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女神のために  作者: 花咲 匠
私を助けて
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第4話 新たな仲間?

5話目になります。

サブタイトル通り新たな人物が登場します。

 親父の運転するハンヴィーに揺られながらそのまま森の奥に入っていく。

 それはいいのだが、深夜たちは後部座席に詰め込まれたまま車に乗っている。助手席にはさっき深夜が昏倒させた門番傭兵が凭れており、残った三人がそのまま後ろに詰め込まれているのだが髪を下ろした深夜の両隣にいる太一とエアが問題だ。

 左にいる太一はニヤニヤとしながらこちらを横目でチラチラと見てくるだけなのでまだマシだが、右にいるエアが危ない。

 さっきから腕になにやら柔らかいモノが押し付けられており、密着状態なので逃げ場がない。

 それに加え太一は左にズレるわけでもなく、むしろ俺をぐいぐいと押してくる。

 なにかの意図があるには違いないが、腕に当たっている柔らかいモノのおかげで思考がマヒしており文句をいうことすらできないでいた。

 わざとではなくこれが役得という名の事故だと脳内で自己完結したところで、助手席に凭れていた傭兵門番が呻き声と共に目を覚ました。

 「大丈夫かぁ? 俺の息子にやられたみたいだな」

 言葉の割りに全く心配してない声音で一夜が傭兵に顔を向けながら聞いた。

 つまり、脇見運転をしながら。

 「オイっ! 前っ、前見て運転してくれっ! 頼むからっ!」

 焦りながら俺は言ったが、親父は全く聞いていない。

 「で、どうだった? 俺の息子は強かったかい?」

 前に脇見運転をしていて30m下の崖下に落ちたこともあるのに全く気にしていないところがまた恐ろしい。

 「……はい、かなり強かったです。 前もって一夜さんの子供だと知らせてくれたら、投降したのに……」

 若干涙目で語る傭兵に内心で謝りつつ、親父の信頼度の高さに驚いた。

 「ハハハっ、そしたら訓練にならないでしょーが。 少しでも強い相手と戦って、引き際を覚えることが傭兵には重要だっていったろ。 君はまだ相手の強さを推し測れてないようだからそこを勉強するよーに!」

 おどけた口調だがしっかりと説明する親父に感心したが、また前を見てないので改めて忠告する。

 「前を見ろ、前をっ! あ、危なっ! 今、サイドミラーが木に擦ったからっ!説明してる暇があるならその前にちゃんと運転しろー!!!!」

 俺は木に擦れて凹んだサイドミラーを見ながら半ば半狂乱になりながら怒鳴った。

 「お前の親父さん、運転ヘタクソだな」

 深夜の顔をまじまじと見ながら太一が俺に同意を求めてきた。

 「……なんで、俺の顔をみながら言うんだ?」

 「特に深い意味はないさ」

 太一の顔をみれば、お前も同じようなモノだぞ、と言いたげだ。

 そして、俺は遅まきながら太一の言葉に戦慄した。

 「や、ヤバイぞ太一っ! 今の禁句なの忘れてた!」

 「そ、そうですよ、息子さん! 一夜さんの運転を下手って言うと殺人的なコトになるんですから!」

 焦った様子で語る俺と傭兵を尻目に一夜が口を開いた。

 「ほう、俺の快適ドライブをご所望か。 ならば期待に応えて一肌脱ごうじゃないかねっ! 諸君、しっかりシートベルトを締めたまえっ!」

 興奮した様子で熱々と語る親父を見て、説得を諦めた俺。

 「こうなったら、このヒト止まらないんだよなぁ」

 と、傭兵も諦めムードに入った。

 「エア、しっかり俺に捕まっとけよ。 冗談抜きでかなりヤバイから、こうなったときのこのヒトの運転」

 前半はエアと真剣な表情でしっかり目を合わせて、後半は諦めムード全開で親父を眺めながら言った。

 エアも言葉に対し最初は頬を染めていたが、俺が真剣な表情を崩さないので真面目な顔で頷いた。

 「ええ、わかったわ。 深夜がそこまで言うならホントにツライのでしょうし」

 真摯な態度で頷いてくれるエアに思わず顔が綻びかけたが、これから起こるであろう最悪の事態を想像してしまい渋面になった。

 「俺には何の忠告のなしか?」

 そう太一が聞いてきたが冷たく言い放った。

 「お前が招いた事態だ。 自業自得だろ」

 無言で押し黙った太一には何も言わず、自分はひたすら瞑想するようにした。

 酔わないためと右腕にある柔らかいモノで現実を逃避するために。



 30分ほど経ってからようやくハンヴィーが止まった。

 場所は洞窟の前で辺りからは死角となっており、見つかる危険がないというわけだ。

 ただ、見つかる危険がないというのも静かにしていればという前提なので今の状況では見つかる危険が大いにあるが、誰もそんなことは気にしていない。

 いや、気にするほどの余裕がないといったほうが確かだろう。

 アクセル全開のエンジンフルスロットルで山道を走ったハンヴィーに乗っていた運転手以外の4人がぐったりしたようすで蒼い顔をしながらうなだれており、その中の女の子の横にのみ男が冷や汗を垂らしながら介抱している。

 うなだれている全員が一人の例外もなく、冷や汗を垂らしながら女の子を介抱している男の仕業なのは言うまでもない。

 「うぅ、短慮だった30分前の俺をブン殴りたいぜ……」

 疲れが滲み出る声音でしみじみと太一が後悔を始めた。

 呻きながら、呪詛を吐いている姿はどこか悲しげに見える。

 まぁ、コイツの場合は自業自得なので特に触れない。

 俺も親父の運転する車に乗ることが以外とあるのでそこまで重症ではないが、倦怠感は隠せない。

 一番悲壮な声を上げてるのは門番傭兵で、恐らく先輩に当たる俺の親父いちやに面と向かって文句を言えず自分の鍛錬の未熟さを呪っていた。

 「一夜さんの運転ぐらいで、根を上げるなんて傭兵失格だ……」

 いや、あの運転を耐えられる人物は俺の知る限り3人しかいないから心配するな、と心の中で思っておく。

 口に出すともっと悲壮な顔をするのは目に見えてるのでそっとしておく。

 仰向けになって深呼吸を繰り返す太一がいきなり身を起こした。

 「今、誰かの気配がしたっ!!」

 さっきまでのダウンぶりが嘘のように飛び起きて、銃を構える。

 「オイオイ、何も感じないぜぇ?」

 一夜がいかにも軽薄そうに言い、太一を宥めようと言葉を続けようとしたが口を閉じた。

 「前言撤回だ。 深夜、来るぞ」

 真剣さが滲む声音でそう言い、一夜は腰の剣を抜き放つ。


読んでいただきありがとうございます。

それでは次の彼らの活躍に乞うご期待!


では、また会う日まで。

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