第6話 いきなりライバル?
7話目になります。
エアと若菜に注目です。
深夜がエアに話終えたとき、エアの反応はやはり深夜が予想したとうりだった。
エアは話を聞き終えたら、うんうんと唸ってからやがて納得したように頷いた。
「深夜なら、ありえる話だわ……」
「フフフッ、腹が痛いぜ」
「・・・・・・」
エアに比べ、太一はゲラゲラと腹を抱えて大爆笑している。
そして、それを見る白い目の深夜と若菜。
二人から見ると大抵笑えるような話ではないのだが。
「どこが笑えるのかしら……?」
「ホントだよなぁ?」
いささか(というか、かなり)常識からズレてる二人は一般人の太一と、一般人であるだろうエアの反応についていけないのだ。
「それよりっ! 早く行こうぜ、日が暮れちまうぞっ!」
「わかったよ、でもハンヴィーは5人しか乗れないぜ?」
急かす一夜に、冷静に指摘をする深夜。
「じゃあ、だれか屋根に乗れよなぁ~」
「アンタが乗れば?」
その言葉を待っていた一夜が軽く言うと、太一が光の速さで返した。
仮にも親友の父親であるというのに実に軽い態度だった。
もうこの人物に慣れてきたということもあるだろう。
「俺のほうが年上なのになぁ。 まぁ、イイケド」
「私が屋根に乗りましょうか?」
そう慇懃な態度で進言した傭兵門番を若菜が一蹴する。
「ダメよっ! あなたには助手席に乗ってもらうわ。 そして、深夜のお友達とやら、あなたが屋根に乗りなさい」
まるで決定事項を告げるような声音で若菜が言ったので、さすがの太一もタジタジとなる。
「なんで、俺が? アンタが上に乗れよ」
動揺をすぐに消し、剣呑な目で太一が告げる。
その目に対し、若菜が険しい瞳を向ける。
「アンタ? 誰に向かって口を利いてるのかしら、私の気配も探れなかったくせに」
「それはアンタが隠れるのがうまいんだろう。 生憎俺はコソコソやらなくても正面戦闘で十分なんでね」
後ろから奇襲するようなやつとは比べるまでもないさ、と太一が続け、若菜から殺気が迸る。
それに対抗するように新たな殺気も生まれるがそちらはすぐに消えた。
「ま、いいさ。 俺が屋根でいいよ。 深夜もそれでいいよな?」
「俺か!? お前がいいならいいけどさ……」
そう言った深夜に太一は一瞬ヒトの悪い笑みを浮かべ、ウィンクをした。
なんだ、それは?と聞き返すヒマもなく太一はそそくさとハンヴィーに向かい歩いていく。
なぜか嫌な予感がする深夜である。
「なんだか、呆気ないわね。 ホントは腰抜けなのかしら?」
みるからに見下したように若菜が言う。
本人は聞こえているだろうが、片手をひらひらと振っただけだ。
「勝手にそう思っていろ。 安い挑発には乗らないぜ」と無言で主張しているようだ。
「あれ、あの少年はいいのかね、屋根の上で? あぁ、なるほどそういうコトか……。
フッフッフ、中々頭が回るな」
一夜が面白そうに独白をしたが、その声を聞いたものは誰もいなかった。
なぜ、こうなった。 なぜ、こうなった。
深夜はハンヴィーの後部座席で何度目かの疑問を浮かべた。
先程と同じく後部座席の中央に座ってるのはいいのだが、両隣が先程と違い美女二人である。
右にいるエアは先程よりも強くこちらに密着しており、左にいる若菜は密着はもちろん、今にもひざの上に乗ってきそうである。
どちらにしろ、共通して言えるのは危ないということだ。
無論、深夜自身がである。
この両脇にいるのはかなりの美女であり、世界に比肩する人物が数えるほどしかいないだろうと思わずにはいられないほどの美形だ。
その点では深夜もその中に入るが、自分の容姿が優れていると全く思っていない深夜からすれば、
「俺みたいな男が美女二人を侍らせてる!? 世界(というか自分)が爆発するんじゃね?」
という考えになるのだ。
傍から見てるとこうも十二分以上に釣り合う男女はいないと思うわけだが。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
深夜の両脇で火花を散らすように睨みあう美女二人と、身動きの取れない深夜が無言で、しかも涙目で主張している、助けてくれと。
もちろん、前に座る二人にだ。
二人のうち一人は睨みあう双眸により、既に後ろを恐くて向けなくなったいる。
そして、もう片方は「ぼくってば何も見てないし、視線も感じないなぁ、空がキレイだなー」などというふざけたセリフがいくらでも出てきそうなしれっとした顔をしている。
