お引越し!
いつも歩く通学路はなぜか淋しさを感じるものであった。草木が枯れているのもあるが、レンの心情的なものの要因が大きいようにも思えた。
町に到着し、レンは自宅に帰ろうとリコの方へと向くとリコはぴったりと後ろについていた。レンは思わず驚き跳び上がった。
「ど、どうしてそんなにぴったりにくっついているの?」
「どうしてと言われましても、一緒に家に帰るのではないのですか?」
「え、今日から同棲するの?」
そう尋ねるとリコは自信を持った表情で頷く。レンは口に手を当てて少し考える。何かを思いついたのか、レンはリコの顔を見る。
「今日から、開業にむけて準備をしよう。それでだ、オレは今の家を片付けてリコさんの家に住みます。」
「はい、私もお手伝いしますよ?最初で最後のレン君のおうちに行くんですから。」
レンは恥ずかしくなったのか、頭を掻きながらリコと手をつなぎ、家に向かう。レンの家は大きな家の部屋の一つであり、それぞれの部屋は共有の廊下を通らなければ入ることができない。扉を開けて、真っ暗な部屋に入る。
「お邪魔します。」
リコは恐る恐る入ると、リコは驚く。
レンの部屋には魔道具の整備キットはあるが、一から生成するような大きな魔道具がなく、おまけに部屋にはほとんど家具がない。あるのは服をかけるものと、調理道具、数冊の本とレンが乗っても収まる大きいクッション、そして部屋の角に置いてあるボロボロな柱のような謎を呼ぶ置物だった。
「ま、毎日ベッドで寝かせてあげますからね?安心してくださいね?」
「そ、それは……毎日ほしい……ってことですか?」
「そ、そういうわけでは……!あ、あのボロボロの柱は何ですか?」
リコが話題を変えるために気になるものを指差した。レンは指をさした先にある柱を見る。レンはポンと手を打ちリコの両手を持つ。
「オレ、猫族だから爪を研ぐんだけど、ああやって柱がないと家がボロボロになるんだ!持って行ってもいいよね?」
「そういうものだったのですね。訓練用かと思っていましたが、別に持って行っても構いませんよ。」
それを聞いたレンは安心したように収納カバンに柱を突っ込んだ。他種族の番はお互いの特性を理解していないと成り立たないため交渉が必要である。
レンは普通のカバンに魔道具のキットや、魔石、衣服を詰め込む。調理器具はほとんどがボロボロだったのでゴミとして集積所に出し、他の家財道具も同様に運び出す。
何もなくなった部屋をリコが風の精霊魔法と水の精霊魔法を呼び出して床と壁をきれいにしていった。片づけが終わったので大家に挨拶をして鍵を返す。荷物を持ち、サクラの家に行き、荷物を広げる。
「本当にレン君は荷物が少ないので引っ越し屋いらずですね。」
「魔道具キットはこっちの部屋で、爪とぎ柱は玄関の前においてもいいかな?」
リコは頷いて、本を片付ける。手書きの古文書を見つけ、ついつい中身を見てしまう。しばらくすると片づけの終わったレンがこっそりと近づいて、後ろから抱きつく。リコは思わずびっくりして硬直した。
「なーにをしてるのかな?」
「れ、レン君!?じ、実はこの古文書を読んでまして……。」
その古文書はレンがルナティクスを作った時に図書館の司書にもらったものだった。レンも懐かしくなり、リコと一緒に見る。すべて読み切った後、レンとリコは目を合わせてニヤリと笑う。
「二人でさ……オーパーツやアーティファクトを再現して、売っていくのはどう思う?」
「はい、私も同じことを思っていました。普通の魔道具もですが、戦闘用も作って、納品していくと安定もしそうですね。」
二人の魔道具屋の経営方針が決まり、本を片付けて、食事をとる。風呂に向かって歩き、着ていた服を脱ぎ、洗濯の魔道具に放り込む。浴場は相変わらずの広さであり、二人はお互いの体を洗いあう。きれいになった体で湯船につかると無意識に息が漏れる。
リコは髪をタオルで巻き上げていたので、横顔がよく見える。目を凝らしてみると頬の毛色に赤い部分が見えかかっていたが、毛の色が一部違うことはよくあることなので気にしないでいた。お風呂から上がるとリコの風魔法で水気をすべて飛ばし、ふわふわの毛になった気がした。
二人は寝室に入り、関所の宿屋の時のようにリコが毛づくろいをしてくれるようだった。しっかり整えられた毛並みで同じ布団に入る。レンとリコは口づけをし、肌を重ねる。だんだんお互いの息が荒くなり身体を弄る。初夜と違い、繁殖期ではないため、本能に意識は取られることはなく、お互いが意識ある状態でお互いを求めあい、とても濃密な夜となった。
日付が変わり、彼らは学生を終え、成人したのであった。
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