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女神のために  作者: 花咲 匠
私を助けて
3/31

第1話 二人の出会い その2

この話は、元々一つだった第1話めを二つに分けたものです。

なので、タイトルがおかしいですが、そのまま読んでくださいませ。

どうかお願いします。

 太一のおかげで学校を脱出した二人は深夜の家に向かって走っていた。

 外にいた男の仲間の数人を殴り飛ばし、警察を呼ぼうとした学校の事務員を後ろから気付かれないように近づいて首筋に全力で手刀をいれ昏倒させた。

 ワイシャツの美少女と白シャツに破れたブレザーの髪の長い美少年という人目を引く二人だったが、深夜が意識してヒトが少ない道を選んだので大した騒ぎにはならずに済んだ。

 というのも、二人に不用意に近づこうものなら深夜の殺気にまみれた視線を浴びさせられ、それに気付かないようなバカなら深夜の拳が飛んでくるので目撃者はかなり少ない。


 そんなことがあったのだが、深夜は自分の家の前に立ち、溜め息をついた。

 深夜の家は普通の家を一回り、二回りほど大きくしたぐらいの二階建てであり、周りを高さ2mほどのコンクリートの塀で囲われている。

 駐車スペースにはアメリカ軍が汎用輸送車両として正式採用しているハンヴィーが堂々と停まっており、とても一般人の家とは思えない。

 高校から歩いて1時間ほどなのですぐに見つかる恐れは少ないと考え、自分の家に連れてきたがその考えを少し後悔していた。


 深夜は父と二人暮らしなのだが、その父がいささか特殊な事情を抱えている。

 普段、家にいることが少ないので今はいないと思うがもし家にあの親父が待っていると思うとさすがの深夜でもゾッとしない。

 というのも深夜の親父は傭兵をしている。 

 イマドキそんな仕事あるのか?と思うヤツもいると思うが意外と需要はある。

ただ、表に出てこないのはもちろんのこと、それにフリーの傭兵をやるよりどっかの国で軍隊に入ったほうが待遇もいいし給料もいいハズ。

 ハズというのも深夜の親父は腕が相当に立つため、軍隊に入るよりそのほうが稼げるのである。

 戦いがあるかないかで収入はピンからキリまでだが多いときになると月収で1億も稼ぐときもある(どこで仕事をしてたかは何も教えてくれなかったが)悪いときは何ヶ月も収入が入らなかったりするが。

 それに傭兵とは思えないほど優しそうな顔立ちをしており、深夜の美貌はこの父親譲りだと言ってもいい。だけど、自分より性格もかなり上だしっ!

 まぁ、戦場だと思わず後ずさりしたくなるほどだが……。

 その他にも護身術をしこたま仕込まれたり、銃や兵器の知識や使い方まで伝授している。 そのため深夜は既に特殊部隊を凌ぐほどの身体能力と技術を持っている。

 

