放課後の決め事
「夏織。いいから俺に任せてくれ」
「……分かった。優孝がそう言うならもう言わない」
チラッと華怜の方を見て自分の席に戻っていった。一回溜息を漏らしてドスンッと椅子に座る。
「華怜」
視線を上げると騒がしくして申し訳ないみたいな表情をして、優孝の目を見ている。
「今日の放課後。待ってるからよく考えてくれ」
優孝は、華怜から離れることを決定していてその意志は固い。
「分かりました。それでは、放課後。場所は、ここで」
教室を立ち去るその背中は、凛々しくもあり寂しそうにも見えた。
「な、なんだか大変だね」
夏織と華怜の修羅場に取り残されていた海沙は、苦笑いだった。
「正直ちょっと疲れた」
そして、迎えた放課後。今日、図書部の部活動が5時に終わり教室のドアを開けると、華怜の姿は、まだない。テニス部に所属していればこの時間帯は、まだ活動中だし部活終わった後に生徒会の仕事があってもおかしくない。教室内が少し暑いと思い窓を全て開ける。涼しい風が教室内を駆け巡り、気持ちいい。時計を見て時刻を確認して、適当に窓側の席に座って鞄から読みかけの本を取り出して、一人で部活動の続きをひっそり始めた。
「ゆた……か。優孝!」
名前を呼ばれていることに気がつきハッと視線を上げると、そこには華怜がいた。時計を見ると7時になっていて窓の外は、暗くなり始めていた。
「あぁ、すまん。本に集中して気がつかなかった。
「もう!集中しすぎです!何回呼んだと思ってるんですか?」
「悪かったって。それで、華怜は、決めたのか?」
「い、いきなりですね。……はい。決めました」
「そうか。分かってくれたみたいだな」
「1年我慢します!そう決めましたわ」
「どいう事か聞かせてもらおう」
華怜の考えはこうだ。優孝が別れると言った理由は、華怜が部活動と生徒会が忙しいからと言った。だったら来年の夏になれば部活も生徒会も終わりになるから、そしたらまた付き合おうといった考えだった。優孝は、自分のこと嫌いじゃない、ならまた夏に付き合えばいいと。
「なるほど。そうきたか」
「これならいいですよね?私は、優孝が好きなのです。だから、来年の夏に付き合ってください」
「1回俺のことは忘れろ。部活と勉強、生徒会に集中しろ」
「嫌です!それも込みで優孝のことを想い続けます」
引き下がらない華怜に対し。
「俺が別のやつと好きになって付き合ったりしたらどうするんだ?」
「優孝が私以外の人と?……ないですわ。ありえません」
「ったく。何言っても聞きそうにないな」
「まぁ。そうですね。しょうがないですけど、今回優孝と別れることに同意します。ですけど、忘れないでください。優孝に相応しい人は、私しかいないのですよ」