表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/36

アシハポン?

ジェスに近づくにつれて様子がおかしくなってくる。

最初は何か草がげんなりしているだけだったのが、地面はひび割れ、しかもところどころに塩を噴いている。

家畜はもちろん野生動物や鳥さえ見かけなくなった。

へんだ、もう雨季になっていなければおかしい季節なのに。


ジェスの周りのクンム山地に降った雨は町の隣のジェス湖に集まり、唯一流れ出すジェス川によって南東の海に戻る。

クンム山地は鉄と石炭が豊富で、ジェスはその集積地として栄えた緑豊かな町のはずだった。

しかしおれたちが見たジェスは、干上がった湖の隣の埃っぽい寂れた町でしかなかった。

もう2年も雨が降ってないらしい。その前も少なかったらしい。

ドリスも空気にほとんど水分がないと言っていた。


リンシェさんの兄さんがこの町の町長のキルケさん。

キルケさんの屋敷に4日後のマーシャさんの結婚式までお世話になることになった。

ゴウシンさんは全く覚えがないって言ってるし、マーシャさんの楽しそうな顔を見ていたら、それはおかしいですよ、ともなかなか言えないし。

その場に立ち会えば何とでもなる かもしれないってことで、はははは。

何とかなるだろ。


町とは反対に、河口にある製鉄所や鍛冶場はにぎやかだった。

俺達の目当ては工場群の見学ではなくて、ハポン焼き!

ハポンとは何かこの辺りの海岸沿いだけの秘密の材料を使ってある料理だ。

直径5cmくらいの鉄のお椀に長い柄がついたハポン鍋に出汁と卵でといた粉をいれ、なぞのハポンと、他の具を入れる。

ある程度固まったら鉄串と絶妙の技でひっくり返す。

これを果物などを発酵させたソースで食べる。


全員が一個ずつ食べ、2巡目にユリアが食べようとしたとき、そのハポン焼きをレイチェルがとった。

隣にいたアリスがおばさんの目を覗き込む。

「80番、暗示がかかってる。利用されてただけ。」

おれは、おばさんの後ろに回りこみ見てしまった。

80番と書かれたユリアの似顔絵とぐねぐねとした気味の悪い生物。

こいつがハポンか。


ユリアのハポンには金属の玉が入っていた。

噛むと圧縮された空気で爆発する。

あとで試したら、頭蓋骨くらいは穴が開きそうだった。


おばさんは「ハポン鍋が冷えてる、どうしたのかねぇ?」と不思議がりながらハポン焼きを焼いている。

ミラが何も言わないから毒ではないんだろうが・・・

4巡めに並んでいるルーナが不思議そうに言った。

「アインもう食べないの?」


**********************************************


ジェス川の河口に浮いている工場の一角にある屋台へおれはみんなを連れて行った。

俺はハポン焼きが大好きなんだ。

ここで売っていると聞いたからには食べに行かねばならない。


屋台で八つのハポン鍋を器用にあやつってハポン焼きを作っていたおばさんに襲われたのには驚いた。

ま、世の中いろんなことがあるさ。


アインのやつアシハポンを見てしまったみたいだ。

見てくれで差別するなんて男らしくないぞ。

俺は少し勝ったような気がした。



















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