11話 風の眷族、テトさ!
お盆は忙しくて
投稿あんまりできないかも
「やあ、お目覚めかい?」
「その面で顔覗き込むの
やめてくれないかな。いま
ものっそいビックリしたよ」
「ホー」
目が覚めるとアリスが枕元で、
ではなく、フクロウが胸板に乗り
顔を近づけてまじまじと一樹を視ていた。
このフクロウ、表情筋がないのに
にまにまと笑っていることがわかる。
その証拠に目は半開きにしている。
異世界ではフクロウが喋るのか?という
疑問はノータッチを通すみたいだ。
「ていうか、なんでフクロウなんだよ。
そこは浮く猫とか浮く子犬とかあとは
フェンリルとかだろ。」
「ボクは精霊だからね。
フクロウでいるのは自分の意思なのさ。
精霊でも猫だと飛べないしねぇ。
君の故郷には飛ぶ猫がいたのかい?」
「頭に黄色い竹トンボつけて飛ぶ
青い狸...猫ならいたよ。」
このフクロウ、見た目は完璧に
シマフクロウなのに色が真っ白だ。
雪を思わせるほどの白さをしている。
一応フクロウにも白い種類はいるが
ここまで美しい白は滅多に見ない。
するとこのフクロウはそれを察したかの
ように羽を広げる。
「ボクにみとれた?ボクも
この白さは自慢なんだよね。ま、
毎日手入れしてくれるアリスのおかげ
なんだけどね。ほら、きれいでしょ?ホー」
ここまできてようやく一樹は
アリスのことを思い出した。
白いフクロウに夢中になり、かつ
寝起きだったために思考が回らなかったのは
仕方ないことだろう。
「あ、アリスは怪我なかったか」
「怪我もなにも、君が治したんじゃないか。
ボクの契約者は底度な治癒魔法しか
使えないからね。ボクも魔力が
補充できてたらもっと戦えたんだけど
一昨日にアリスが君とどこかに行ってるとき
かなり使っちゃったから少なかったんだよ。」
白いフクロウは少し情けない顔をする。
正確には表情はそこまでないが瞼が
そんな風におちた。
白いフクロウは話を続ける。
「だから君にはありがとうを言わなきゃね。
ボクの契約者の可愛い顔に
傷がついたか大惨事だからね。
ありがとう。一樹くん。」
「おう、ん?なんで僕の名前しってんの?」
「それはアリスに嫌と言うほど
話をきかされてるからねぇ。
あぁいうところが素敵で~、
こういうところが面白くて~ってね。」
「え?」
アリスは男嫌いだったはずだ。
それも近づけば手を出されるほどに。
この一ヶ月間、何度もそれで
体を痛めた。一ヶ月前の会った当初の
一樹への礼儀がどこにいったのか
分からなくなるほどに。そもそもの
礼儀の理由が分からなかったのだが。
そのように意思を張り巡らせていると
白いフクロウが口を挟む。
「ツンデレなんだ。あの子
それも、デレがかなり重度な」
「えぇえぇえぇ!!?」
衝撃の事実だ。だって
今まで吐かれた罵詈雑言、思いっきり
叩かれたビンタでさえすべて照れ隠し
だというのだから。
笑顔 (笑)をみせながらとんでもないことを
いうものだこのフクロウ。
「でも重度なデレがある故に昔
ちょっとした事件的なものがあって
自分に恋愛する資格がないと感じてるのも
また事実なんだよね。ホーっとけないから
困ったものだよ。アリスのパパが
男との接触を禁じてたから突然現れた
男の子に惚れるのも仕方ないというものさ
たとえ男をどう聞かされてても」
なるほど、それであれが
出来上がるというわけか。
つまりは自分に近寄る男に惚れたら
迷惑かけるし、かつ資格がないから
遠ざけるために暴力暴言を振るう。
ということになる。
それはなんともまぁ
「バカな話だよねぇ。」
「そうだね」
「一樹くんのことあんなに褒めて
ベタベタなのにまだ資格がないとか
言い張るんだからたいしたものだよ。」
「想像つかねぇ」
「ホー。
あ、アリスがこっちに向かってくるよ。
今のは内緒ね。ボクが殺されちゃうから。」
「おう、任せろ。
んで、名前なんていうんだ。」
「ボク?ボクはテト。
風を司りし聖獣、キリンの
由緒正しき風の眷族。風の精霊テトさ!
ホー!ってね。」
「じゃあ僕も。海良一樹、
通りすがりの現在貴族の金むしり中の身で
社会的ゴミ感に打たれながらも
のうのうと生きております傀儡幻術師。
ま、かなり稼いでるけど。」
「そうやって聞くと本物のゴミ感が
でるね。事情はしってるけど。」
「お目覚めですか、一樹さま」
白いフクロウ...テトとの
会話でアリスの入室に
気づくことができなかった。
反応が遅れたのはいうまでもない。
「う、うん。
朝から元気HATURATU。」
「それはよかったです。」
アリスは静かに椅子に座り
それ以上なにも言わない。
テトも雰囲気を察してか険しい顔 (?)
をしている。フクロウだから普通に真顔かも
しれない。
「あ、ありがとうございました。」
これにはビックリしてもいいと思う。
ここ一ヶ月。どう尽くしても
ありがとうなんて言われたことがなかった。
今回も言われない覚悟というか、
それさえ前提においていた。
予期せぬありがとうに鼻面を叩かれた
犬のように固まる一樹。
この言葉にどれ程飢え、望んだことか。
つい、頬が緩む。
「どういたしまして。」
小鳥と白いフクロウが囀ずる
緩やかなあさだった。
「なぁテト、俺にも
精霊と契約ってできんのかな。」
「誰でも、何体でもできるよ。
ただし、契約してくれるかはその
精霊次第だけどね。」
はっきりいう、精霊羨ましい。
超絶羨ましい。精霊との契約というと
異世界ファンタジーの醍醐味の
ひとつとも言える一樹内必須イベント。
だがやはり、精霊よりもこっちを
気にするのは当然だろう。いや、
ハーレムも大事だけど、そっちじゃなくて。
「じゃあ聖獣とか神獣とかは?」
「それは精霊じゃないから
従契約だよ。ま、聖獣と契約した人なんて
過去をいくらたどってもたった一人、
神獣に関しては0人だけどね。
こっちも何体でもできるよ。方法は
様々!力でねじ伏せる。力を認めてもらう。
危機を救う。気分とかね。ちなみに
聖獣と契約した一人は気分でだったらしいよ」
「なかなか難儀なんだね」
「そりゃそうだよ。」
ここまで聞いて当分やりたいことが決まった。
精霊なんだからきっとものに
憑依などもできるはずだ。
勘のいい人ならこれだけでもわかる。
「なら俺は聖獣と神獣は機会があれば
会うとして、かなりの数の精霊と
契約する!」
「簡単にいうねぇ、聖獣と神獣に
機会があればだなんて。ま、精霊は
森とか山とか緑のあるところにいけば
いくらでもいるけどね。」
「な、?
ま、また森かよぉ」
一樹の
モチベーションは落ち続ける。
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