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マッチョorバトルあり恋愛系

逆転犯罪人~とほほ、恋にゃあ敵わない~

※この作品はほぼセリフのみで構成されています。苦手な方はご注意ください。



~某月某日、夕刻。貴族屋敷内~



「さて、今日はどのようにして殺そうか。」

「  。」

「風の刃で頸動脈を……?

 少し派手だな。いつものように、地火風水のどれでも使って呼吸を止めるのではダメなのか。

 個人的には、体内の水分を振動で沸騰させるとかいうのも好きだぞ。」

「  。」

「ぱふぉーまんす?

 何か、目立たなくてはならない理由があるのか?」

「  。」

「あぁ、いや。説明はいい。

 お前にどんな考えがあろうと、俺はただそれを受け入れるだけだ。」

「  。」

「謝るなよ。お前は俺。俺はお前だろう。」

「  。」

「あぁ。それでこそだ。」






~三週間後、深夜。某王国城内~



「お前が黒の巫女か。」

「っな!誰!?どこ!?」

「暗殺者だ。依頼によりお前を始末に来た。」

「暗さ……っひぃ!だ、誰かぁ!!」

「無駄だ。この寝室からの声は、全て俺の風魔法が押しとどめる。

 まぁ、そう脅えるな。

 もしも、お前が俺の質問に答えられるようなら、見逃してやってもいい。」

「たすっ…………へ?み、見逃す?」

「そうだ。

 実は、生まれた時から俺の中にはもう一人別の俺がいてな。」

「……っえ。」

「あぁ、頭のおかしい人間だと思うのならそれでも構わないから聞くだけ聞け。

 お前の話しを耳に入れた俺の中の俺が興味を持ったんだ。

 異世界召喚なんてベタなシチュエーションなら、黒の巫女も高確率でいえろーもんきー……などと訳の分からないことを言い出してな。」

「…………えっ?」

「そして、質問に完璧に答えられる人間であるのならば、どうか助けてやってくれと乞われた。

 いつも一方的に知識を与えて貰うばかりだったが、アレから初めて頼みごとをされたのだ。

 聞いてやらぬわけにもいくまい?」

「……あの。」

「何にせよ、答えておいた方が利口だぞ。

 例え今ここでお前が俺を退けたとして、他の者に依頼が流れるだけでそう意味もないからな。」

「っそんな!?」

「さあ、状況を理解できたのなら本題だ。

 お前の祖国がニホンという名であるのなら、その国歌があるはずだ。

 歌詞を諳んじてみろ。」

「こ…………はい?」

「その歌を知らぬ者は中の俺にとっては遠すぎて、俺に迷惑をかけてまで助けたい人種ではないらしい。

 そうなれば、後はいつも通り依頼を遂行するだけだ。」

「っひぃ!わかっ、分かったから指を向けてこないで!

 きっきみっがっ、ごっ、ごほっ!」

「今のが答えか?」

「待っ……!かはっ、こっ、れは、咽ただけでっ、げほっ。」

「だったら、早く呼吸を整えろ。次は無いぞ。」

「っは、はいぃぃ!」



~二分経過~



「命拾いしたな。では、次の質問だ。

 俺と来るか、それともここに残るか選べ。」

「……は?」

「俺と来るなら、まずは健康で文化的な最低限の生活とやらを保障してやろう。

 いずれお前がキンロウの義務を果たせるようになれば、以後は関わることもない。

 ここに残って国家の傀儡となり、暗殺者に狙われる日々を送りたいのなら、それでもいい。

 元々、俺には何の関係も無い話であるし、わざわざ面倒事を抱え込む必要はないからな。」

「う、嘘だっ。信じられない。

 だって、神官様だって、王様だってみんな優しくしてくれて……。」

「知るか。俺自身は、お前に何の感慨も抱いていない。

 いいから、さっさと決めろ。」

「…………う。うぅぅ。」






~半月後、真昼。某帝国内中規模都市~



「この国なら黒髪もそう珍しいものではない。

 両親を亡くし、帝都から越してきたとでも言えばそう怪しまれもしないだろう。」

「あ、はい。」

「以後も兄妹で通す。

 余計な手間をかけさせるなよ、常に距離感には気をつけていろ。」

「えっ。ということは、あの、まさか、これから一緒に住ん……だり……?」

「  。」

「中の俺、ちょっと黙っててくれ。

 そうだ。必然的にそうなるだろう。

 別に一人で暮らす自信があるというなら、俺はここで別れようが一向に構わない。」

「む、無理です!ごめんなさい、見捨てないで!」

「  。」

「……はぁ。

 すでにいくつかの住居に目星をつけている。

 案内するから、後はお前の好みで選ぶと良い。」

「っは……え、あ、はい。分かりました。

 あのっ、ありがとうございます。」

「礼は俺じゃなく中の俺に言え。

 俺はこいつの願いを叶えただけにすぎない。」

「えと、はい。あの、中の方、ありがとうございます。」

「  。」

「…………ったく。

 ん、何だ?」

「  。」

「はは、そういうのは言わない約束ってヤツなんだろ。」

「あっ、笑った。」

「はぁ?」

「い、いえ。何でもないです。

 ………………でも、意外と……うん。」

「  。」

「…………何なんだ。」






~三ヶ月後、日暮前。中規模都市大通り~



「ねぇ、兄さん。」

「……何だ。」

「えっと、ね。手、つないで。」

「なぜ。」

「いいでしょ、ちょっとだけ。」

「だから、理由を言え。」

「……兄さんは逢魔時おうまがどきって知ってる?」

「  。」

「中の俺から聞いたことはある。」

「そっか。でね、もうちょっとで逢魔時なの。」

「それが?」

「怖いから、つないでて。」

「意味が分からん。」

「お願い。」

「…………。」

「  。」

「………………お願い。」

「  。」

「……仕方ない。」

「  。」

「っありがとう。」

「…………あぁ。

 あと、中の俺ちょっと黙れ。」

「  。」





~一年後、早朝。兄妹(偽)宅内~



「……おい。」

「やだ!待って!待ってよ!!