 そんなことを考えつつ俺は家のドアを開けた。

 玄関にはこじんまりとした靴箱とその上にグロック(拳銃)が置かれている。

 普段、ヒトを家にあげないし配達されるような荷物もないので特に気にせず護身用の武器を家に置いてある。

 唯一、家に来たことがあるのが太一でしょっちゅう頻繁に遊びに来ているがそういうことは全く気にしないタチなので気を煩わせなくて済む。

 というか、深夜に護身術などの教えを請うほどであり深夜は修練のつもりでそれに手伝っている。

 そのため、太一も中々の腕で深夜も本気を出さなければ勝てないほどである。


 「適当にあがってくれ。 茶でも出すから少し待ってろ」


 後ろでボンヤリとしていたエアに声を掛け、リビングに行くよう促した。

 俺は二階にある自分の部屋から親父から譲り受けた日本刀(真剣)とサブマシンガンのP90を引っ張り出した。 ついでに予備弾倉も10個ほど。

 エアがベレッタを持っていたことを思い出し、その予備弾倉も下に持っていくことにした。

 リビングに下りたらエアは静かに椅子に座っており目をキラキラさせて辺りを見回していた。


 「どうした? なんか珍しいモンでもあったか?」


 何気なく聞いたが完璧に無視された。 何気なく聞いたのでショックはないが、どうやら俺の声が耳まで届いてないようだ。

 仕方なく、手っ取り早く湯を沸かし紅茶の用意をした。

 エアの前に紅茶と山盛りのクッキーの皿を置き、その前に自分の紅茶を置きクッキーを一つ口に入れてから向かいの椅子に座った。


 「冷めないうちにどうぞ、お姫様~」


 からかいの口調で言ったらやっと俺の言葉に反応した。


 「あ、ありがとう。 いただくわ」


 やたらと素直に言われたので少し驚いた。 見た目からして傲慢な性格をしてるんじゃないかと予想していたのだ。 

 今、思い出したがそういえば助けた時もけっこう素直な気がした。

 なにから説明しようか考えていると相手の方から話しかけてきた。


 「ごめんなさい……その、迷惑をかけてしまって」


 「……迷惑……? この状態がか?」


 俺は最初、何を言われたのかわからなかったがたっぷり5秒ほど固まってから、エアは何を言ってるんだこのヒトはっ!?とでも言いたげな視線を俺に送ってきたのでやっと得心がいった。


 「あぁ、なるほど……。 う~ん……まぁ、確かに一般人からしたら迷惑なんだろうな、多分」


 そこまで言った時にエアが傷ついたような顔をしたので慌てて訂正した。


 「違うぞっ! 俺は全く迷惑じゃないからな、誤解するな。 一般人からしたらって言ったんだぞ、俺は」


 まだ、キョトンとした顔をしてるので皆まで言った。


 「エアって意外と鈍いんだな。 違うぞ、いい意味でっ!」


 途中で睨まれたのでまたもや慌てて訂正した。


 「あのな~、拳銃を持った相手に素手で勝つようなヤツが一般人な訳ないだろ。 白状するが俺の親父は傭兵で、おれはその技術を受け継いでるってだけだから。 戦場にもそんなに行ったことないし」


 一息入れてから俺は言い切った。 こんなに清々しい気持ちになれたのは自分の人生からみて片手で数えられるほどしかない。


 「だから、俺に迷惑を掛けたなんて思わなくていいぞ。 むしろ、久しぶりにヒトに頼られて嬉しかったくらいだ」


 しかも、こんな美少女に助けてなんていわれたら断るほうがおかしい。

 このセリフはあえて言わずに心の中だけで言う。


 「び、美少女なんて……!」


 顔を朱に染めたエアが恥ずかしそうに深夜を見つめている。


 「しまった!! 声に出してたかっ、なんたる不覚……」


 「……そこまで、後悔しなくてもいいんじゃない?」


 やや拗ねたように言われ、慌てて訂正する。 さっきからやたらと訂正してばかりのような気もするが……。


 「後悔じゃないぞ! だって、ほらあれだろ。 会ってばかりの女の子に美少女なんて言ってみろ。 俺が手の早い男みたいじゃないか。 そんな風に思われたら嫌だし……」


 かなりどもりながらだったので、ちゃんと伝わったかどうかはわからないが一応は頷いてくれた。


 「まぁ、キレイなのは変わらないから別にいいかもな……」


 思わず、口に出してしまったが運よくエアは聞いてなかった。 

 というか、なにか思いつめたような顔をしている。


 「……どうした? そんな、まるでこれから世界が終わるような顔して」


 エアは苦笑して、疲れたような顔をした。


 「私、そんな顔してるの? 参ったなぁ~。 じゃあ私も白状するけど実は私って本当は……」


 この次の言葉は俺におもわぬ爆弾を落としていった。 そして、エアとはこの場かぎりの縁では終わらないだろうと確信した。


 「この世界の住人じゃないの」


 実に静かに言われたから実感がまるで湧かなかった。 途中までは。

 

