にエンチャント
しなかったのだろう。
全部にエンチャントしていれば
あそこまでの苦戦にはならなかったはずだ。
頬の傷も、緊急時への対処を怠った結果だ。
石でも人形を作っていれば、
人形に武器を持たせていれば、
もっと戦いやすかっただろうに。
そんなことを思いながら一樹の朝は
憂鬱にとりつかれながら迎えた。
「はぁ~、作ろう。石人形」
森の至るところには
大きな岩のようなものがある。
今までも見かければちょこちょこ採掘し、
手に入れていた。作ろうと思えば
人間大の人形も作れるだろう。
さらに採取人形が木と岩をかなりの量
採取してくれていた。
だが、今優先すべきは
人里に降りることだろう。
人里に降りれば森の恐ろしい生物と
会わないですむ。
この世界で生き残るにはそれしかないのだ。
一樹は歩き続ける。
それからどれだけあるいただろうか。
もう足がへとへとだ。だが、
とうとう人里に降りてきたようだ。
ここに来るまでにかなりの苦労をした。
だが、それもここで終わり、
同じ人と、同じようにいきることができる。
道中に蜘蛛の巣や薬草を
採取したから少しくらい売ることも
できるはずだ。それでお金を稼ごう。
いや、町中で人形劇を披露するのもよさそう。
少し奥に進むと、
何にんもの人が二列にならび、
開門を待っている。
「はぁい、んじゃ、身体検査しまぁ~す。
入町希望者は、ちゃ~んと指示に従って~?
順番待ちしててくださぁ~い」
おどけた態度の
門番が声をあげ、一斉に辺りが
ざわつく。入町できるのは
かなり後になりそうだ。
「では、身体検査します。
鞄はないようですので、服の上から
触らせていただきます。……はい、
大丈夫です。おや、お金がないようですね。
ではこちらの札をお持ちください。
3日以内にここ、または各ギルドへお金を
記載の通り渡していただければ大丈夫です。
ようこそ、アルカード領、アベントの町へ」
最後まで一人でしゃべってたな。
アルカード領、アベントの町か...
この国はいったい何て言う名前なんだろう。
みんなが召喚されたのもこの国なのかな。
まぁいいや、とりあえず宿代を
払うためのお金を手にいれるために
路上で人形劇でもやろう。
やっぱ人が多いところがいいよな。
あくまで僕の考えだけど、商店街を
抜けた辺りに広場があると思う。
ど真ん中に噴水があるような小さめの広場が。
そこでやるのが一番いいだろう。
右も左も分からない新天地だが、
また改めて異世界に来たという実感を得て
頬が緩む。
歩いてたら見つかるだろくらいの
気持ちでフラフラっと歩いていた。
様々な人が通り、
客を呼び寄せて商売をしている。
どうやら商店街のようなところへ
出たようだ。
商店街を抜け、辺りを見るとやはり
噴水があり、かなり空いたスペースがある。
やはり、広場があったようだ。
作製スキルを使い、
即席で小さい劇場を噴水の前に作る。
辺りは突然現れた小さい劇場に
なんだなんだと人だかり。
小さい劇場の手前には気に入ったら
お金をいれてくださいの木箱。
うん。いい感じ。
さて、始めよう。
物語は前に読んだ小説でいいや。
掛け声は、レディースアンドジェントルマンで
いいよな。
英語通じないかな?
何となくでわかるか!
いきを吸い込み、
大きな声で叫ぶ。
「レディ―――――」 「引ったくり!誰か
捕まえて!」
突然、横やりが入ったかと思うと、
一人の少年がこちらに向かって
全速力で走ってくる。
「どけどけどけー!!
へっ、捕まるもんか!」
どうやら本当に引ったくりだったようなので、
ブリキの人形を魔力の糸をつけて
投げる。とっさにてきとうな名前をつけて
人形による罠を作る。
仕掛けは簡単。ただただ走ってくるやつの足に
魔力の糸を引っ掻けるだけ。
「くらえい!足引っ掻け人形!」
ドテン! 「ぐぇ!」
はい、確保っと
きりわるくてごめんなさい