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 お昼になって、今日は天気がいいし外で一緒に食べようと誘われ、葵くんと噴水のある中庭でお弁当を食べようとしていました。


 なぜ過去形かと言うと、


 「ねぇロリコンこっち来ないで、あっち行って悠莉を見ないで」

 「えーー? 無理でしょ、だって可愛い悠莉がいるんだもん」


 ニコニコ笑いながら保険医の先生が来てしまったから。


 そういえば、保健室が噴水に近いのをすっかり忘れていた。

 本当は教室で食べようと思ったけど、教室が異常に静かだったから落ち着かなくて外に来たんだよね!


 葵くんはイライラしながら私の目の前に立って、先生の視界に入らない様にしてくれている。


 「あっ、そういえば俺の名前言ってなかったよねーー?天明司(てんみょうつかさ)だよ。司って呼んで悠莉」

 「お前はロリコンか変態で充分だ」

 「王子くんはひどいなぁーー。ゲームはもっと優雅で紳士的だよ?」

 「ゲームじゃないし」

 「まぁ、そうだけどねーー? あははっ王子くん可愛いね!」

 「やめろ」


 葵くんは冷たい態度なのに天明先生は、なぜか笑いながら好意的だ。

 大人の余裕ってやつなのかな?


 はっ……!もしや!!


 「実は、本命葵くんだったり……」


 小さく呟いたけど聞こえたみたいで、二人の視線が私に向かう。


 「えーー、違うよ?」

 「やめて? 気持ち悪いから」


 同時に即否定!

 葵くんは見た事が無いぐらい嫌な顔をしていて、天明先生は苦笑している。


 ……うん、なんかごめん。


 「ほら、お弁当食べないと時間無くなるよ?」

 「ロリコンのせいだよね?」

 「その名称、決定なのかなーー?!」

 「仕方ないから、他の生徒の前では先生って呼んであげてもいいよ?」

 「他の生徒がいない時は決定なんだね?!」


 最後の先生の言葉には無視して横を向く葵くん。

 それを見て、先生はしょんぼりしている。


 ……やっぱり、ちょっと仲良さげに見えてしまうよね? 気のせいじゃないよね?


 「仲良いよね?」

 「「どこが?!」」

 「えっ、そう言うとこが!」

 「「……」」


 今度は二人とも嫌な顔をしていて、その様子がちょっと面白くて笑ったら、二人共微妙な顔をしていました。


 「ーーうん、笑顔が見れたから今はこれでいいかなーー? じゃ、そろそろ俺は保健室に戻るね、ごゆっくり~♪」


 そう言いながら、優しい笑顔を残して歩いて行った。

 天明先生の後ろ姿が見えなくなると、二人してホッと一息吐く。


 「やっといなくなった。図々しいにも程があるよね」


 じゃ、こっちで食べようと葵くんが手を引いた先のベンチに腰掛ける。

 自然な動作で持参したお弁当の包みを開け始めたので、私もお弁当を開けて手を合わせた。


 「いただきます」

 「いただきますっ」


 食材への感謝を込めて挨拶をしてお弁当を食べ始めつつ、チラリと葵くんを見ると目が合いその瞬間ふわりと柔らかく微笑んだ。


 王子様スマイルが眩しいです!! 葵くん!!


 「ゆう?」


 知ってる声に呼ばれて振り返ると、幼馴染みのお兄ちゃんがこっちに向かって歩いて来ていた。


 「なっちゃん! この学園にいたんだね!? 久しぶりだね」

 「あぁ」


 なっちゃんはかっこいいけど目付きが悪い。だけど、笑うと覗く八重歯が可愛い人です。

 ぐりぐりと頭を撫でられる。いつも撫でてくれるんだけれど、その手の大きさや暖かさも懐かしい。


 うへへへへ……。


 「……悠莉、誰かな? 紹介して欲しい」


 はっ、うへへとか思っててごめん! 葵くん!!


 焦りながら葵くんに目を合わせると、なっちゃんの紹介を始める。


 「あっ、こちら幼馴染みの『桐島夏樹(きりしまなつき)』こと、なっちゃんです!!」

 「で、なっちゃんこちらは……」

 「初めまして悠莉の彼氏、王子葵です」


 私が紹介する前に自己紹介しつつ差し出した私の手を返して、手の甲にキスをしながら自己紹介する葵くん。


 何してるの葵くん!! メッチャ恥ずかしいからねそれ!!

 葵くん萌えしてるから、叫んだり悶えるのを我慢するの辛いんだからね!!


 苦行か!! こーーんにゃろーー!!


 脳内でハッスルしてる私は、二人が睨み合ってるなんて気付かなかった。


 「……へぇ、いつから付き合ってんだ? 悠莉」

 「へ?! えっ、き、昨日から」


 名前を呼ばれてハッスルから我に返り、慌ててなっちゃんの問いに応える。


 「ふぅん?」


 何だか微妙な顔しているなっちゃんを見ていたら、手を握って私の横でキラキラ笑顔を向けてくる葵くん。

 メッチャ可愛いんだけど、何か圧力を感じるような……?

 あっ、もしかしてお弁当?!


 「なっちゃん、私達お昼食べてるからさ、話が長くなるならまた今度でもいい?」

 「あぁ、悪ぃな。……じゃ、久しぶりに今日の夜、ゆうん家に行くわ」

 「え、今日? 多分、大丈夫だと思う」


 私の言葉に頷くと、ポンと頭に手を一瞬置いて微笑む。


 「じゃあな」

 「うん、またね!」


 なっちゃんに軽く手を振って葵くんを見ると、笑顔の葵くんのが目が笑ってない。

 「ひっ」と、一瞬口に出しそうになったのを止めた私を誰か誉めて欲しい。


 「ねぇ、あの人悠莉の家によく来るの?」

 「最近はなかったけど、幼い頃はお互いの家に預けあったり、家族で遊びに行ったりしてたんだよ。なっちゃんのお母さんと家のお母さんは親友なんだって」


 私の言葉に微妙な顔をする。


 「そう……、そんな裏設定があったとは」

 「えっ裏設定?! ってまさか……」

 「うん、桐島も攻略対象者だよ」


 ええええ!! 確かになっちゃんかっこいいけど!!


 なっちゃんが攻略対象者と聞いて、気持ちが沈むのを感じた。


 「桐島が攻略対象者なの嫌?」

 「えっ? うん、喜んではいないなぁ……」


 見えないけど、ヤンデルヒロインの可能性があるんだよね?!

 血は繋がってないけど、お兄ちゃんみたいに思ってる人がそんなヒロインに落とされるのはちょっと嫌だ。


 「そう……」


 呟いた葵くんの声が寂しそうで、葵くんを見ると眉間に皺を寄せて俯いていた。

 今日の葵くんはちょっと変だ。気付いたら辛そうにしている時がある。


 「葵くん、大丈夫?」

 「何が? 別に大丈夫だよ?」

 「ならいいけど……」


 出会って間もないから、言えない事もあるかもしれない。もっと仲良くなったら、私に悩み相談してくれるかな?

 その時はそんな風に考えていた。


 ーー葵くんは私の事を考えてくれていたのに。





 

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