 「へぇ、そうなんだ。 …………って、ええぇぇっっ!!! この世界の住人じゃないって! そりゃ、またどういうことさっ!?」


 椅子の上で仰け反りながらオウム返しに聞いた。


 「フフッ、深夜のそんな焦った顔初めて見たわ」


 妖艶な流し目などくれ、気恥ずかしさで固まりかけたがさすがに重要な用件なので我を取り戻した。


 「いやいや、フフッじゃなくてさ……それに知り合って間もないんだから当然でしょ。 そんなことよりも、ちゃんとした説明があるんだろうな?」


 「ごめんなさい。 つい、からかってしまいたくなって」


 つい、じゃないだろうっ!?と思ったが口には出さずに先を促した。


 「そう、それでね。 私、1ヶ月くらい前にこの世界に来たんだけどそしたら謎の黒服男たちに捕まって、昨日まで監禁状態だったの」


 さらりとスゴイことを言われ理解に苦しんだがそれでも一応は質問をしてみた。


 「監禁されていたって……。 まぁ、そんなことよりこの世界じゃないってことは、元はどんな世界にいたの?」


 少し、考えた素振りをしてからエアは可愛らしく小首を傾げた。


 「よく、覚えてないのよね。 どうやってこっちの世界に来たのかもわからないし……。 あ!でも、こんなことならできるわよ」


 そう言い、椅子から立ち上がって何かを唱え始めた。


 「――我の行く道を照らし出せ! イルミネーション!」


 呪文みたいのを唱え終わるとエアの目の前に光輝く光球が現れた。

 

 「うわぁ、こりゃこの世界の住人じゃないな……」


 感嘆と驚きが入り混じったような声音で俺は独白した。


 「この世界でいうなら魔法ってのが一番近いと思うな、俺は」


 エアにはそう言ったがまだ自分の感動が冷めよらない。


 「魔法……たしかにそうね。 元の世界でもそう聞いてたような気がするし」


 そう言ったので俺は気になっていたことを尋ねた。


 「魔法がつかえるなら、攻撃系の魔法も使えるよな? 逃げてるときになんでそれを使わなかったの?」


 軽く聞いたがエアからは恐ろしい答えが返ってきた。


 「ん~? だって私が攻撃魔法なんか使ったらこの町一つ吹き飛ぶもの」


 しれっとそう言われ、俺は固まった。

 もしかして、俺とんでもない娘を助けちゃった!? 今更だがもう少し考えてから行動すれば良かった。

 いや、助けたことに全く異論はないが。


 「そ、そうか。 エアって意外と強かったんだな。 はははっ」


 「そんなことないよぉ~、深夜だってスゴク強いじゃない」


 多分、相手は本気で言ってくれてるんだろうが町一つを簡単に吹き飛ばすと聞いた後では自分が強いとは全く思わないので、ただ微笑むだけにした。


 「魔法かぁ、けっこう便利そうだな~」


 俺は頭の中でいろいろ考えながら言った。 まぁ、内容は魔法があったらガッコに走っていかなくてもいいかななどとどうでもいいことだったが。


 「……じゃあ、教えてあげようか?」


 途端に輝いたような顔になったのをハッキリと自覚したがそこで疑問が生じた。


 「魔法って、そんな簡単に教えられるのか?」


 やや戸惑ったような顔をしてからエアは頷いた。


 「う、うん。 でも元々の資質がなきゃ初歩すら学べないわよ」


 「てことは、才能さえあれば誰でも使えるのか。 老若男女問わず?」


 「ええ、そうよ。 それがどうかしたの?」


 キョトンとした顔で可愛らしく小首を傾げたエアに自分の予想(というか推理)を話してやる。


 「もしかしたらだけどさ。 エアがあのスーツ男たちに追われていたのはそれが原因じゃないのかな。 ヤツらがなんらかの手段でこの世界にエアみたいな存在……そうだな、異邦人としよう……がいるのを見つけた。 そして、それが利用できないかと考えた」


 目を白黒させていたエアが訳もわからない様子で聞いてきた。


 「えぇーと、つまり?」


 「つまり、ヤツらはエアが持ってる魔法みたいな力が欲しいんだよ。 武器も持たずにかなりの戦力を発揮できるからな。 大方、テロリストか……いや、違うな国家かな。 さっきのヤツらは」


 もっともらしい(と深夜が思う)推理をエアに話したが顔を見る限り半分も伝わってないらしい。


 「……ふぅん。 じゃあ、私が狙われる理由はわかったわ。 ……だいたいは。 でも、それをいうなら私だけじゃなくてその前にも異邦人がいるってことじゃない? 私がこの世界に来たのは1ヶ月前でしかないんだから、その期間であれだけのヒトを動かせるとは思わないけど?」


 エアの核心をついた言葉に俺は新たな案が浮かび上がった。


 「ぶしゃしゃしゃ、いいことを考え付いたぜ」


 妙案が出たときに自然とでる奇妙な笑い声と共に考えを言った。


 「そういうことなら、前からいる異邦人たちに協力してもらおうじゃないかっ!」


 エアの驚きと呆れが入り混じったような視線を浴びながら深夜は椅子から勢い良く立ち上がった。


 このときの選択が後の彼らの人生を大きく変えるのだが、今の二人には知る由もない。


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