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前篇

前後篇にて執筆。次の投稿は22時頃予定!

※視点は分かれておらず、物語は前後篇で一つとなっております。

 




「よろしいですかみなさん。先日、この国に聖女様がご降臨されました」


 先生のその一言で、私、カトレア・アルペカルト伯爵令嬢は小さく肩を揺らした。

 私は──カトレアだ。……カトレア?

 視線を落とすと、艶やかなラベンダー色の長い髪が目に入る。

 制服は貴族令嬢らしく肌を晒さないデザインで、胸元のリボンは学年色である白に、端にはアルペカルト伯爵家の家紋が刺繍されている。


 そして次に、聖女。召喚。恋愛。魔王──。

 頭の中に様々な映像が、音楽が流れ込んでくる。

 黒髪の少女が楽しく学園生活を送り……。暗転、魔王復活の報により聖女が仲間と共に魔法を鍛え……。

 と、この世界で起こるだろう出来事の数々が、脳内を駆け巡る。


「……カトレア、大丈夫なの?」

「え、えぇ……その、少しめまいがして」

「また本を読んで夜更かし? もう、程々にしなきゃダメよ」


 隣の席にいる、この国の王女であり従姉でもあるラッフィーナ。

 白金の髪と碧眼。王家に代々顕れる「王の色」。

 しかし今ばかりはそれがくすんで見えた。

 彼女は動揺しきっている私を見て、驚いたような表情でこちらを心配そうに見つめている。

 しかし私は頭を押さえて、大丈夫と頭を振った。


「明日からこのクラスに編入されるそうですが、くれぐれも、失礼のないように」


 そう言って、先生が教室から出ていくのを見届けて、皆が帰り支度をし始める。

 ラッフィーナも教科書やお気に入りの恋愛小説を鞄に入れ、迎えの時間を気にしながら、級友たちと会話を弾ませていた。

 これがカトレアの日常。しかし私にとっては、この見慣れたような、そうでないような光景こそが非日常そのものだった。


 ──私は、日本に住んでいた。

 引っ込み思案な性格とオタク文化が見事にはまった結果、好きなゲームをして、漫画を読んで、趣味を共有できる友人とたくさん話して……。

 そういえば、コンビニのポップ企画はどうなったのだろう。

 企画案を議論しあった後の帰り道、私は店先で偶然会った幼馴染との帰宅途中、信号待ちをしていて。

 そこで不意に、強く背中を押された。

 銀縁のメガネをかけた幼馴染の驚いた顔が、フラッシュバックする。


 ……そこまでしか、思い出せない。


 今や貴族。伯爵令嬢だ。

 まとまらない思考のまま、私はぽつり、独り言をこぼす。


「聖女様って、どんな方なのでしょうか」

「文献では清き乙女と記されているわね。きっと、可憐で淑やかな方だわ」


 ぐ、と喉が鳴る。

 前世の記憶と、現世の伯爵令嬢としての知識があるので、わかる。

 あれはこの世界の思う乙女ではない、と。




 ◆




 次の日。

 朝の授業前。いつも先生の小講義を聞く時間が、丸々聖女の自己紹介にあてられた。

 いつも規律や節度を重んじる級友たちも、この時ばかりは浮き足立っているように見える。


 勢いよく扉が開く。

 現れたのは、黒目黒髪の少し小柄な少女。

 傍から見て大変かわいらしい子だ。ゲームの通り、元気で明るくて、いい子という感じ。

 胸元で揺れる白いリボンが彼女の正統派ヒロインらしさを強調している。


 瑞々しい桃色の唇が弧を描き、言葉を紡いだ。


「えぇっと、レインといいます!

 この世界に来てまだ少しで不安なことばっかりなので、

 まずは皆と仲良くできたら嬉しいです!」


 レイン。

 鈴を転がしたような声色で、少女はそう名乗った。

 私は密かに首を傾げる。

 名前が、ゲームのデフォルトではない。

 疑問に思いながらも、さながら外人さんみたいな名前だな、と。

 じっと彼女の方を見ていると──


 不意に、聖女レインの影が動いた。


「そうそうこの制服、スカートが長くて裾を何度も踏みかけたんです!

 だからちょっとアレンジしちゃいました!」


 得意げに、元々外せるものであったかのように布地が外され──顕になった足。

 白く傷一つない、私の前世の価値観からするとモデルのような足だ。

 しかし、ここは異世界。

 元の世界とは異なる価値観の世界。

 その瞬間、クラスの男子生徒は一斉に目を伏せ、女子生徒の表情は一気に険しく、もしくは赤くなった。


「わたし、元の世界ではお裁縫が得意だったんです!