どちらがどっちかは言うまでもない。
この薄情モノめがっ!深夜は心から呪った。 運転席に座るヒトと今頃屋根の上で笑いを堪えてるであろう人物に。
その当人は屋根の上で絶賛、大爆笑中だった。
さっき、ハンヴィーに乗ったときに気付いたのだが、外の音が全くと言ってもいいほどに聞こえない。
恐らく、それほど装甲が厚いのだろう。
本場がどうかは知らないがどうせあの愉快な傭兵が改造でもしたのだろう。
そんなことを先程の若菜とのやりとりの中で考え、アッサリと折れたのだ。
ここなら、気にせずに笑えるだろうと思い。
そんなことは露知らず、深夜は冷や汗を垂らしながら事態の収束を図ろうとしている。
つまり、ちゃんと話せばこの二人も仲良くなるさ!と思っている。
「あのぉ~、お二人さん。 もう少し仲良くやりましょうや?」
なるべく、さりげなさを装ったつもりだが声が震えていた。
なぜそうなったかというと、もちろん二人の剣呑な視線により、である。
「仲良く? 誰が? 誰と? あぁ、深夜となら大歓迎だわ」
「この場に仲良くやりたいヒトなど深夜しかいませんわ」
二者二様の言葉で同じことを言ってくれた。
美女二人にそんなことを言われて嬉しく無い訳でもないが。
「俺は数に入ってないのかぁ~、ざーんねん」
一夜が会話に入ってきたがすぐに元の表情に戻る。
助け舟に来たわけじゃねーのかよっ!! 深夜は心の中で叫んだ。
「そ、そんなコト言ったってさぁ~、仲間だろう。 俺たち?」
深夜はタジタジとなりながら言い切った。
「「……仲間?」」
二人揃って、まるで初めて聞いたような声音で言われた。
え、違うの?と、言った深夜まで思わず信じそうになったぐらいだ。
「そうだよっ! 少なくともこれからはそうだ!」
「……は?」
「……なんですって?」
目をまじまじと開いて驚く、エアと若菜。
「あれ? 俺たちがこれからどうするか言ったよな?」
エアに向けて確認をする。
本人が首をフルフルと横に振ったので、今後の完璧な(と深夜が信じる)計画を話してやる。
「これから、ここの傭兵を何人か雇ってからエアを追ってた黒服野郎の正体を突き止め、野望を打ち砕く!!」
「何が野望だよ」
「―――っ!!! いきなり後ろに現れるなよっ!」
深夜が語り終えた瞬間後ろのトランクから太一の声がした。
それに驚いた深夜が飛び上がり、文句を飛ばすがにべもなく太一が否定する。
「敵の目的もわからないのに野望も何もないだろ」
それに対し、深夜が開き直った声音で言う。
「そんなこたぁ、どうでもいいんだよ! こんな可愛い女の子を大勢で追い回すなんてなにかやましいことがあるからに決まってるだろ!」
「お前な……普段からそういう類の本ばっか読むからそうやって知識が偏るんだよ。 ただ単に夜の相手を頼みたかっただけじゃないか?」
当の本人がその場にいるのにこの言い様である。
深夜の言葉で女性陣二人が顔を赤くして、太一の言葉は耳に入っていなかったからまだ良かった。
が、顔を赤くした女性陣二人は全く逆の意味で赤くなっていた。
エアはもちろん恥ずかしくてだが、若菜はそれに対し憤りを感じたからである。
「か、可愛いなんて……」
「くくっ……私だって数えるくらいしか言われたことないのに」
密かに二人を観察してた一夜は若菜の言葉に反応した。
(へぇ、言われたことあるんだ? 深夜は言葉に感情を表すことは少ないのに)
「お~い、自分の世界に入ってる場合じゃないぞ? さぁさぁ、着いたぜ! ここが我等の本拠地だ!」
そう一夜が言ったが誰も聞いておらず、スルーされた。
深夜や太一は聞こえてはいたがそのあとの問答が面倒なので無視している。
「あれぇ? 聞こえてないのかなぁ~。 じゃあ、もう一度……」
「聞こえてる、聞こえてるよっ! 二回も言わんでいいわ!」
さっきと同じテンションでもう一度言おうとした一夜を深夜が気だるげに遮る。
「じゃあ、行こうかぁ。 と……」
「よし、行こう」
また、桃源郷へ~とか面倒なコトになると察した深夜が一夜の言葉を遮る。
「最後まで言わせろよなぁ」
一夜がぼやいたがそちらには目もくれず一同は歩みだす。
読んで頂きありがとうございます。
やはり、エアと若菜は衝突しましたね。
それでは、彼らの今後の活躍に乞うご期待!
それでは、また会う日まで。