72番はメイドの番号
アリスは俺と両親が同じ。父親がクリス、母親がシェリー。
だが、血は繋がっていない。魂は繋がっているけど。
妖精族エルフで精神系の精霊魔法が得意。
五行の魔術は全て使えるけど並み程度。
それでも全てを並みで使えるってすごいことなんだけどね。
そんなアリスが刺客の女に術をかけた。
俺とアモンはアリスに同調し女の魂を尋問する。
女の名前は72番。人間ではなかった。
申し訳程度の自意識のみの封印された魂。深い薬の知識。家事全般の知識。一通りの行儀作法。そして絶対的な忠誠心。
心はある程度の自律行動が出来るようにだけ似制限されており、薬士家族の魂を加工してつめこんである。
幸せそうな親子3人の旅の生活、訪れた悲劇。
そして、殺しの日々。
アモンのやつ泣いていやがる。俺も目に水がたまった。
アリスもそして感情がリンクした妹達もワーワーと泣いている。
彼女の体の実年齢は3才そこそこ。それを無理やり成長させてある。
手の指の爪の下にはそれぞれ異なった毒を出す毒腺があり、他にもさまざまな薬品の分泌腺がある。
こんな非情な暗殺用の毒兵器を作れる組織、何者なんだ?
なぜそんな組織にユリアたちは狙われているんだ?
真剣な顔で考え事をしていたアモンが
「この子の封印をといてやろう。」
漠然と死なせてやったほうがいいと思っていた俺は驚いた。
「両親の知識はある。生きていけるかどうかは自分であがけばいい。」
両親が赤子につけた名前ルーナとなった72番はアモンのメイドをしている。
命令されたこと以外のことが出来るまで、自分の意思で笑えるようになるまで、まだかなりの時間がかかるだろう。
ルーナはいつもアモンのそばにいる。
寝るときもアモンのどこか端っこを触っていないと夜泣きする。
見た目は16、知識は大人、実年齢と魂が3才というわけのわからないメンバーが増えた。
俺の隣にはいつもアリス、アモンの隣にはいつもルーナ。甘えん坊たちの定位置が決まってしまった。
俺達の乗せた牛車は次の町ジェスに向かって街道をゆっくりと進む。
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72番と番号だけで名前のなかった女は、誰かが作り上げた合成生命体だった。
体をこんな風に改造されて、人工知能ハルに支配されていたおれと境遇が重なる。
暗殺者だからと、始末しようとしたアインを止めた。
それが解ったのかどうだか不明だが、ルーナと名づけられた女は俺になついた。
見かけも知識も大人にされているが、この世に生まれてまだ3年。
俺のことを親だと思っているみたいだ。
ルーナが加わってから、アリスが俺とアインの間に割り込まなくなった。
俺にルーナがいつもくっついているからだ。
アインのやつ、やきもち焼きの妹がいると大変だなぁ。