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卒業試験の報告!

 三人は緊張した顔で、学園長室の大扉を開く。そこには執務中のふくが机に向かっていた。ふくはレン達が入ってくるのを確認すると直ぐに作業を止め、歩いてレンたちの前に立つ。

 レンは緊張し、震える手で報告書を手渡す。それを受け取るとふくは悪戯っぽく手を口に当てて上目遣いでレンを見る。


「わしが美しゅうて、緊張でもしておるのか?」


「あ、えっと……」


 レンがたじろいでいると耳元まで顔を持ってきて、ささやく。


「わしならもっと具合がいいかもしれんぞ?」


 レンはボンっと尻尾が膨らんで、後ずさりする。ケラケラとふくは笑い、レンの鼻に指をツンと当てる。


「冗談に決まっておろう。報告書はあとで目を通しておく。」

 

 そういうと、歩きながらパラパラとめくり内容を確認しながら、机に報告書を置く。

 代わりに長方形の小箱を取り出し、レンたちの前で開けた。中身は指輪であり、魔法技術士の認定の証である指輪だった。


「実はの、お前たちの卒業試験は合格がすでに決まっておるのじゃ。それでこの指輪の授与を行うとしよう。まずはレン。」


 レンは呼ばれると、ふくの前に立つように指で指示された。緊張してふくの前に立つと、右手の親指に指輪を嵌められた。ふくは満足そうな笑みを浮かべ、レンを見る。


「レン。お前はこの一年本当によく頑張った。よく中等級の魔力量でここまでの成績を残したことにはわしも驚きじゃ。お前の発明してきた魔道具は常に一定の成果を上げておる。この学園始まって以来の優秀な生徒じゃ。もっと胸を張るといい。お前は卒業したら、確か店を開くのであったな?」


 レンはそう尋ねられたので頷く。するとふくは嬉しそうな笑みを浮かべていた。


「ふむふむ。お前の技術はあのポチおと肩を並べられるじゃろう。今後のこの国の発展にどうか手を貸してもらえると助かるの。」


「もちろんです!もっと腕を磨いて、みんな笑顔になれるもの作っていきます!」


「その意気じゃ。調査隊の選抜が行われる時期になったら、お前の技術は必要になるじゃろう、頼んだぞ。……じゃが、お前は魔力が少ないのじゃから無理をすることは禁ずる。死なれては困るからの。」


 そういうとふくはレンの頭に両腕を伸ばし、そのまま抱きしめられた。レンは一瞬何が起こったかわからなかったが、ふくの胸の谷間に埋められているのが理解できた。

 リコの胸とはサイズが全然違い、密着しすぎて呼吸ができなかった。直ぐに開放はされたものの、レンはその場にへたり込んだ。どうやら思考がショートしているような状態である。

 そんなレンをよそに、サクラを呼ぶ。サクラも緊張した表情でふくの前に立つと、レンと同じように右手の親指に指輪がはめられる。


「サクラよ。お前はこの一年でよくたくさんの魔法について知識を身に着けたの。とくにじゃじゃとの決戦。【万雷】を放出に使うだけでなく、自身に纏わせることで身体能力が上がることによく気が付いた。それと、魔道具の使い方にかなり慣れておるようじゃの。宮廷魔術院は魔道具を使う機会が多いが修理や調整できるものがおらん。お前が行ってくれることで、めえの負担も大方軽くなるじゃろう。頼むぞ?」


「は、はい!全力で宮廷魔術師として従事させていただきます!」


「そうじゃ、もし伴侶が欲しくなったらいつでも言うとよい。良い者がおれば付き人からでも紹介してやろう。」


 ケラケラ笑いながらサクラに近づきレンと同じように抱きしめた。解放されたころ、サクラは鼻血が出ているのか鼻を押さえていた。

 最後にリコが呼ばれ、ふくの元へ行く。リコは他の二人と違い緊張せずに対面した。


「リコ。お前は入学して一年間、一度もその玉座から陥落しなかった最高の生徒じゃ。歴代の生徒の中でもこの成績は最高じゃ、誇るといい。わしは今でも惜しいと思っとるが、お前はやはり王族の付き人になる気はおきんか?」


「私に王族の付き人はできません。私は自分勝手で、大好きな人を最優先に行動する……そんなヒトですから。」


「そこまではっきりと言わんでものぅ。そんなことより、前から考えておったのじゃが、ぼるふと話し合って、お前に月一度城へ来てもらいたいのじゃ。もちろんその時はレンとサクラお前たちも一緒に来てもらっても構わん。」


「城で何かするのでしょうか?」


「うむ。調査隊を編成するのにリコの召喚術は必要になる。精霊の声を聞けるものは玉藻とお前だけじゃ。しかしの、今のままでは力が不足しておる。それを補うための稽古じゃ。それなら、よいじゃろ?」


「はい、そういうことなら喜んで引き受けます。」


 リコも同じようにふくに抱きしめられた。ふくはリコの右手の親指に指輪をつけると、小箱を机の上に置く。


「さて、これでお前たちの学園でのすべての課程を修了したことをわしが認める。……あまり気乗りはせんが、ぼるふの奴がお前たちは成績優秀じゃから、『豊穣の儀』に参列せぬか?と聞いておる。」


「わ、私たちも『豊穣の儀』に参加するのですか!?」


 サクラが驚いて訊ねるとふくは首を横に振り否定する。


「お前たちはわしらの魔法を間近で見ることができるということじゃ。つまらんじゃろう?」


「そ、そんなことないですよ!誰も見たことないので見に行きたいです!」


「私も同じくです。」


「あ、アタシも見たいです!」


「そうじゃろう、つまらんから見たくない——。なんでじゃ……わしは……嫌なのにのぅ。」


 ふくは思っていた答えが返ってこず、床に崩れ落ちていった。頭をポリポリ掻きながら立ち上がる。


「もういいのじゃ!また時間についてはめえに伝えさせる。わしは仕事をする!」


 そういうと執務作業へ戻っていった。機嫌が悪くなったふくをこれ以上怒らせまいと、学園長室から出ようとすると呼び止められる。


「そうじゃ、お前たち」


 そう呼ばれ、振り返ると、見たもの全員がときめくような笑顔のふくが祝福の言葉を放つ。


「卒業、おめでとう。お前たち、大好きじゃよ。」


 そういうと、再び執務作業へと戻っていった。三人は深々とお辞儀をして学園長室を出た。

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