表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/9

第5話:四馬鹿会議、地獄の共演

 〜極秘報告書 抜粋:セルフデストリクト王国・潜入観察記録(第5日)〜

 提出者:第七特務諜報部・観測官クロウ

 記録時刻:午前06:15〜午後21:00


 ◼︎ 起床直後の限界

 目覚めた瞬間、呻き声が漏れた。

 悪夢を見ていた……のではない。

 現実が悪夢だった。


 喉は渇き、胃は痛み、目の奥がズキズキと軋む。

 どうやら私は、「セルフデストリクト王国性精神崩壊症候群」の初期症状を発症したらしい。

 本日の手帳には、こう記した。


「サボりたい。本気で、全力で、職務を放棄したい。」


 しかし任務は任務。

 そして——地獄の招待状が届いた。


「本日、四大中枢人物による合同政務会議を開催します」


 ……今日は死ぬかもしれない。


 ◼︎ 会議開始:災厄、集う

 会場:王城・第零会議室(旧宝物庫、現在は焼け跡)

 参加者:この国を構成する“災厄の中枢”


 王・エルダン五世(優しさという毒)


 将軍・デガルド(筋肉の暴走)


 令嬢・アリア(美を語る死)


 商人・ガイル(合法の地獄)


 心の中の誰かが囁く。


「今ならまだ逃げられる」


 私は、その声を無視したことを後悔する。


 ◼︎ 地獄の会議ログ(要約)

 議題:「国家財政の立て直し」


 王「みんなの意見を聞いて……よきに計らえ、かのう?」

 将軍「財政とは体幹だ! バーピー100回で経済も鍛える!!」

 令嬢「空の国庫?  燃やせばいいわ。灰にすれば等価交換、美しいでしょ?」

 商人「じゃ、“絶望フェス2025”やろう。参加費は魂で。あとパッケージ販売も検討だな」


 クロウ(心の声):


「これは……悪魔合唱団の公開自爆会議か……?」


 ◼︎ 暴走する四人

 王 → 眠そうに「明日でいいかの」と言い残し、即寝

 将軍 → 地図が読めず「敵はこの部屋だッ!」とテーブルに突撃

 令嬢 → 倒れた机に火を点けて「即席インスタレーション」

 商人 → その燃える灰を回収し「国家遺産灰キャンドル」として物販開始


 クロウ(再度):


「帰りたい。帰りたい。帰りたい。」


 ◼︎ 突如の癒し:焼き芋

 ……そんな地獄に、突如香る——焼き芋。


 扉が開き、現れたのは、かの老婆。

 第一話に登場した“焼き芋の賢者”である。


「はいはい、うるさくしてないで、焼けた芋食べな」


 すると——

 アリアが黙った。

 ガイルが物販を止めた。

 将軍が座った。

 王が目を覚ました。


 そして老婆はこう締めくくった。

「芋は熱いうちに食べな。会議? 明日でいいよ、明日で。」


 王「……そうじゃのう。わし、芋が食べたい」

 会議、終了。


 ◼︎ 観測者コメント(第5日 締結)

 この国の政を支えているのは、権力でも制度でも知性でもない。

 焼き芋だ。


 混沌を黙らせる香りと、暴走を止める老婆。

 私は理解した。

 この国最強の政治力は、焼き芋である。


 本日の記録は、ただ一言で締めよう。


「芋は、偉大。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