 みなさんのスカートも、短くしてあげましょうか?」


 ニコニコな聖女レインに、私は内心溜息をつく。

 貴族において、この世界において素足を見せるということがどういうことか。

 あれでは「襲ってください」と公言しているようなものだ。

 そっとラッフィーナの方を見ると、案の定羞恥心を感じているのか固まっている。

 王族である彼女が動かない以上、このクラスで次に身分の高い私が注意しなければ、聖女レインの暴走は止まらない。


「……聖女レイン様、ひとつよろしいでしょうか」


 すっと私が立ち上がるのを見て、聖女レインの表情がぱっと華やぐ。


「カトレア!  やっぱりあなたはわたしの味方よね!」


 花も恥じるような天真爛漫な笑み。

 改めてヒロインのかわいさをオタクながらに噛み締めつつ、自分のすべきことに徹する。

 教卓の前で私はカーテシーの姿勢を保ち、貴族の令嬢として、聖女へ失礼のないように努めた。


「……ご真意は図りかねますが、聖女レイン様にはこちらの、淡い桃色の腰用ショールがお似合いになられるかと」


 姿勢を低く、そっと聖女レインにショールを巻く。

 私の個人の持ち物である、絹の繊細なレースが編み込まれた逸品だ。

 主に腰周りにボリュームを出したい時や、少し寒い時に使うものだ。

 ないよりマシだろう。

 しかし聖女レインは低く唸った。


「は? なにこれダサ」


 にっこり、私はショールを差し出したまま、彼女の言葉に固まった。

 いや、名乗ってもいないカトレアの名を先に口に出した時点で、やはりと言った方が正しいか。

 名前だって単なる違和感などではなかったのだ。


 ──この子も、転生者だ。


「わたしにこんなものを着せようってわけ?

