あと少しで
「っクソ!」
さっきバイクをかわした時、右足首を痛めたらしく立っているのが難しい。それを見て男は、バイクから降りて優孝に近づいて来た。この足だと走って逃げるのは無理だし、掴まえるにしても右足に力が入らない。
どうすれば。
――ブォォォォォン。
物凄いエンジンを響かせながら優孝の前にオートバイで登場したのは、ミーヤだった。
「それ以上近づいたら殺しますよ」
男は、急いでバイクに乗り発進する。
「待ちなさい!スペードのエース!」
走り去るバイクのタイヤに目がけて、素早くトランプを一直線に飛ばしたが、軌道がわずかにずれ逸れてしまった。
「あと少しだったのに!優孝様!大丈夫ですか!?」
優孝に駆け寄るミーヤ。
「ミーヤ。助かったよ。ありがとう」
――パチーン。
優孝の部屋に反響するカルネの平手打ち。優孝を襲ったストーカーを取り逃がしたミーヤに、怒ったカルネがミーヤにビンタをしたのだ。
「何故捕まえなかったんだ!」
「……つ、捕まえようとしました。だけど、逃してしまったんです。……私だって頑張ったんです」
カルネの迫力に圧倒されて、怖がってしまった小動物みたいになってしまった。
「カルネ。そんなに怒るな」
「しかし、優孝様」
右足首を痛めてしまった優孝は、足を冷やしながらベットの上で上体だけ起こして横になっている。ミーヤに手招きをしてしゃがむように指示して、頭を撫でてあげた。
「今日はありがとうミーヤ」
「……優孝様ぁ」
「とにかく、早くストーカーを捕まえないと優孝様の命が危ない」
「優孝。起きてますか?」
夜。ベットで本を読んでいると華怜が部屋にやって来た。
「華怜。どうした?」
「足は、大丈夫なのですか?」
どうやら心配で様子を見に来たらしい。
「まだ、ちょっと痛いけど冷やしとけば大丈夫だよ」
「ごめんんさい!私のせいで!巻き込んで怪我をさせて!」
頭を下げて謝る。
「これぐらい気にしなくていいよ」
頭を横にブンブンっと振って近寄り、ベットに侵入してきた。
「か、華怜?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。私のせいで」
ギュッと優孝を抱きしめる華怜。優孝の耳元で涙ぐんでいた。




