成長未遂
真剣に書いた物です
天才が一周すると、度を過ぎた結末を迎える。
薬品に配合された成分の量に問題が生じていた、としか思えない事案だ。
鶏小場の鶏小屋を前にして、養鶏場の主である天石と製薬開発の資格を持つ聖は、困惑した眼差しで空を見詰める。
「誠に……申し訳ありま……せん。
製産したあの薬品……失敗、でした……」
聖は青ざめた様子で天石に謝罪するが、とてもではないが彼を直視出来ずにいる。
鶏小屋の金網の向こう側に見える『抗えない結末』はどうにも変えられず、ただ抱いていた夢を打ち砕くだけ。
「聖さん……には責任はあり……ません。
私が雛……鳥たちの世話を……怠ろうとしたから、こんな結末……を招いたんです」
彼らは後悔するが、今さら元には戻せない。
雛鳥たちを自然に成長するよう、手順をとばした愚行の結末。
事の始まりは二週間前、養鶏場の経営が悪化していく中で無数の雛鳥を早く成長させようと考え、天石は、成長に携わる薬品を開発している聖にその件について依頼を送ったのだ。
「雛鳥……ではない鶏では売買など出来ません。
ですので、慰謝料をお支払い……」
「ですが、聖さんの研究室でも、赤字状態だ……と耳にしました。
こんな結末になったのは……こちらが安易に物事を考え……」
声が震える。
雛鳥たちの成長を急がせ過ぎた事に未来を悲観し、なす術がない。
彼らに在るのは、暗い人生だけ……。
「アレアレ、あの養鶏場じゃね⁉」
「間違いないっしょ‼」
「SNSにあげられてた動画とおんなじ‼」
「すいやせええん‼
ここ、『平和養鶏場』っすかあ⁉」
暗い人生だけではないらしい。
何人かの軽薄な感じがする若者が現れ、養鶏場の門から顔を覗かせていたのだ。
「え……そう、ですが……あなた方は?」
急な展開に彼らは感情に困り、心が調節出来ずにいる。
「入らせて貰えませんかあ⁉」
若者グループは一見軽い気配は在るが、礼儀が行き届いている。
「今、門を開けます」
「あ……開門、手伝います」
「すみません、お願いします」
門は重く、いつもは養鶏場のスタッフ数人で開けているが、この日は臨時休業でスタッフは、経営している天石のみ。
二人で開門、若者グループが一人一人会釈し中へと足を踏み入れてくる。
「突然、すいやせん」
「どもです」
「ちょりいす‼」
面識の無い若者グループを目にして、天石も聖も言葉が出てこない。
「あの……どんな御用で……」
天石が云いかけた時……。
「ええっ⁉
うっそ‼
可愛い‼」
「マジでいた、『とさかひなあ』‼
可愛すぎて、草‼」
「あり得ねえんだけど、マジ可愛い‼」
「あの、この『とさかひな』、ウチのタレントペット事務所『マジカワ』に引き取らせてくれませんか?
あ……ウチってかワタクシ共、こういう者です」
軽薄な男性は丁寧に名刺を渡す。
名刺を受けた天石もまた、自身の名刺を渡した。
その側でも、別の若者が聖に名刺を渡して、存在を主張している。
「こちらの養鶏場にいる鶏たちの成長不足故、経営負担が生じていると噂を受けました」
名刺にはタレントペット事務所の名称と、社長らしい、彼の名前が記されている。
『元木拓』
話し方が変貌したうえ、名前も立派だ。
「しかしですね……この雛鳥と云うのでしょうか……は全てこのように頭に『とさか』が生えていまして……」
養鶏場の雛鳥には、どれも『とさか』が付いているのだ。
ヒヨコの頭に『とさか』。
「そこが良いのです‼
このマジで可愛い『とさかひな』を是非ウチに任せてくれませんか⁉
出演料は全て、そちらへお支払い致します‼
この子たちをレンタル形式で、テレビ出演させて頂く形でも構いません‼」
「「「お願いしやっす♪」」」
数週間して、『とさかひな』たちは今やテレビ、ラジオ、ステージで人気鶏となっていた。
天石が経営している養鶏場は現在黒字が続いており、聖の研究室では、『とさかひな』に成長する薬品の生産依頼を受けたおかげでスタッフが増量されていた。
「天石さん、人生……何が起きるか分かりませんね」
「まさか、まさかです。
聖さんには感謝、感謝ですよ」
彼らの人生には、希望が溢れている。
ふざけてなどいません
決して
ふざけてなど……




