第1話 幽霊は名乗らない
はじめまして。
読んでいただきありがとうございます。
学園×殺し屋×ダーク×少しコメディの物語です。
楽しんでいただけたら嬉しいです!
夜の港は、静かだった。
コンテナが並び、
潮の匂いだけが漂う。
人気はない。
——表向きは。
倉庫の裏口で、男が電話をしている。
「だから俺は知らねぇって——」
震えた声。
足元には、武器の入った木箱。
横流しが発覚した。
裏切り者の末路は、決まっている。
背後に、影。
気配はない。
音もない。
ただ、いる。
「……誰だ」
振り向いた瞬間、視界が揺れた。
肘。
頸部。
床。
呼吸が止まる。
音は、しない。
「処理完了」
低い声。
黒いパーカー。
フードの奥、冷たい目。
コードネーム——GHOST。
銃は使わない。
必要ない。
この世のあらゆる物は、
彼の手にかかれば武器になる。
今日使ったのは、ただの金属工具だ。
十分だった。
スマホが震える。
《FADER》
暗号化画面。
【依頼No.401】
排除確認
報酬送金済
感情のない文章。
それだけ。
一般人は殺さない。
女も、子供も。
それが、自分の基準。
今回の男は、武器を流した。
線は越えている。
だから、処理した。
それだけだ。
港を出る。
コンビニの前で、高校生が笑っている。
無防備。
平和。
視線を逸らす。
脳裏に、炎がよぎる。
銃声。
崩れ落ちる二つの影。
血。
両親。
守れなかった。
拳を握る。
「……二度と」
同じことは繰り返さない。
翌朝。
東都第一高校。
二年B組。
窓際、後ろから二番目。
そこに、新田蓮は座っている。
地味な制服。
無表情。
目立たない。
昨日の夜の少年とは、別人のようだ。
「れーん!」
明るい声。
篠宮澪。
幼い頃からの呼び方。
「おはよ!」
「……おはよう」
「声ちっさ! 昔はもっと元気だったのに」
返せない。
事実だからだ。
澪とは、物心ついた頃からの付き合いだ。
家も近く、
小学校も、中学も一緒。
両親が生きていた頃の自分を知っている、
数少ない存在。
教室の扉が開く。
担任、桐生。
穏やかな教師の顔。
だが、その目だけは違う。
一瞬だけ、視線が交わる。
確認。
無言の合図。
ポケットの中で、スマホが震える。
《FADER》
【次の依頼を待て】
画面を閉じる。
昼は高校生。
夜は処理屋。
どちらも嘘ではない。
澪が笑う。
クラスが騒ぐ。
桐生が見守る。
この教室には、守るべきものがある。
幽霊は、名乗らない。
だが。
平和が壊れるとき——
必ず、そこにいる。
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