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 「おはよう悠莉」

 

 朝、家を出ようかと玄関の近くにいたらインターフォンが鳴ったのでそのまま出ると、葵くんが笑顔で挨拶してきました。


 「おっおはようございます?」

 「なんで疑問系なの?」

 「なんで家知ってるの?!」

 「調べて貰ったんだよ。うちの執事、有能なんだ」


 そ、そっか執事がいるのか。葵くんお金持ちそうだもんね。

 急な出来事に頭が回らないでいると、


 「悠莉、どうしたの?」


 後ろから母に声かけられた。

 私が振り返る前に葵くんは私から少し横に位置をずらして、ちょっと玄関を開く。


 「はじめまして、悠莉さんとお付きあいしている王子葵です。宜しくお願いします」

 「あらあら、ご丁寧に! 悠莉の母です。こちらこそ宜しくね」

 「なっなに言っちゃってんの!!」


 いきなり自己紹介始めた葵くんに焦ってしがみつくようにして言うと、きょとんとした顔で首を傾げた。


 「僕、間違った事言ってないよ?昨日、悠莉は恋人になるって言ってくれたよ?」


 そうだね! 言ったね!! それとその首の傾げ方メッチャあざといよ!!


 「うふふ、仲いいわね? 悠莉ってばこんな素敵な彼氏が出来てたの? 恥ずかしかったの? 早く言ってよ!」


 母は葵くんを見てにこにこしている。横でぐぬぬぬ顔してる私に全然気づかないようだ。

 かっこいい子ねぇとか思っているんだろうな。とりあえず学園に行こう。ここで長話されても困る。


 「じゃ、いってきます! 行こう葵くん!!」

 「あら、いってらっしゃい! 葵くんもね。 悠莉、帰ったら聞かせてね!」

 「ありがとうございます、いってきます」


 母に手を振りつつ、葵くんの腕を引っ張って行く。 今日、家帰ったらいっぱい聞かれるんだろうなぁ。


 「悠莉のお母さん、かわいいね?悠莉に似てる」

 「あ、ありがとう」


 遠回しに私を可愛いって言ってるみたいで、ちょっと照れる。


 「今日はどうしたの?」

 「付き合ってるんだから、一緒に行こうと思って」


 えーー? 何かそれだけじゃないような気がするんだけど?

 

 そう思っているのが伝わったのか、葵くんは立ち止まって私にニコッと笑みを向ける。


 「実はさ、今日ヒロインと登校中に出会うベタなイベントがあるんだよね」

 「えっそうなの?! 間近で見せてくれるなんて葵くん優しい!!」


 まじでーー!!

 記憶にない乙女ゲームだけど、そういうイベントスチルの場面を間近で見れるなんて嬉しすぎる……!

 葵くんかっこいいから絵になるんだろうな!


 私の言葉にあからさまに嫌な顔をする葵くん。


 「そんな訳ないからね? 悠莉。ねぇ、昨日言ったセリフは嘘だったの? 俺がバッドエンドに行くのを間近で見たいって事かな? ん?」

 「ごっごっごめんなさいっ!! 出会いイベントって必然なんだと思って!!」


 葵くんは私の顔を両手で挟んで、キスするんじゃないかと思うぐらい顔が近い。

 でも目が笑ってなくて怖い。すごい怖い。別の意味でドキドキする。


 ガチッ


 「?!」

 「っ!」


 痛い!! 後ろから衝撃が来て葵くんとキス、というか歯がぶつかってすごく痛い!!


 「いっつ……悠莉大丈夫?」

 「っごめん! 葵くん! 口が切れて血が出ちゃってる!!」

 「悠莉もだよ。学園に着いたら保健室に行こう」


 お互いにハンカチで口元を拭う。


 葵くんの顔が困った顔をしていた。頬が少しピンクになっている。


 「ぶつかってごめんなさい、大丈夫ですか?」

 「えっ?」


 振り返ると、ふわふわのピンクの髪のキラキラした赤い瞳の可愛い女の子が立っていた。


 か、かわいいいいいいい!!!!

 天使がいる! 絶対この人ヒロインだ!! ヒロインじゃなくてもメインに出てくる人だ!!