 なに? まさか、短いスカートが似合ってないって言いたいの!?」

「い、いえ……そんなつもりは」

「そう。じゃあカトレアも短くして? そうしたらみんな、わたしに頼みやすくなるでしょ」


 はい、と目の前にぷらぷらと指で吊るされている、ハサミ。

 きらきらと銀が外からの光を受けて輝いている。

 これを使えというのだろう。

 大きな、布裁ちバサミだ。


 私は震えた。

 自分が知るゲームのヒロインと、目の前の情報の乖離だけでは説明がつかない恐怖が、身体を支配する。

 だって──言う通りにしたら、社会的に死ぬのだから。

 カトレアと私の境界線が更に曖昧になっていく。

 矜恃が、記憶が、思いが今の私として再構築される。


「……っ」

「なに被害者ヅラしてだんまり決め込んでるの? 不愉快なんですけど」

「も、……申し訳ありません。 実は──」


 この際嘘でもいい。切り抜けなければ。

 私は焦りを押し殺し、平静を装って言葉を返した。


「──本日は足が浮腫んでおりまして。ですので一着しかない制服を切るとなると、学校生活で支障が」

「そうなの? じゃあ、別に問題はないわね」


 ──ザクッ、


 へ、と。間抜けな声が出た。

 聖女レインが、私の長いスカートをぞんざいに掴んで、太ももの際どいところでザクザクと切り刻んでいく。

 音は止まらない。

 誰も、止めない。止められない。


 ザクザクザクザク──


 私はその場にへたり込んだ。

 呆気にとられて、声も、涙も出ない。

 ただ頭だけが冷静で、早くここから離れなけらばならないのに、身体が言うことを聞かない。

 呼吸が、やけに近くに聞こえる。




 ……どれくらい経ったのだろう。


「あはは、ほんとだ。足太い」


 しゃがみ込んで熱心に布を切っていた聖女レインはそう言って、ハサミをポケットに仕舞った。

 彼女を見上げる。優越感と侮蔑を混ぜたような視線がかち合い、私は目を逸らした。

 足元にぞんざいに置かれたお気に入りだったショールも、もう修復できないほどにぼろぼろだ。


「カトレアはサポートキャラらしく引っ込んでればよかったのに……。

 まあ挨拶イベントも済んだし、次は攻略対象に会いに行こーっと!」


 聖女レインは軽い足取りで、始業の鐘が鳴るより前に教室を後にした。

 おそらく今から行くのは隣の教室か、教員室か、裏庭か……。


「……お、お待ち下さい、聖女様!」


 と言って先生が追いかけていく。

 それよりも酷い目にあった生徒への対応が先だろうに、と、私は密かに嗤った。


「カトレアっ!」


 ぎゅっと、ラッフィーナに抱きしめられる。

 今は、もうなにもしたくないような虚無感が、心にぽっかりと穴を開けていた。

 そんな諦念の表情を浮かべているのを察してか、彼女はもっと強く私を抱きしめた。

 傷ついている人を放っておけない優しい人。

 あぁ。どうしてヒロインが恋愛パートに入ったら、彼女が悪役にならなければならないのだろう。

 悪役令嬢として破滅する運命を背負わなくてはならないのだろう。

 そんなことを思っていると、少しだけ、ものを考える隙間がうまれてくる。

 すると、すーすーしていた足元があたたかくなっていることに気づいた。

 見れば彼女のシフォンパレオがかけてある。

 静謐な群青色の、透けない布地だ。


「あぁ、カトレアごめんなさい……。わたくしがどうにかしないといけなかったのに」


 呆然としながら、私はその後のことを見ていた。

 すぐにラッフィーナが他の先生を呼び、私は一度医務室へ匿われた後、早退するよう告げられた。


 ◆


「うちの教員がごめんなさいね……。

 またなにかあったら、いつでも来ていいからね」


 学園に常駐している物腰柔らかな女医さんが、困ったように笑う。

 カトレアの記憶に彼女がいないので首を傾げたが、最近派遣されたとのことだった。

 それから何気ない話をして、迎えの馬車が来るまでの時間を過ごした。

 しかし私は、ずっと渦中ではなく観客席で傍観しているような。

 まるでコマ送りの劇を観ているような、そんな感覚にすっぽりと覆われていた。


 軽く会釈をすると、女医さん──イリス先生が手を振ってくれた。

 陽に当たる真紅の髪が風に揺れ、朝摘みのいちごのように輝いていた。

 いつもより軽い鞄を持ち、ロータリーへ歩く。


「カトレア? こっちですよ」

「え、はっ、はい……」


 誰かが手招きをしている。

 知らない人だ。


「鞄、持ちますね」


 目を白黒させながら、差し出された手を重ねる。

 エスコートされた先を見ると、そこには確かにアルペカルト伯爵家の馬車が停まっていて。

 御者とその男子生徒も顔見知りらしく、共に乗って帰るのも不審に思われなかった。


 まだ授業があるにも関わらず私を屋敷まで送ってくれたのは、顔も名前も前世の記憶にない、ただただ美しい男の子だった。


「大変な目に遭ったと聞いています。今度、ゆっくり貴族街のカフェサロンにでも行きましょう」


 子爵家嫡男。名を、オスカーといった。カトレアの婚約者らしい。


「どこがいいですか? 私は最近話題の、個室があるところがいいと思うのですが……」

「え、っと。……そこって静かなところ、ですか?」

「ええ、本の持ち込みも可能らしいです」


