どう見られてるのかな
「では、写真撮りますのでお二人とも近づいて下さい」
水族館に移動した二人は、入り口で記念写真を取られていた。水族館ではよくあることだが。
「彼女さんもっと彼氏さんにくっ付いてください」
「か、彼氏!?」
スタッフの人たちは、二人が恋人同士と思い込んでおり、写真を撮るためにお互いの隙間が無くなるように指示を出してくる。海沙は、恥ずかしそうにモジモジしながらゆっくりと優孝の隣に近寄って行くと。
「彼氏さんから寄り添ってください」
その指示にチラッと海沙の方を見て左横に2歩移動すると、お互いの隙間が無くなり腕と腕がくっ付く。触れた瞬間ピクッと体が反応する。
――パシャッ。シャッターが切られフラッシュでちょっと目がくらむ。
「写真は、出口でお買いいただけます。おねがいしま~す」
「わぁ~。魚がいっぱいだね」
通路を進みながら水槽の魚を観察。時々足を止めて水槽のガラスに手をついて、まるで子供のように目を輝かせながら、魚を目で追う海沙を後ろで見守る優孝。
「川中君は、水族館で何が好き?」
「……ハンマーヘッドシャークかな」
「おぉ。思いがけないのがキタ」
「神山さんは?」
「やっぱりペンギンかな?でも、アザラシ可愛いし、イルカもいいよね~」
「好きなものいっぱいだね」
「……私たち恋人同士に見えるのかな?」
「ん?何か言った?」
「あ、な、何でもないよ!」
優孝が少し笑うと海沙は、耳が熱くなった。
そのあと水族館の中を一周し、イルカショーも見た後出口に行くとさっき入り口で撮った写真が出来上がっていた。通常1枚1000円らしいのだがカップルだと半額の500円らしく、どうしようっと海沙が迷っていると。
「神山さん欲しいの?」
「えっ!や、えっと~」
言葉が詰まってしまった海沙に対して優孝は、ちょっと笑って写真を購入し、それを海沙に渡した。
「いいの?」
「今日の記念ってことじゃ駄目かな?」
優孝が記念にと写真を渡してくれたことに海沙は、心から嬉しくなり写真を受け取り。
「あ、ありがとう」
ちょっと照れながら言ったのだった。
「今日は、誘ってくれて」
水族館からリムジンに乗り海沙の自宅前に到着した。海沙のお店の反対側の道。
「あ、ちょっと待ってて」
そう言って自宅に戻り小さい箱を持って戻ってきた。
「これ、私の家で販売してるケーキ。カルネさんたちと食べて」
「いいの?ありがとう。今日本当に楽しかったよ。また、遊ぼうよ」
「うん!私も同じ気持ち」
「じゃ、また学校で」
「学校で」
リムジンに戻り発進し見えなくなるまで見送った。