一刀に賭ける
アインが忙しいので、前半アリスです。
道場の真ん中でお兄ちゃんが立ったり寝転がったりしている。
漂う精霊の気がなかったら、あれってただのヘンタイよね。
いつ終わるか分からないから、カイル君に案内してもらって町で遊んだ。
そしてお城の外壁に張り出されていた掲示板で、あれを見つけてしまった。
アモンったら帰ってきたら許さないからね。
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はぁ~めんどくせ~。
今朝も真っ白なテーブルクロスを挟んで座っているのは姫様二人だけ。
ソフィアさんが給仕でレイと俺が調理している。
うっとうしいのはディアナ様のとりまきたち。
毒見だと言いながら姫様たち以上にガッツリ食べてくれたりします。
俺たちのいる調理場と姫さんたちの部屋の壁は向こうからは壁にしか見えないがこちらからは丸見えない魔法壁で出来ており、護衛の女性兵士たちも安心してここで食事が出来る。
俺がうっとうしがっているのは、彼女たちのガールズトークに無理やり入れられていること。
化粧の仕方なんか分かるもんか,鏡の前に座りゃぁ勝手に手が何夜間や塗りたくるんだ。
とかを押し殺してニコニコ料理してる俺、ストレスだけがマッハで溜まっていく。
食後のお茶のカップを片手にユリアちゃんが何か一言。
壁の向こうで張り詰める空気を、こちらの皆さんは気が付いていない。
魔法壁にはにこやかに会話しているレイの作った幻影が映し出されているからだ。
「アモンちゃんディアナ様がお呼びよ。」
ソフィアさんと入れ違いに部屋に入った俺は、放たれる殺気を無視して、ユリアちゃんの後ろに立った。
「どこまで知ってる?」
「毒を恐れていらっしゃることと、怪しいのが3人ほど消えたことでしょうか。」
にこにこ・・・話してくれるかな?
にこにこ・・・
・・
にこにこ・・・早くはけよ!
「部下たちが賭けをしたんだ。」
・・へ?
「たまたま大商人も暗殺事件があって、それがどうやらホロウハンドとか名乗る暗殺集団の仕業だと分かったんだ。これはどうしようもないと呟いた捜査担当者に商人の身内だった私の部下が噛み付いたのだ。無能め!と」
・・それが殿下暗殺とどう繋がる?
「相手がホロウハンドなら警備も捜査も無理だ、この理屈に部下が噛み付いたのだ。無能者め、それでも騎士かわれわれなら完璧に警護してみせると。それから不毛な応酬があって、上司である私をこの祭りの終わりまで守ることが出来るか、賭けをしてしまったのだ。」
「それで依頼したのですか?」
「ああ、夜神殿に依頼書を置いたら本当に受領の返事が来たそうだ。話を聞いて罰する気持ちもおこらなんだ。」
「それがあの人たちなんですか?」
「うむ。」
「はぁ。」
「剣を持って襲い掛かってくればよいのだが、私も怖いんだ。申し訳ないが、食事だけは頼みたい。」
こりゃたいへんだ。