侍女とお姫様
長身のその人物は優雅にアモンに一礼して微笑んだ。
「なぜ来た。呼んでないぞ。」
アモンの不機嫌そうな声にも顔色一つ変えず、
「アモン様、皆様に紹介していただけないでしょうか。」
俺のケーンはそのバシッと燕尾服を着こなした男装の麗人が怖いらしい。
彼女が現れた瞬間から俺のズボンにしがみついている。
「レイ・バトラー、俺の使役獣でケーンの上位種だ。レイ、左から順に、アイン、ミラ、レイチェル、ドリス、ファリア、ソフィアさん、ユリアちゃん」
「レイ・バトラーと申します。よろしくお願いいたします。もうすぐ夕食ですので早速仕事に入らせていただきます。」
レイはメイドを7人も召喚して一緒に部屋から出て行った。
「なんで彼女が来るのを嫌がったんだ?」
横を向いたアモンの代わりにソフィアさんが答えてくれた。
「たぶんあの姿を見られたくなかったんだと思うわ。あのケーンは飼い主に半寄生してるみたいだから、どうしても似てくるの。」
「アモンがあれになる?」
「そ。」
「すっごい美人だったぞ?スタイルもよかったし。」
「アイン、そこのところあまりこだわらないほうがいいと思うの。長生きしたければだけど。」
やばっ、アモンの雰囲気がおかしい。
ちょうど良いところにアリスたちが帰ってきてくれた。
「ただいま~、たいへんたいへん、ソフィアさんたいへん。」
「どうしたの?」
「お城で女祭りがあるから侍女一人とメイド二人を最低でも連れてこいだって。わたし達メイドってむりだよ。」
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レイはゼムが俺につけた精霊に限りなく近い幻獣。
半ば以上俺と融合しているので人型になるとき、俺そっくりの外観になる。
ただレイは20代に成長した姿をとっている。
ケーンはこの融合能力から、影武者とすることがある。
もっとも単純に使役獣とすればそんなことにはならない。
レイはおとなになった俺のはずなのに3ミリほどの角しかない。
だから他人には見せられない。
絶対にほかの修羅には見せられない。
レイも自分の頭を鏡に映してため息をついていた。
かわいそうに。
アインもソフィアさんもあえて角には触れないでいてくれる。感謝。
ところで侍女とメイドが二人?簡単じゃないか。
「侍女はソフィアさんでいいし、メイドなら俺とレイでするさ。」
な、なんだよその生あったかい目は。
「完璧に化けてやるから大丈夫さ。」
な、なんだよ、だいじょうぶだって言ってるだろ。
ケーンは結局また2匹追加することになりました。