最初に二人消えました
オモザワの村で俺達は足止めされた。
フカマ山が噴火したためだ。
街道まで火山弾が飛んでくるため危険で通行できない。
おまけに噴火のおかげで大地の魔法の流れ、地脈も狂った。
魔力的に位置座標の基準点となる地脈がのたうつおかげで、長距離転移で塔やドラゴンバレイに戻ることも出来ない。
「ここじゃよくあることなのよ。一週間で収まるからゆっくりしていってね。」
と宿のおばさんも言ってることだし、温泉でも浸かるか。
「おいアモン風呂行くぞ。」
「アリスたちを誘ってやれ、俺は牛にえさをやってくる。」
ふん、つまらんやつだ。
ついでに誘ったユリアちゃん達にも断られた。
女性専用の風呂に行くらしい。
混浴のほうがでっかいって言ってたぞ。
おいファリア泳ぐな、ミラ体を洗ってから入れ、アリス何もじもじしてるんだ早く来い。
走るなレイチェル他のお客さんに迷惑だぞ。
ドリスを見習え。
他のお客さん、20代前半くらいのお姉さんがひとり入っていた。
かなりの美人さんできれいなおっきいおっぱいがぽよよんとしていたけど、俺まだお子様でした。
ん~いい湯だ、ちょっとぬる目のお湯に居眠りしかけたら、目の前にお姉さんがいた。
危ない危ない、この人が暗殺者なら殺されていたところだ。殺気が少しでもあればここまで近寄らせないけどね。
「子供達だけなの?」
「大人はまだ部屋にいます。すいません行儀よくさせますので。」
「他に誰もいないからわたしはべつにいいわよ。私はスー、占い師をしてるの、あなたはそうね、悩み事がないようなタイプね。」
「はははは、わかります?その通りです」
「そのほうが良いんだけど、わたし達は商売にならないの。後ろのお嬢ちゃん占って上げましょうか?」
スーさんは水面に丸く円を描く。
術は何も使っていないようだ、占いってそんなもんだろ。
「お名前聞いていいかしら?」
「アリス。」
アリスがはにかみながら答える。
「アリスは恋の悩みがありそうね、好きな人が振り向いてくれないとか。」
ほう、そうなのか?アリスが真っ赤になった。
「その好きな人に最近別の女の子がくっついているとか。」
アリスがこくこくうなずいている。
もしかしたら、アモンが好きなのか?
そういえば最近ずっとルーナがくっついている。
「あとでゆっくり、占ってあげるから私の部屋に来なさいよ、どうせ暇だからただで見てあげるわ。」
俺はアリスの頭をクシャクシャッとやってスーさんに礼を言った。
「ありがとうございます、お菓子でも持ってやらせますのでよろしくお願いします。」
「それは楽しみね、待ってるわ。」
風呂から上がって、アリスは自分で焼いたクッキーを持っていそいそとスーさんの部屋に入って行った。
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俺は分かれ道に来て途方にくれた。
左男湯、真ん中混浴大露天風呂、右女湯
ソフィアさんとユリアちゃんは右の道へ進んで行った。
俺はその~見かけがお子様だから仲間が入っていない男湯に行こうとしたんだが・・・。
ルーナが俺の上着の端っこを握って離さない。
しゃ~ない、真ん中に行こうか、アインたち出てると良いけど。
風呂には盲目の爺さんがひとり浸かっていた。
「父娘で温泉ですかいいですなぁ。」
だと。気配が読めたらそう映るわな。
この爺さん、ただもんじゃないな。
風呂から上がると5人娘が見知らぬ女の人と一緒にいた。
なにやらいやな予感がする。
殺気とまではいかないが、俺はいつでも双流星を出せるように紐を握った。
「スーさんが珍しい呪文を教えてくれるんだって。」
レイチェルがニコニコしている。
気のせいか。
スーと呼ばれた女が呪文を唱えだす。
これは!!
俺は、転移陣でルーナを跳ばすと同時に、念話で叫んだ、
”そいつを殺せ!”
呪文の最初を聞かされただけで、俺はスーに攻撃できなくなった。
”速く!”
レイチェルたちが戸惑う間に呪文は完成した。
「この子たちを始末しなさい。」
「ハイマスター。」
俺はレイチェルに向かって必殺の技を、
”レイチェル逃げろ!!”
発動した。
掻き消えるレイチェル、思念のリンクがぷつりと切れる。
女がすっと消えた。
スーを倒すのは無理だ。
”今の内に俺を殺せ!速く!!”
ドリスの水刃が俺の右腕を落とし、ファリアの火球が俺の顔面を捉える。
”何をしてる!!俺の首を落とせ!!!”
本来なら、出せない2撃目を俺はドリスに向ける。
撃つ。
ドリスも消えた。
俺は全ての力を出し尽くして倒れた、念話もできない。
俺の真横に実体化したスーが俺をつかんで転移し逃げた。
えらいこっちゃ!!