 黒髪に青紫の瞳。外見が与える印象は冷たいのに、馬車の中でぽつりぽつりと話しているうちに、あたたかい人だと感じた。

 カトレアの記憶を漁ると、なんでも魔力の相性がいいとかで数年前に婚約が決まったらしい。

 魔力の相性がいいと、生まれる子どもの魔力の量が増え、質が良くなるそうだ。

 優秀な次代を残したい貴族たちは、積極的にそういった婚約を推し進めていると聞いたことがある。

 なんだか、こんなかっこいい人と私なんかが婚約なんてもったいないな、と漠然と思いながら、私は家の門をくぐった。




 ◆




 ただいまを言っても、返ってくることはない。

 執事長に鞄を預けながら確認しても、今日両親は帰らないようだった。

 自室に戻り、カトレアがいつもしていたように本を読む。

 それからは決まった時間に夕食を食べて、入浴をする。

 その後は案外なにもすることがなかったので、すぐ寝ることにした。

 寝る前に、思い出したことをまとめる。


 ◆


 ここは「聖女記伝」という乙女ゲームの世界。

 もちろん見目麗しい攻略対象も、悪役令嬢も、ヒロインだっている。

 このカトレアの記憶と前世の記憶の限り、間違いはない。

 問題は、ここでの私の配役が、ヒロインの親友兼相談役ポジションということだ。

 カトレアはラッフィーナに大きなコンプレックスを持ち、現王妃を輩出した家であることを誇りに思っている父親に命じられるまま、彼女の友人として振る舞っていた。

 そこに現れた聖女は、まさしく救いの光だったのだろう。


 しかし今の私は違う。

 思い出す前でもラッフィーナとは普通に仲のいい従姉妹という仲で、妬むどころか尊敬している。

 ヒロインに何か言われても、揺らぐことはない。

 最大の違いは、婚約者がいることだろうか。

 記憶を探ってもゲームに出てきた覚えはないし、カトレアの記憶を探っても、彼はごく普通の子爵令息である。

 おそらく描写されていないだけだとは思うが、果たして、ほんとうにそうなのか。

 それに、彼との婚約は高位と下位とを跨いで、家同士の思惑があって結ばれたもの。

 ひとつしか爵位が違わないとはいえ、受ける恩恵は天と地ほどの差がある。

 周りからどう見られているかを、カトレアもオスカーも、理解しているだろう。

 それでも、カトレアは彼を好ましく思っていた。

 しかし、今の私はカトレアと混じった「なにか」でしかなく、本物のカトレアではない。

 だから、もし彼が私との婚約について思うことが出てきたなら、両家の反対を押し切ってでも解消する方向に動いてもいいかもしれない。

 そう、思った。


 この違いが吉と出るか凶と出るか。

 モヤモヤしながら、瞳を閉じた。


 ◆


 その夜、夢を見た。

 カトレアの記憶だ。私のものでないことは、すぐにわかった。

 おそらくここは屋敷の裏。

 昼でも陰っていて、じめじめとしている場所。

 しかし小さい頃のカトレアはメイドたちに見つかりにくいからとこの辺りでよく本を読んで、静かに過ごしていたようだった。

 草や土の匂いも、立っている足の裏の感触もしないのに、身体だけが勝手に動いていく。

 いつも座っている切り株から少し離れた、屋敷と外の境界である柵の方へ進む。

 されるがまま、きょろきょろと辺りを見回した後、カトレアは急にしゃがみ込んだ。


 視線の先には、一点、異物がある。黒い塊だ。


 カトレアはなんの躊躇いもなくそれをすくい上げた。

 両手に収まるくらい小さな生き物。

 うごうごと手のひらを這いずって、嬉しそうに八の字を描くそれは──ヘビ? だろうか。

 毒があるかもしれないし、危ないんじゃ……。

 そう思ったのも束の間、小さなヘビはさも当然のように手首の方へ擦り寄って来る。

 カトレアもいつものように、ポケットに入れていたお菓子をその小さな口へ寄せた。

 ヘビってクッキー食べるんだ。

 その後も頭を撫でたり、手を甘噛みされる様をまじまじと見つめる。

 ……そんな様子を見ていると、なんだかかわいく思えてきた。

 それにこちらを見つめる瞳はとても知的な印象で、心地がいい。

 この頃から両親は彼女に無関心で、使用人たちも帰らない主人たちの娘をどう扱っていいかわからないようだった。

 そんな中で、この子だけが友達だったとカトレアは思っていたらしい。

 それからカトレアはヘビに話しかけているようだったが、いかんせん身体の感覚がないのでなにを話しているのかまではわからない。

 ただ、視界に映る口が楽しげに開閉しているのを、見ているだけ。

 しかしお互いがお互いを思いあっているのはわかる。

 そして、約束、とでも言うようにカトレアは小指を差し出す。

 黒いヘビもしっぽを巻き付けて、口の動きと共に上下に揺らす。

 本当に友達みたい。

 なんだか、カトレアと同じように私も嬉しくなってきて──。


 ふっと、目が覚める。

 まだ空は白んでいて、太陽は顔を出していない。

 早く目が覚めてしまったようだ。

 それでもいいかと身を起こした瞬間、なにかが頬を伝った。


「……え、」


 慌てて拭うと、涙だった。

 小さな出会いが印象的な、素敵な夢だったのに。

 なぜ私は泣いているのだろうか。

 他に覚えていない夢でも見ていたのだろうか。

