イギーナイト(騎士)
あのイギーが私の騎士?
愛らしいぬいぐるみのイギーをお迎えした桃に想定外の出来事が訪れるファンタジー小説
深夜2時
そう 草木も眠る丑三つ時に 疲労のせいか突然それは やってきたのだ
金縛りが!!
身体が…動かない いやいや、これは脳が完全に覚醒していないせいだ
そうよ、そうに決まってる
で…も… なんか足元に生暖かいモノが当たるんだよな
膝? に、してはやわらかい 目を開けちゃあダメだ
「うう…怖い…てかヤバいかも…助け…イギー…」
「ザ・フール!!」
凛々しい声と共に一陣の風と砂が舞い上がる
「う、ぎゃあぁぁぁっ!!」
不気味な叫び声を残してソレは去っていった
「やっつけてやったぜ…安眠妨害しやがって」
隣に寝ていたぬいぐるみのイギーが心配そうに寝ている私を覗き込んでいる
「動けるか?」
言われてみれば…いつの間にか金縛りはとけていた
私はガバリと起き上がると小さなイギーを抱きしめる
「ありがと~イギーたんっ、助かったよ。怖かったぁ」
「苦しい、ペット扱いすんなって」
少し迷惑そうに彼は腕からスルリと抜け出すとため息交じりに言葉を続ける
「お前はすぐ霊と戦おうとするからな…修行もしてない素人が危険だぞ」
「そうだね、ごめん」
「謝らなくていい…喉が渇いた…少し腹もへったな」
可愛いっ!!
「ちょっと待っててね」
キッチンに向かいご飯を温め冷凍ホウレンソウを炒めてそぼろの残りをのっけたそぼろ丼と冷えたミネラルウォーターを
彼専用の器にトポトポと注いで寝室に戻る
「それと…デザートにコーヒーガムも♪」
堤から出したガムを差し出すと彼は尻尾を振ってかぶりつく
「ふん、気が利くじゃあねぇか」
「だってこうしないと箱ごと食べちゃうから心配だもん」
グルメな彼はいわゆるペットフードは食さない
害はないのかと確認したところぬいぐるみに魂が宿ったモノだから人間と同じモノを食べて問題ないそうだ
もちろん、トイレにも行くしお得意のおならもするがポルナレフのように髪をむしられながらひっかけられたことはない
「レディにそんな真似はしねぇよ」
そうなのだ
憎まれ口は叩くが根っからのレディファーストで紳士
流石、タキシードを着た紳士と云われる由緒正しきボストンテリア!
※
半年前…
ジョジョの奇妙な冒険をつべで1部から観ていた私は3部で登場するイギーの犬好きの少年を救った男気に惚れてドハマりしてしまった
「やれやれ…犬好きの子供は見殺しには できねぇぜ!」
ズキューン!とハートを撃ち抜かれてしまいポルナレフを命懸けで助けたシーンで感動とながら「イギー! そんなっ…イギーちゃんっ!!」と泣き叫び
黄金の精神を持った彼の虜になった
イギーのグッズが欲しくて検索していたら可憐なくったりぬいぐるみのイギーを見つけ
こ、こ、これは…運命の一期一会じゃあないの!! もうお迎えするしかないっ
はやる気持ちを抑えてポチり彼がやってくる日を待ちわびた
そして
ピンポーン♪
「どうも、宅配です」
キター!!!!!
玄関までダッシュすると彼が入っているダンボールを受け取ると傷つけないよう丁寧に開封してジイッと私を見上げているイギーと目が合った
か、か、か、可愛いっ!
「待ってたよ~すぐに出してあげるからねっ」
すぐにビニールから出すと頭を撫でて声をかける
「ようこそ我が家へ♪私は桃子、よろしくね、イギー」
「…」
当然、返事をしてくれるはずがなく私は彼用に塗っておいた小さな座布団にイギーをチョコンと乗せると耳のカラーに合わせた黄色いベイビーアルパカの毛糸で服を編んで着せた
う~ん、お耳の色とマッチして可愛すぎるぅ
「首にゆとり持たせてあるからキツクないかな? こうするとね肌が汚れないし痛まないから我慢してね」
物心ついた時からぬいぐるみ好きな私はご縁をもってお迎えした子たちに手編みのお洋服を着せているのだ
そしてコーヒーガムを彼の前に置いてお茶を淹れにキッチンに行き戻ってくると…
クチャクチャクチャ…
え…
え、え、えっ
ちょっと待って…夢、じゃないよね?
美味しそうにコーヒーガムを噛んでるイギーに私は言葉を失い固まった
クチャクチャクチャ…
「そんなに驚くなよ…」
「あ…あなた、その…イギー??」
想定外の出来事を目の当たりにした開口一番は我ながらなんともおまぬけな質問だった
ハァ…
呆れた…という風にイギーはたろぃきをつくと
「お前が呼んだんだろう? 俺様はイギー、スタンドはザ・フールだ」
「いやいや、それは知ってる!あの、」
「よくわからんが…お前に呼ばれたらしいぜ…なんか抜けてそうだしな…守ってやるよ」
えっ、ええぇぇ~!!!
