まだまだ発展途上!
「レン君、この石の魔法を放ってみてもらっていいですか?私が使っても自前の方が優先されるので……。」
「これって、いったいどんな魔法が入っているの?」
「この中には風の鎧の魔法が入っています。この前使ったあの魔法です。」
「なるほど。」
レンは納得すると石を持ち魔力を込め、詠唱を始めた。初めて使う魔法だがレンの頭の中に詠唱呪文が聞こえてくる。それらを拾い上げて組み合わせていく。
「『風の精霊よ、わが魂の声を聞き給え。彼のものに風の鎧を纏わせよ。』」
(詠唱補助もしっかりと機能していますね……。)
窓を閉じていても部室に風が巻き起こり、レンの体に風が集まった。しかし、その風は鎧を形成することなくだんだん弱まり、集まっていた風は霧散していった。
何が起こったのかわからなかった二人は目を合わせていると「パキッ」という音が鳴った。手で握りしめていた石が粉々に砕け散っていた。レンは特に怪力ではないので握っただけでは石を破壊できない。
魔法の容量が大きいのか、発動の手順を間違えたのか不明ではあるが、何らかの原因で割れたと考えられる。
「どうしてでしょうか……確実にできていたはずなのに……。」
「炎の魔法は発動できたけどなぁ……。」
「……あ、ごめんなさい。レン君の成果物を壊してしまいました。」
「あ、大丈夫。作り方はわかっているから複製できると思う。」
「できたらまたいくつか譲ってもらえますか?」
「うん、量産できるようにしてみるよ!」
二人はそれぞれの作品製作に着手していった。
レンは石の製作をしていたが、先ほどは偶然だったのか失敗が続き、七十回ほど失敗してようやく一個生成できた。さすがに今朝からやっていると若くても疲れるものは疲れる。
「ふう……やっと一個できた。何か条件があるのかな……?」
もう少し作ろうとカバンを見ると魔石は一つしかなかった。それを見てレンは今日の実験を諦めることにした。
リコのいるほうが気になり、隣の実験室に向かうとリコは円盤状の魔道具を作っていた。その円盤には一般的に作られている魔道具と同じような製法で作られており、魔力で紋章が刻印されていた。
一般的な魔道具の作り方はとても簡単で、魔法を封印したい物質に魔力で物質を削り、紋章を刻印する。ただそれだけで魔法の封印ができる。その時にどれだけ詳細にかつ、どれほどの魔力が込められているか、どれだけ強い物質でできているかで性能が変わる。極端なことを言えばその辺の石ころにも紋章さえ刻印できれば魔法は封印できる。しかし、一度でも魔道具化すると使い切って壊れるまで形の変形はできないという制約が存在するので、魔法技術士は使いやすい形にこだわる。
リコは正円形円盤に紋章を描いていたが、おそらく紋章の形が特別なことがない限りは紋章が円を描いていることに起因するものだといえる。
その魔道具にリコの魔力を流すと円盤は淡く碧く輝いた。しかし、魔法は発動することなく円盤が割れた。
「リコさん。そろそろ帰りませんか?」
「……。いえ、私はまだ続けるのでレン君は先に帰ってください。」
「……無理しないでね。」
リコはうなずくと再び製作を始めた。レンは彼女が作業に戻るのを確認して部室を後にした。レンは一人で帰路についていたが、彼女が隣にいない帰り道はとても寂しいと感じて、走って家に帰った。
翌日、昨日授業に出ていなかったのでレンは担任のサムにこっぴどく叱られた。補習授業を受けさせられ、その内容は早く部活に行きたいという感情に駆られてほとんど頭に入らなかった。
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