 それがわからず、しばらくそのままぽろぽろと涙を流し続けた。




 ◆




 しばらく、私はイリス先生の指示で休学となった。

 わざわざ屋敷まで訪問してくださった際、彼女には、


「身体の傷が治っても、今も心は悲鳴をあげているはずよ。

 これから数日はゆっくり寝て、たくさん食べて、あなたが楽しいと思うことをして。いいわね?」


 と釘を刺されたので、大人しく療養することを余儀なくされた。

 幸か不幸か、私とカトレアの趣味嗜好がよく似ていたので、今はもっぱら読書に耽っている。

 この世界の本に娯楽の類は少なかったが、カトレアは水の魔法が使えたので、魔術書を読み漁っては試すというのを日がな繰り返していた。

 しかし、そういう生活も一週間もすれば飽きてくる。

 相変わらず両親が帰ってくる気配はなく、執事長に聞いても曖昧に返されるだけ。


 そんなダラダラ過ごしている中、ある日突然、オスカーが屋敷に顔を出した。


「こんにちはカトレア。……なにか作っていたのですか?」


 本当に突然。

 なので私は今、動きやすい服装に汚れてもいい古いエプロンを纏って、魔術書を片手に水を出している。

 客観的に見て変な人だ。


「えっと、その、授業で習ったことの復習を」

「そうですか。熱心ですね」


 本を閉じて後ろに隠し、とりあえず微笑む。

 髪もぼさぼさで格好がつかないだろうが関係ない。

 なにかしなければ羞恥で死にそうだったから……。


「……本日は、どういったご要件で?」

「ああ。カトレアの外出許可が、今日降りる予定だと執事長に伺ったので。

 本日はお出かけしませんか?」


 きょとんと、私は目を丸くした。

 あの日の帰り道。

 どこか行こうと、貴族街のカフェサロンに行こうと言ったあれは、社交辞令ではなかったのだと。


「よろしいのですか? その……お忙しいのでは?」

「そこは、素直に甘えていただけると嬉しいのですが」


 彼は苦笑する。

 ただ、私の言動に困っているのではなく、いつもの癖を笑っているだけなのだろう。

 なんとなくそう感じた。

 それほどまでに、他の人から見てもカトレアと私は似ているのだろうか。

 少し疑問に思った。


「では、お願いします」

「はい。カトレアの支度が終わるまで、客間で待たせていただきますね」


 ヒラヒラとオスカーは手を振る。

 私はぎこちなく手を振り返し、自室にて外出の支度を始めた。


 ◆


 お出かけは難航を極めた。


 といっても、カフェサロンでは比較的穏やかな時間を過ごせている。

 客層は二十代後半の貴婦人方が多く、私たちが少し浮いてしまうくらいに落ち着いた内装をしていた。

 紅茶も、若い人たちが好む甘さだけでなく、どこかすっきりとした味わいが残る。

 それに合わせる焼き菓子がまた絶品で、会計前にはカゴいっぱいに個包装の物が置かれている。

 後で買って帰ろうと心に決めた。


 さて、今は帰り際に差しかかっている。

 ひとしきり食事と会話を堪能したので、カフェ内の本棚の前に来ていた。

 大きさが、屋敷の本棚の比ではない。

 私が両手を広げても足りないくらいの本棚が、何面も横や奥に続いている。

 木と本の匂いが鼻をかすめた。


「──それは恋愛小説ですね。このカフェは購入もできるそうですし、一緒に読みますか?」

「いえ……その、これは屋敷にあるので」

「では、これは私が本日の思い出に購入しますね。

 今度感想を聞かせてください。会う時までには読んでおきますので」


 と、オスカーは本の表紙を大事そうに撫でる。

 その耽美な美丈夫を見る、人、人、人……。

 特に、店の外からたくさんの視線を感じる。

 学園と雰囲気が違うなと馬車の中で思いつついざ街を歩いたら、これだ。

 暗いグレーのラフな格好に、銀縁のメガネ。

 たったこれだけなのにオシャレに見えてしまうのは顔がいいからか。

 はたまた隣の私が地味すぎるからか。


 ラベンダー色の髪に触れる。

 歩いても崩れないように編んでもらったが、やはり巻いた方がよかったかもしれない。


「では、行きましょうか」

「……ありがとうございます」


 直前まで悩んでいたこともあって、差し出される手に戸惑ってしまった。

 慌てて手を重ねる。

 まだエスコートには慣れない。

 でも不思議なことに、無意識下ではごく自然と手を取れるのだ。

 なので私はそっと、悟られないように空の雲を数えることに意識を集中させた。


「……服装、寄せてくださって嬉しいです。髪の毛も、丁寧に編み込まれていて綺麗ですね」


 彼の匂いが鼻腔をくすぐる。

 しかしこの呟きは聞こえないことにして、私はガラスの天井から見えるひつじ雲に思いを馳せ、カフェを後にしたのだった。




 ◆




「……ごめんなさいカトレア。

 わたくしたちはもう、聖女様の暴走を止められないかもしれない」


 ラッフィーナにそう告げられたのは、休学があけて初めての登校日。

 自教室に着いてすぐのことだった。


「聖女様はわたくしたちの協力が得られないとわかると、すぐに下位貴族や商人のいるクラスへ足を運んだわ。彼らも耳障りの良い甘言に騙されたのでしょう。一日も経たないうちに、わたくしたち──特にカトレアのありもしない噂話が広まってしまったの」