 何だか天使なだけに周りがキラキラ輝いて見える。もしかしたら、私は運命の子に会ってしまったのではないだろうか。

 この子と友達になりたい! 最低でも仲の良い知り合いでお願いします! この子の為に何かしてあげたい気持ちが湧いてくる。

 あぁ、そんな困った顔もいいけど、笑って欲しい。きっと笑った顔はとても素敵に違いない。


 「大丈夫じゃないけど、気にしないでいいよ。それじゃ」


 ええええええ!! 葵くん冷たい!! こんなに可愛いのに!! 天使だよ?! 何で冷たく出来るの?!


 作った笑みで言うだけ言うと葵くんは、私の手を引いて歩いて行く。ヒロイン(?)は寂しそうに見送っていた。


 「ね! 葵くん、私も喋りたい」

 「ダメ」


 まっすぐ前を見てたけど、横目でチラッと私を見て即答する。


 「えーー……」

 「後で俺がいっぱい悠莉と喋ってあげるから」

 「昨日から沢山喋ってるじゃん!」

 「え、なに? 不満なの?」

 「イイエベツニ」


 天使のような悪魔の笑顔で一撃必殺でした。


 かっこよくてずるいよ! あーー、またしてやったりって嬉しそうな顔してる。 あざとい!! ずるい!! 可愛い!! 


 そういえば、さっき口がぶつかったというか、歯がぶつかったというか……、あれ一般的にはキスしちゃったんじゃないの?!


 「と、いうか葵くんを傷物にしてしまった……」

 「それを言うなら悠莉だって、唇切れてるからお互い様でしょ」

 「あれ?! 口に出てた?!」

 「うん。あっそうだ、悠莉が望むなら責任とるよ?」

 「いいです! 大丈夫です! これぐらい何ともないから!!」 

 「……そんなに拒否されると傷つく」

 「えっ! どうしたらいい?!」


 俯いてしまった葵くんの横でオロオロしながら顔を覗きこむと……、うん、葵くんは笑ってました。


 「ふふっ冗談だよ」


 そう言ってまた手を引いて歩き出す。その時、手を繋いでる事に気づいて心臓が高鳴った。


 葵くんってさ、協力者だからって本当に恋人みたいに扱うからドキドキして困る。かっこよくて可愛いだけで既に好感度が高いから困る。

 でもそうやって扱わないと、私がダイコン役者になるからこれも葵くんの巻き込み作戦のうちの一つなんだろうけどさ!

 好きになったら辛いから、絶対勘違いしないように気をつけなきゃ……!


 私はただのモブ私はただのモブ私はただのモブ……


 「て、いうかさ。悠莉さっき魅了されてたでしょ、あの女に。俺が近くにいるのにね?」

 「や、魅了っていうか、可愛いから見とれてたのは否定しないよ。 可愛いは正義なんだよ!!」


 あの子まじ天使! 

 って思いながら葵くんを見て言った後にものすごく後悔しました。


 「へぇーー? あの女は俺より可愛い?」


 いきなり立ち止まって私を民家の壁に寄せると、壁ドンしながら可愛い笑顔を向けて言う。でも可愛いのに怖い、この二つが共存出来てる笑顔怖すぎる……!


 「……葵くんの方が可愛いです」


 思わず目が泳ぐ私。威圧感で冷や汗が出てきた。葵くんは私の返答に満足そうに頷く。


 「うん、そうだよねーー。で、好きなのは俺とさっき会ったばかりのあの女どっち?」

 「勿論、葵くんです」

 「うん、そうだよね──。じゃ、あの女と仲良くしようだなんで思わないで俺だけを見てくれるよね?」

 「えーーっと……」

 「ほら、目をそらさないで俺見て? あと、返事が聞こえないなーー?」

 「近い近い!! 近いよ葵くん!!」


 友達になりたいって、さっき思った事が頭に過って思わず目をそらしたら、葵くんに顎を持たれて強制的に葵くんと目が合う。

 返事をしないとキスするよ?と言ってるかのような至近距離。さっきのも近かったけど、こっちのがもっと近い。

 葵くんが喋る度に吐息が唇に触れる。びっくりして、胸元を押すけど全然びくともしない。


 「ーーっ! 分かったっ! はい分かりました!!」

 「宜しい」


 私の言葉に葵くんは、ため息を吐いてから嬉しそうに笑みを浮かべた。


 うん、可愛いね! でも私の心臓はドキドキしすぎて寿命が縮みまくってるよ! 葵くん!!

 心臓が止まる前に早く監禁フラグ折れないかな……、そう願うばかりです。


 勘違いしそうになる自分を脳内で叱咤してる私は、手を引きながら何かを考えてる葵くんに気づかないでいたーー……。




 

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