短かった喜び
少し広めの道に出て歩道を二人で歩きこのまま夏織の家まで一緒に帰ることになっていた時。
「あのさぁ。なんで今日一緒に帰るってなったの?俺に何か話とかあるの?」
「あるよ。そのために誘ったんだから」
「何だよ」
そう聞くと足を止めた夏織。そして傘越しに聞いたのが。
「優孝って水上のことどう思ってるの?」
少し前に華怜と同じようなことを聞かれたとこをまた聞かれて小さな溜息を一つ。
「この前、華怜にも同じ様な聞かれたけど別に何でもないよ。あーちゃんは初恋の人ってだけで」
「それは本当なの?」
「本当だって……まさかそれの確認とかいうなよ」
傘の柄の部分をギュッと握って。
「優孝!私は、お前の事が好きだ!」
その一言に優孝は驚く。考えてもしなかった告白に。
「待て、落ち着け」
一回深呼吸をして目を瞑って眉を歪ませて考える。
「……冗談?」
っと聞くと傘を手放して優孝に思いっきり抱きしめる。
「バカっ!ふざけるな!……冗談なわけないだろぅ」
優孝を抱きしめる力が少し強くなる。
「夏織。こんなところでよせよ」
「違うところならいいのかよ。ヘンタイかお前は」
「いや、だから……」
色々と困ってしまう優孝に夏織は抱き着いたままで訊ねた。
「私なんかじゃ駄目か?七条みたいなお嬢様じゃ駄目か?やっぱり水上みたいなやつか?それとも神山みたいな守ってやりたくなるようなやつか?答えてよ優孝」
「夏織……」
「優孝と一緒にいるとすごく落ち着くんだ。だから、優孝の彼女にさせてくれ」
降りしきる雨の中で夏織の気持ちを聞いた優孝。抱き着く夏織を少し離して顔を見ると、雨のせいか分からないが目から涙がこぼれていた。
「なんで泣いてるんだよ」
「な、泣いてなんか」
傘を拾って渡す。
「すぐに返事は出来ない。だが……悪い気はしない」
「えっ、それって」
夏織の唇を人差し指で押さえる。
「さっ帰るぞ」
歩き始めた優孝。心の中が温かい気持ちに広がって立ち止まったままこみ上げてくる嬉し感情に浸る。
その時だった。
――ブォォォォンンンンン!!!!!!!
けたたましいエンジン音を鳴らしながら夏織の背後から猛スピードで、大型トラックが突っ込んできた。
「夏織!!!」
先に気がついた優孝が急いで夏織の元へ。
「……えっ」
庇う形で優孝が夏織を抱きしめた。