 カトレアは舌を巻いた。

 聖女レインは一瞬で、この学園にいる生徒の大半が下位貴族と商人であることに気づけたからだ。

 彼らは常に新しいことを好む。

 古い固定概念を取っ払わなければ、上へのし上がれないからだ。

 彼らと聖女の利害が一致したことによる、情報操作。

 高位貴族はなによりも、誇りを胸に生きている。

 自ら噂を払拭しようなんて誰が考えるだろう。


「……構いません。標的が私であった方が、ラッフィーナ様は」

「いいわけないでしょう?!」


 苦虫を噛み潰したような顔のラッフィーナが、私の手をぎゅっと掴む。

 じんわりと熱が私に伝わり、祈りに似たなにかが周囲を包む。

 彼女は、昨日と同じようにあたたかくて。

 まるで生きているみたいに。


「そうよ。聖女とはいえあれはあんまりだわ!」

「またなにかあったら言えよ? 今度こそ助けてやるからな」

「──っ」


 感情が、込み上げてくる。

 ここで初めて私は気づいた。

 ゲームのキャラクターが「生きている」ことを実感した。

 気づいた。気づいてしまった。

 ラッフィーナの涙が綺麗で、外の陽の光が眩しくて、クラスメイトたちの顔がひとりひとりよくわかって……。


「大丈夫、大丈夫よ。少なくともわたくしとこの教室にいるみんなは、あなたの味方だから」

「……ありがとう、ございます」


 私は背中をさすられながら、みんなが鼓舞し合う風景を眺める。

 ゲームの通りであれば、聖女レインが学園に通うのは描写的に一年だけ。

 ここさえ乗り切ればいいはずだ。

 大丈夫。そう、私は自分の心に言い聞かせた。




 ◆




「あっ、ごめんねカトレア……。うっかり手が滑っちゃった」


 外でお昼ご飯を食べている。ここは中庭。

 あたたかな陽射しが降り注ぐ午後。

 聖女レインの白い手が陶磁器のポットを傾けた。

 私の身体に頭から、香りのいい紅茶がじゃば、とかけられる。


「大変だ! カトレア様のお召し物が……」

「ご安心ください。今度、我が商会のドレスをお贈りいたしますので」


 さも心配そうに取り繕った表情の上に、でかでかと下心が垣間見える。

 聖女レインは特定の攻略対象と見目のいい令息を侍らせて、最近はこのように、いじめを増長させるように動いているらしい。

 ここまで級友たちの情報と違わなければ、もはや驚くことなんてなに一つもない。

 しかし、弁償をするから汚してもいいわけでもないし、伯爵令嬢をいじめていいわけじゃない。

 そして私にも伯爵令嬢としてのメンツがある。

 施しは、いらない。


「いいえ。結構です」

「ひ、ひどいっ……! せっかくお友達が言ってくれたのに! 謝ってよ!!」


 悲壮感が漂うあちら側。

 対して私を筆頭とした高位貴族側は、冷めた視線を送るにとどめていた。

 ラッフィーナは今、学園にいない。

 王族として、召喚された聖女の異常性を研究者や他の王族と共有しているとのことだった。

 しかしなにかしら沙汰が下されるとしても、今ここで聖女レインを直接害したらそれこそ問題だ。

 高位貴族の誇りやメンツに関わる。

 ここは我慢しなければ──

 決意を胸に、再び前を向くと、


「い゛っ……!?」


 耳から広がる鮮烈な痛み。

 咄嗟に手で庇うと、耳たぶからぬるりとあたたかい赤──血が出ていた。

 他の令嬢の悲鳴。

 じんじんと痛む場所を再度触ると、案の定皮膚が地面と垂直に裂けていた。


「このピアスかわいいじゃん! 謝るのはいいから、これもらうね」


 今聖女レインの手の中にあるのは、婚約者から貰った、大切な品だった。

 お互いの瞳の色を模した小ぶりな宝石。

 値段は決して高くはないが、普段使いにちょうどいいと笑い合って決めた、思い出の品なのだ。


「返して、ください」

「は? なに言ってんの。これで許すって言って──」


 その時ふっと現れた見慣れたような後ろ姿に、胸が締め付けられる心地がした。

 カトレアを庇うように聖女レインの前に立ちふさがった、影。


「私からもお願いします、聖女様。お返しいただけませんか?」

「……オスカー、さま」


 カトレアの婚約者であり、子爵令息のオスカー。

 まさか、この流行病のような聖女レインたちによる情報操作に惑わされていなかったなんて。

 下位貴族はみんな、彼女の味方だと思っていたのに。

 聖女レインは驚きからか、目を見開いた。

 しかし、その理由はただ単に自分の味方ではないから……だけではないようだった。


「え、うそ。 普通に他の攻略対象よりかっこいいじゃん!」


 両手で頬を押さえてきゃあきゃあと騒ぐ。

 ──また、盗られてしまう。私はそう直感した。

 物だけではなくカトレアが大切にしていた人まで、彼女は奪おうと言うのか。


 私は少し泣きそうになった。

 しかし貴族令嬢は、涙は絶対に見せないものだ。

 どれだけ痛くても、恐ろしくても、現実から目を逸らしてはならない。

 その上、私のせいで騒ぎが起こっているのは事実。

 しかし早くこの場を治めなければと思うほど、身体が冷たくなっていく。

 悔しさに任せて草を握り、更にどくどくと血が流れる音がうるさくても、私は必死に前を向き続けた。


「ねぇ、このピアス返すから、わたしと一緒にいてよ!」


 それでも聖女レインは身勝手で。

 後ろに控えている取り巻きと同じように侍れ、と。

 暗にそう言っているのだ。

 満面の笑みを称える聖女レイン。

 だがオスカーは、短く、聞こえない程度のため息をつくと


「……お戯れを」


 と、断った。

 しかし彼女はまた花のように笑った。

 断られたと認識できていないのだろう。


「えー、謙遜しなくていいのに!