イギーが…憧れのイギーたんが私の騎士?
お願い、夢ならさめないで…
「残念ながら現実だぜ」
私の気持ちを読んだような返答に心臓が跳ね上がる
「さ、触っていい?」
気難しい彼の性格を尊重して質問する私に彼はフッと微笑んだ
「ベタベタされるのは嫌いだが…好きにしろ…お前の為に来たんだ」
「ありがとう…では、お言葉に甘えて…」
イギーをそっと抱っこして頭を撫でる…な、な、…シルクみたいにスベスベで気持ちいい~!
夢心地な感触にうっとりしながら質問した
「すっごく嬉しいの、だから心配でひとつ、質問してもいい?」
「なに?」
「ずっと一緒にいられるの? 翌朝、目覚めて魂がいなくなってるなんて…」
「ば~か!」
彼は私を見上げて一瞬、ニヤリとするとピョンと身軽に肩に飛び乗り頭に登ると髪の毛をハグハグする
う、嬉しい…
「…むしりがいがある毛量だぜ…ま、女に手荒な真似をする趣味はないが…」
え…
ピョーンと頭から降りて私の作った座布団に座るとイギーは言葉を続けた
「純粋なやつだな…見たところ24くらいか? 世間知らずか天然なのか知らんが、魂が子供のままだ…俺はイイ女と子供に乱暴はしない。
守ってやるよ…お前がバーサンになっても俺を必要とする限り…今日から俺はイギーナイト、お前の騎士だ」
「イギー…ナイト…29歳だよ…若く言ってくれてありがとう…」
「好物のコーヒーガムももらったしな」
ニヤリと不敵に微笑む彼にポッとしながら
「うん、うん♪近所じゃ売ってなくて検索して通販で買っておいたんだ」
箱買いしたガムは棚にしまってある
たぶん、見せると箱ごと食べちゃいそうだしね
タッタッタ…
イギーは和室の棚に向かうと器用に開けてコーヒーガムの箱を見つけてしまう
さ、流石に賢いのだわ…
ビリビリと齧りながらガムをほうばる彼が尊くて、私はイギーを傷つけないように言葉をかけた
「あなたのために買ったから好きに食べていいけどこのまま食べたら体に悪いからね…食べたいときは私に言ってくれる? 包みから出して渡すわ」
「けっ、俺は命令されるのは嫌いだぜ…野良だった時もこのまんま食ってた」
「イギーたんっ、それじゃ消化できないじゃないっ、お腹が痛くなったら…どうするのっ、お医者様に行けないし…私、私は…」
言葉が続かずにボロボロと涙が零れて俯く私の手に彼はパスっと柔らかな肉球をのせた
「わかったよ…女を泣かすのは好きじゃあねえぜ…ガム、むいてくれ」
わかってくれた!
「うんっ♪待っててね」
箱のガムを一枚ずつ丁寧にむいてお皿に載せていく
「…お前、ももだっけ、金縛りにあいやすいだろう」
「名前覚えてくれたんだぁ♪ 金縛り、時々あうよ、それと夢でゾンビや悪霊と闘ってる」
「いいか、今度から夜中に金縛りにあいそうになったりラップ音がしたら俺を起こせ、約束しろ」
サファイアのようなブルーの瞳に見つめられコクリと頷く
「わかった、すぐにイギーたんを起こすね」
「…その、たん、はやめてくれ。イギーでいい、わかったな?もも」
「ごめんね、可愛くてつい心の中でそう呼んでいたから」
「謝らなくていい…今度たんづけしたら家出するぞ」
「そんなっ…そんなの絶対にやだから!! わかった、イギー、二度とたんづけで呼ばないから家出なんてしないで」
顔面蒼白な私に呆れたように瞳をまぁるくして傍に来てくれる
「ったく、大袈裟な奴だな、冗談だよ、どこにも行かないから安心しろ…」
「冗談…本当に?」
「くどいぜ、ったくお前、どんな育ち方したんだよ…」
「母が毒親でね、父は10年前に他界して、最愛の妹も一昨年、病気で他界したんだ…」
彼は膝に飛び乗ると肉球で私の唇をふさいだ
パスっ…
「もういい…今日から俺がいる、妹の魂もそばにいるぜ」
イギー…
あたたかな肉球と優しすぎる言葉に呆れるほど涙が零れてとまらない…
「お。おい、泣くなよ、悪かったって言ってるじゃあねぇか…」
汗をかきながら心配してくれる
本当に優しいんだな
※
それから彼と暮らしている
仕事が遅くなると玄関で待っててくれる
あれ? マックの袋? 口に咥えてるんだけど
イギーは私の手に袋を落とすと照れくさそうに呟いた
「中身はわかんねえから文句言うなよ」
どうやってこれを手に入れたの?なんて野暮なことは聞かずに私は彼を抱き上げるとお土産のコーヒーガムを彼に渡した
拙い作品を読んでくださった貴方様に心よりお礼を申し上げます
「ジョジョの奇妙な冒険」3部に登場したイギーを敬愛するあまりに書いた趣味の創作です




