序章
「早坂!早坂!!」
なんだ?誰かが自分を呼んでる気がする。
「おい起きろって。」
かすかに声が聞こえてくる。
「雄太!」
雄太?俺の事か?意識がはっきりしてきた雄太は目を開けた。
「早坂、授業中だぞ。」
目の前には見慣れた先生が立っていた。
「おい雄太、お前いびきかいてたぞ。」前の席の親友の智樹が笑いながら話しかけてきた。
「ああ悪い悪い。最近寝不足でね。」雄太は目をこすりながら言った。
「しかし、授業つまんねえな。」
そんなに勉強が嫌なら高校に進学するなよと内心、雄太は思った。
「何か面白いことね〜かな〜」智樹は続けた。
「世の中そんなもんだって」雄太は冷静に言った。
人間は生まれ、義務教育を終え、働いて死ぬ。人間なんてあっけないものだ。法律では人は生まれながらにして平等だと言う。しかし,現実は生まれた環境による差が激しい。金持ちの家に生まれた子供は何も問題がない限りは不自由ない生活を死ぬまで送れる。
一方、中流家庭以下のいわゆる貧しい家に生まれた子供は何かと不便な生活を強いられる。
金持ちは一流学校へ、貧乏人は二流三流の学校へ。
生まれたときから人生のレールは敷かれているも同然だ。
雄太は日頃から生まれながらにして平等と言う言葉を嫌っていた。
平等?どこが?馬鹿馬鹿しい。
世の中には生まれたときから絶望的な毎日を送る人が何千、何万人もいる。
学校へ行きたくても行けない人が沢山いる。それが日本はどうだ?
高い金払って高校へ進学しても事業中はみなせっせと携帯に精をだしている。
「智樹、智樹。」智樹が振り向いた。
自分でも後で気づいたが雄太は偉そうに言った。
「世の中にはな学校で学びたくても学ぶことが出来ない子供が大勢いるんだよ。
つまんねえとか言うなよ。」
智樹が笑いながら言った。「居眠りしてたお前が偉そうに言うなよ。」
確かに言ってることとやってることが違うな。
雄太は自分の矛盾に気づき、恥ずかしくなった。
そうこうしてるうちにチャイムがなった。
キーンコーンカーンコーン
「よう!」親友の一人の玲が声をかけてきた。
「今日はどうする?」
「悪りい。俺これからコンビにのバイトなんだわ。」智樹が言った。
「しゃあねえな。」
「雄太は?」
「俺もバイト。ほらデパートの清掃。」
「清掃?大変だな頑張れよ。じゃあ俺は家でゲームでもするわ。」
玲は少しさびしげに言った。
「じゃあまた明日な」
「じゃあな」智樹が返事をした。
「さあてコンビニ行かないと。じゃまた明日。」
「おう」雄太は智樹に別れを告げ。バイト先へ向かった。
今日もいつもと変わらない日だと思いながら・・・