 こんなにかっこいいんだもん。カトレアにはもったいないよ?」


 ちら、と意地悪な視線をオスカーの肩越しに向けてくる聖女レイン。

 しかし私は……確かにそうだと。

 伯爵家に縛られているくらいなら、婚約なんてない方が彼のためではないかと。

 他人から見てもやはりそうなのだと。

 思った。

 胸が痛む。

 私の心のどこかで刺さっていた棘が、ぐりぐりと動かされる。

 認めたくはないが、そう、思ってしまった。


「──いいでしょう」


 と、オスカーは言った。

 了承とも拒否とも取れない口調だった。

 私のそのときの感情は、諦念に近かった。

 物語の強制力や、ヒロインたる者の力があるのか。

 それとも彼女の純粋な魅力なのか。

 この世界に溢れている魔法の類なのか。

 下を向いて唇を噛む。微かに、血の味がした。

 しかし彼が私の方を振り返って紡いだ言葉は、あまりにも柔らかくて優しいものだった。


「ピアスはもう結構です。……カトレア、また新しいのを買いに行きましょう?

 今度は既製品ではなく、私にデザインを任せてくださいね」


 オスカーはカトレアの前にしゃがんで、私の血みどろの耳に自身のハンカチを当てた。

 悲痛そうで、しかしその中には確かに怒りが滲んでいた。

 そして親指で唇を撫でられる。


「あぁもう唇も噛んで……。手当てをしましょう。傷が残ったら、大変ですから」

「でもオスカー様、私は平気ですから。聖女様を」

「婚約者を放っておける訳がないでしょう?」


 掠れた声で抵抗しても彼はなんでもないように私を抱き上げて、味方たちへ、的確に指示を飛ばす。

 手馴れているような、どこか余裕そうな表情で。

 さながら劇中の王のようだった。

 そして、さも計画通りといった態度で、中庭を後にする。

 気力も体力も限界で夢現な状態の中、見たオスカーの視線はひどく親しみがこもっていた。

 馬車に乗っても、彼は私の身体を離さなかった。


「その、……重いですよね」

「まさか。今日は疲れたでしょう? すべて、私に任せてください」


 私は、彼がここまでしてくれる理由がわからない。

 同じ貴族とはいえ身分差がある。

 にも関わらず、こんなに大切に扱ってくれるのはどうしてなんだろう。

 もう一度、オスカーの横顔を見る。

 彼はあたたかな陽だまりのように、すべてを受け止めてくれる目をしていた。

 カトレアという外見ではなく。私を見ていた。

 私は、愛されていいのかもしれない。

 そう思えた。




 ◆




 《聖女レイン視点》


 ここはわたしのための世界だ。


「聖女召喚に成功したぞ!」


 おぉ……! と揺れるその場の空気。

 石のぼこぼことした床に淡く光る魔法陣。

 辺りを見渡しても、ぐるりと人に囲まれていてその先がわからない。

 冷たい地べたにわたしが放って置かれるほど、周囲の大人たちは浮かれている様子だった。


「ようこそいらっしゃいました。ささ、こちらへどうぞ。

 これからのことをご説明いたしましょう」


 なんだか見たことがあるような神官服に身を包んだしわしわのおじいさんが、わたしの手を取る。

 それからきれいな西洋風の部屋に通され、わたしも同じようなデザインの白い服に袖を通した。


「……え、うそ!」


 用意された鏡に映っていたのは、ゲームのパッケージにいたあのヒロインだった。

 わたしは浮かれた。

 普通の女子高生だったわたしが、可愛いヒロインになれたんだから。


 そしておじいさんが最初に言ったように、その後はひたすら説明を受けた。

 この世界のこと。この国のこと。


 しかし、次第に怖くなってきた。


「──魔王が、いない?」

「はい。魔族と盟約が結ばれたため、特にここ十数年は平和そのものなのです。

 ……それがどうかされましたか?」


 ゲームでは、魔王を倒すために聖女召喚が行われていた。

 しかし今は、平和の象徴として神殿に仕えろと言われている。

 魔王を倒すんじゃないの?

  ゲームの展開と違う。

 ……いや、最初は魔王なんていなくて、後々魔王が復活してっていう流れかも。

 覚え違いかな?


「でもその、わたしがいきなり聖女とかは……」

「ああ。それでは学園に通ってみますか?」


 このまま神殿に直行するのだけは避けたかった。

 だから、その前にこの世界の常識を身につけるために学園に通ってはどうかと提案され、わたしは藁にも縋る思いで承諾した。

 よかった。

 これで本編が始まる、と。

 このときは信じて疑わなかった。


 ◆


「カトレア! やっぱりあなたはわたしの味方よね!」


 学園初日。

 クラスメイトの人たちの反応がイマイチだったので困っていたところ。

 カトレアはサポートキャラだし、うまいことわたしを持ち上げて敬ってくれるだろう。

 そう思っていた。

 しかし、カトレアはわたしに味方しなかった。


 ──だったら、役に立たないサポートキャラなんていらない!


