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水竜神の夜

工場を乗せた艀の群れがジェス川を遡って来た。

ただ浮いているだけで自らは動くことの出来ない艀は、50人が漕ぐ船で引っ張って移動させる。

だから流れのある川をさかのぼるのは簡単なことではない。

だから、3年前の大雨で河口付近に流されて以来そこにつながれていた。

その平底の艀を川の中を歩く巨大なゴーレムが引っ張っている。

ごっつい眺めだ。

岸辺にいる観光客も大喜び、今夜が雨乞い祭りの本番、水竜との結婚式もある。

町の中には屋台がいっぱい。

ここにも売り子のゴーレム。

高空には花びらを撒くガーゴイル

アモンが塔を空にする勢いでそれらを連れて来た。


アモン自身は朝からずっと待ちの真ん中にある巨大なオルガンを弾いている。

その口にときどきルーナが小さいハポン焼きを放り込んでいる。

妹達はその周りで楽しそうに踊っている。

あいつ音痴じゃなかったのか?なんか負けたようで悔しい。

俺もあ~んするから放り込んで欲しい、とか思いながら吹き矢を構える小男の背後に降り立ち首に一撃入れて気絶させる。

小男が見ていた先には、受付を手伝うユリアちゃんの姿。

ソフィアさんは竜の神官の補助をするらしい。

誰もが楽しそうに浮かれる中、俺はまた影に溶け込んだ。


やがて日が落ち広場に巨大な篝火が焚かれ竜神官が祝詞をとなえる。

それにソフィアさんが唱和し、アモンのオルガンが荘厳なメロディーを奏でる。

赤いじゅうたんが敷かれた中央の大通りをリンシェさんに手を引かれた花嫁姿のマーシャさんが入ってくる。

周りで花びらを撒くのは5人の妹達。


おっといけない。

俺は3人目を無力化した。


花嫁が篝火の前の祭壇に上がると、艀の篝火を背景に、湖の水面が何回か閃光を発し巨大な水柱が立ち上る。

その周りを七色の光りをまとった精霊に扮した約百人の妹たちが飛び回る。

水柱はやがて、竜になり一声咆哮するとゆっくりと町の空を一周飛んで広場に降り立ち祭壇を中心にしてとぐろを巻く。

神官が誓いの儀を行い、水竜が一声吼えると星空が一転して掻き曇り、滝のような大雨が降って全ての篝火が消えて闇になる。

10数えるほどの間を空けて一陣の風が吹くとびしょぬれになった衣服が元のように乾き、再び篝火が点けられ神官だけとなった祭壇を照らす。


俺の知らない弦楽器に持ち替えたアモンが陽気な音楽をかき鳴らすと篝火を中心として踊りの輪ができる。

妹達も楽しそうだ。

ふたを開けた酒樽が運び込まれると喧騒はいっそう大きくなる。

いつの間にか地味な服に着替えたマーシャさんがゴウシンさんと一緒に屋台に並んでいるのも見える。


俺の横の空気が揺らぎ、アリスが転移してくる。

「ゴウエンさんたちが、交代するから一緒に遊んできなさいって。」

「俺達も踊ろうか?」

アリスはとてもいい顔で笑った。


******************************************************************


オルガンの音にあわせて魔力を放つ。

いた。

アインが後ろに回りこんでいる、よし。

俺も監視してるんだ。遊んでいるんじゃないぞ。

ゴーレムもガーゴイルも俺が動かしているんだ。

おぃルーナハポンくれ。ありがと。


最後は俺達修羅に伝わる楽器でと。

朝まで行くぜい。


がんばりました。

明け方になって、しとしと雨が降ってきた。

これは別に魔法ではない。

河口付近で上昇気流を起こし、湿った空気が海のほうから入るのを邪魔していた工場群を移動させただけ。

それでいつものようにこの季節には雨が降る。

ただそれだけのことだった。


次の日俺達はマーシャさんたちと分かれ、次の町へと牛車を進めた。

ゴウシンさんは・・もしかしたらドリスに兄弟が出来るかもしれない。

だってゴウシンさん独身だったし、結婚の祝詞は正式なものだったし。

俺異種族の生理現象についてはよくしらねぇ。

大人の世界だな。








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