 殺しでも何でも覚えるから!だから、置いていかないで!」

「……いい加減、兄離れしろ。」

「兄なんかじゃない!わた、私、貴方のこと……っ!!」

「手を離せ。

 お前は、単に雛鳥が刷り込みを受けただけなのを勘違いしているんだ。」

「違う!そんなこと無い!」

「今だけだ。すぐに忘れる。」

「止めてよ!そんなこと無いったら!

 好き、好きなの!!信じてよぉぉ!」

「  。」

「…………っち。俺がそう言うなら仕方ない。

 では、三年だ。」

「え?」

「生きていれば、三年後に戻って来てやる。

 そこでまだお前の気持ちが変わっていないようなら、その時は俺もまぁ真剣に考えてやらんでもない。」

「本当!?死んだふりして帰って来ないなんて卑怯なことしない!?」

「………………あぁ。」

「  。」

「うるさい、俺。」

「約束!絶対絶対、約束よ!後になって忘れたなんて言わせない!」

「しつこいな。」

「そうだ!!今すぐ内容を文書に記しましょう!」

「は?」

「  。」

「勿論、血判必須よ!

 二枚作るから、一枚肌身離さず持ってて!

 しっかり規定に合わせて法的にも有効になるようにするわ!」

「  。」

「いや、そんな方向に逞しく育てた覚えはない。」

「そうと決まれば、とりあえずザッと内容書いてみるから、そっちは血判の用意しててね!」

「え、あぁ。」

「  。」

「…………どうしてこうなった?」



~十分経過~



「これで文句ないだろう、じゃあな。」

「あっ。」

「何だ。」

「あ、あの、待ってるから!ずっとずっと待ってるから!

 だから……えっと…………い、行ってらっしゃい。」

「  。」

「…………あぁ。行ってくる。」






~十年後、日没直後。帝国首都某所~



「と、いうわけでぇ。

 三年後、無事に帰って来たお父さんは、まぁ色々あってお母さんと結婚してくれたってわけ。」

「そーなんだー。」

「ねーねー。でも、それホントにおとうさーん?

 なんだか、ちがうひとみたぁい。」

「ふふ。お父さんも、若かったからねぇ。

 無駄にクールぶっちゃって、今考えるとおかしいったら。」

「くぅる?」

「おとうさん、かわった。おかあさん、がんばった?」

「そうよぉ、とーっても頑張ったの。」

「おーい、今帰ったぞー。」

「具体的に言うと、お父さんが帰ってきたその日の夜に、不意打ちぎみに口移しで無理やり睡眠薬を飲ませて、まぁお父さんにはあまり効果がないことは分かっていたから、すぐに私の髪に魔力を通して作った封魔のロープで全身縛りあげて、新たに作っておいた地下室に監禁し、朝から晩まで塗るタイプの媚薬を使って精根尽き果てるまで……。」

「って、こらああああああああああああ!

 年端もいかん子どもの前でなんつーことを口走っとんじゃこのアマぁあああ!!」

「あら、お父さん。お帰りなさい。」

「おかえりなさーい!」

「さーい!」

「おう、ただい……じゃねぇよ!

 こらテメェ、人が留守の間にガキ相手に一体何を話してやがった!!」

「もー。ちょっとした冗談じゃない。

 お父さんたら本気にしちゃって、やぁねー。」

「やぁねー。」

「ねーっ。」

「  。」

「じゃかあしぃ!んなもんが冗談になるか!

 ガキゃあ覚えた言葉ぁどこでも使いたがるだろうが!

 外で口走られてみろ、即退国命令くらっちまうわ!!」

「きゃあー、怖い怖い。

 怖いからー、夕飯にしましょー。」

「ゆーはーん!」

「ごはーん!」

「ぬがあああああああ!!」

「  。」

「あ!?

 うっせぇ、冷静に感想述べてんじゃねぇぞ中の俺!」

「  。」

「え。いや、そうじゃねぇけどもよ。」

「  。」

「分かった分かった、俺が悪かったって。」

「あー、ほらほら。

 お父さんもそうやって中の人とばかり話してないで、早く座って。」

「あん?」

「…………じゃないと私、また何するか分からなくなっちゃいますよ。ねぇ?

 三年後に戻るとか言っておきながら、結局、四年目突入前日にまでならないと帰って来なかったお父さん?」

「アッハイ。ゴメンナサイ。」

「ねー、おかーさーん。これどこにおくー?」

「おてつだい!おてつだい!」

「っあ、はぁーい。待ってぇー。」




「………………なぁ……俺、どこで間違っちまったんだと思う?」

「  。」

「……身も蓋もねぇよ、バカ。」

「お父さん、まだー?」

「ハイ、タダイマー!!」




 逆転犯罪人~とほほ、恋にゃあ敵わない~ 完。



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― 新着の感想 ―
[一言] 中の人が気になります。激しく。
2014/03/01 09:27 かえるさん
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