 なんか長いスカートにこだわっていたみたいだったし、ちょうどいいかなって思って。

 固定概念をひっくり返してこそヒロインでしょ。

 多幸感に包まれながら、わたしはカトレアを見下ろす。

 真っ青で呆然としている顔。

 そもそもサポートキャラなのにヒロインと同じくらい可愛いの、プレイしてる時から気に食わなかったし。

 なぜか悪役令嬢のラッフィーナと仲が良さげだったけど、ちゃんと仕事しなきゃダメじゃん。ねぇ?

 それからわたしは、前々から決めていた聖地巡礼をして、たくさんの人に会って話をした。


 ◆


 カトレアの行動は、ある程度日数がたっても変わらなかった。

 それにわたしの周りには、中途半端な身分の男かお金は持っているけど平民の男どもしかいない。

 クラスメイトはどこかよそよそしいけど、他のみんながチヤホヤしてくれるから、今はそれで我慢している。

 そんな現状に不満を持っていた、ある日の昼下がり。

 今日はカトレアに近づこうとしても邪魔してくるラッフィーナはいないそうだと、取り巻きの男から聞いた。

 確かめるチャンスだと思って、わたしは急いで中庭に向かう。

 案の定、カトレアは彼女の友人たちと真ん中にあるテーブルで優雅にお茶を飲んでいた。


「あっ、ごめんねカトレア……。うっかり手が滑っちゃった」


 ポットを無造作に掴んで、上からかけてやった。

 またあの間抜けな顔。

 少しだけ溜飲が下がる。

 そして取り巻きたちがわたしをアシストして、「清廉な聖女レインの願いを聞かない傲慢なカトレア」を演出する。

 みんな思ってるだろうなぁ、カトレアが悪いって!


 そんな中、ふと耳に目が行く。

 可愛い。

 紫のピアス。

 わたしの推しの瞳の色みたい。

 そう思った瞬間、わたしはなんの躊躇いもなく、耳からピアスを引き千切っていた。

 知らない女の子の悲鳴が聞こえるけれど、そんな些事は気にしない。

 ピアスがすごくきれいでうっとりしてしまう。

 そんな夢のような心地の中、声が響く。


「私からもお願いします、聖女様。お返しいただけませんか?」


 ──推しが、目の前にいる。

 黒髪にアメジストをはめ込んだような瞳。

 今はオスカー・フェニッツェ子爵令息と名乗っているそうだが、わたしは知っている。

 彼が、王家の落胤であることを。

 全ルートで悪役として最後に殺される運命のラッフィーナ(次期女王)に代わり、王となる人だ。

 確か続編の隠しキャラだったはず。

 こんなところで会えるなんて!

 しかし聞いてみれば、彼はカトレアの婚約者らしい。

 はぁ? 絶対わたしと婚約できたほうがオスカーも幸せだって!


 中庭では逃げられたが、次こそはと気合を入れる。

 その日からわたしはオスカーが行きそうな場所、交友関係、登下校の時間すべてを把握して、そのすべての場面に立ち会った。

 すごい、推しが生きている。

 しかも照れくさそうに手でわたしの視界を遮って。

 たった一言「やめてくれ」だって。

 それでも少しはこっちに視線をくれる。

 だからどんな場所でも、いつでもわたしはオスカーの傍にいた。

 学内はもちろんのこと、さすがに子爵家の前は門前払いされたが、もうすぐで婚約者はカトレアからわたしになるのだから、それまでの我慢だろう。


「はやく婚約破棄されないかなぁ」


 わたしはオスカーが好きで、オスカーもわたしが好き。

 受け身であるのが女の子の特権だと、わたしは王子様の迎えを心待ちにしていた。

 しかし、一ヶ月、二ヶ月経った今。悟った。


 ──あぁ。わたしがいかなきゃ。彼はかっこいいけど、惚れた人へはシャイだから。


 ちょうど、近い内に王城で舞踏会がある。

 始まったときはまだオスカーはカトレアの婚約者だが、すぐにわたしの婚約者になれるからね。

 しかし、わたしはドレスを持っていない。

 なので居候先の神殿の人に、聖女にふさわしいドレスを用意するように頼んでみたが、断られた。

 聖女にお金を使うのはおかしいことではないなのに。

 そう思いつつ、逆に自分でドレスを作って彼に女子力をアピールするチャンスだと思うことにした。

 短い裾のスカートは学内では流行らなかったが、聖女が着るものだし、斬新で新しいと社交界では受け入れられるに違いない。

 その夜からわたしは、一針一針、丁寧に彼のことを思って、薄紫のドレスを縫った。

 だから待っててね、オスカー。








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