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かくれんぼ  作者: Maurice
2/7

静寂:第2話

デパートと高校は反対のため雄太は学校を出て一度家に帰った。

携帯の時計を見ると5時前。


「ただいま〜」


カバンをドサッと玄関に置いた。と言っても家には誰もいない。

雄太の家は父、母、妹の典型的な4人家族。両親は共働きで妹の詩織は中学生。

地元では名が知れたブラスバンド部のため毎日帰りは7時を過ぎる。

父は大手出版代理店の部長。母はスーパーでパートをしている。

大体7時過ぎに皆帰宅するため、学校を終えて帰宅した5時には大抵人はいない。

清掃の仕事は6時から。


5年前に建てた家は雄太がヨーロッパ風のデザインが好きだったため洋風調になっている。

鉄筋造りの二階立て。屋根の部分は三角。

二階のベランダはバーベキューができるほと広々としている。

そして至るところに花が飾られている。一階にはウッドデッキがあり、木のテーブル、椅子が置いてある。カバンを置き奥の台所に向かいジュースをごくり。


「ふ〜」


リビングに行き朝刊を広げる。ろくなのねえな。

見たい番組がなかったため、すぐに2階に上がり私服に着替えバイトの準備をする。


「さあてと」


時計を見ると5時20分。一階に降りドアにカギをかける。

芝生の庭を歩き自転車に乗る。バイト先のデパートまでは20分ほど。


「よっしゃ今日も頑張るか。」


ゆっくり自転車を漕いでいると涼しい風が体を突き抜ける。

周りを見渡せばビルが多くなり人通りも増えてきた。

雄太がアルバイトをしているデパートに近づいていることを伺わせる。

デパートの裏にある従業員専用の駐車・駐輪場に着き、携帯を見ると5時50分。

デパートは5階まであり従業員休憩室は3階にある。


「お疲れさまです!」


「お早う。」


そこには今日のパートナーの小出がいた。6時からの清掃は二人でやる。

小出は30歳の女性。大学卒業、就職できずアルバイトを転々としてここにきた。

所謂フリーターだ。体格はいくらか細めで身長は160中盤で髪はショート。

狐のような細い目をしているためキツさんと言われている。

見た感じはイマイチぱっとしない。


「キツさんとやるの多いですね。」笑いながらキツさんが言った。


「なに?嫌なの?」


「いやぁキツさんは年齢が近いんで楽しいですよ」


「またぁ」キツさんは嬉しそうな顔をした。


そこへ12時から6時までのシフトの人達が来た。


「お疲れさまです。」


「お疲れ〜」おばちゃん達は疲労の顔を浮かべている。


「よし行きましょう。」キツが言った。

「行きましょうか。」


雄太達の仕事は先ず5階から1階まで男女のトイレを掃除していく。

商品が並んでいる床はお客さんがいまだいるため先にトイレ掃除を終わらせる。

それを終えたあと5階から順に床を清掃していく。

休憩室の隣にある清掃用具が入ったカートを運び、清掃員用のエレベーターで5階に向かった。

チーン。5階です。

カートをトイレの脇に置きトイレ掃除の準備をする。


「さて頑張りますか」


「はい」雄太は明るく頷いた。


デパートは8時に閉まるため8時までトイレ掃除を終らせ8時から床の清掃に入る。

雄太はこのバイトを気に入っていた。時給は800円でまずまず。

何より人間関係が気楽で心地よかったからだ。5階を終え4階へ。順々に清掃していく。

時間が経つにつれ客足も少なくなってきた。時計を見ると8時前。

雄太は一階の男子トイレの清掃を終えカートに片付けていた。

キツがモップを持ちながら来た。


「はぁ〜終わったよ。」

「お疲れです。」


雄太は続けた。「次は5階の床清掃ですね。」


その時閉店の知らせを伝える音楽が流れてきた。キツと雄太はエレベーターに乗る。

チーン。5階です。最初に異変に気付いたのはキツだった。


「あれ?おかしいわねぇ。」


雄太が見渡すと電気がついておらず真っ暗だった。


「え?真っ暗ですよ。」雄太は不思議そうに言った。


いつもなら閉店した後も電気がついてるはずなのたが...

そのうえ不気味なほど静まり帰っている。キツが静寂を切り裂くように叫んだ。


「すいませ〜ん。清掃入るんで電気つけてもらえますか〜?」


応答はない。歩き回っても誰もいない。


「電気消して帰ったんじゃないですか?」真顔で雄太が言った。


「そんなわけないでしょ。私達が清掃するの分かってるんだから。」


キツは考えながら「う〜ん。まず管理人とこ行きましょう。

管理人室へ行けば電気つけてもらえるから。」


「そうですね。じゃあ3階行きますか。」


管理人室は3階の休憩室の近くにある。チーン。3階です。


「え?」キツがポカーンとなった。真っ暗...


「今日は清掃いらなかったんじゃないですか?」


キツは聞く耳を持たないで管理人室へ向かっていった。

雄太は休憩室へ行きおばちゃん達に事情を話そうとした。扉を開けた。

ここも真っ暗だった...


「いつもならお茶を飲みながら雑談してるのに...」徐々に雄太は不安になっていく。


とりあえず管理人室へ行ってみた。


「キツさんどうです?」


「誰も居ないわ。」


「どうします?誰も居ないんで帰りますか」


「そうねぇー」


深く考え込んだキツは口を開いた。「今日は清掃できないから帰りましょう」


キツは気味悪さを感じていた。


「そうしますか。」変だなと思いつつ内心は早く帰れると思い嬉しかった。


カートを片付け休憩室へ戻り電気をつけキツと雄太は着替えた。


「今日は清掃必要なかったね」


「でも管理人さんは特に何も言ってませんでしたよね?」


「きっと言い忘れたのよ。」


雄太は深くは考えなかった。エレベーターに乗り一階へ向かう。チーン。一階です。案の定真っ暗だった。駐輪場に向かおうとした時正面の入口に張り紙が張ってあるのに気付いた。何だ?二人は見に行った。張り紙にはこう書いてあった。



かくれんぼ 18時30開始



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