決着がついた!
光が収まると、カレンは球体の結界の中に閉じ込められていた。めえが【障壁】【守護】【減衰】の三つの魔法を複合させた極限魔法【絶壁】を発動し、じゃじゃを守っていた。
ゆっくりと地面に下ろし、魔法を解くと、つかつかとカレンの方へ歩み寄る。
ゴスッという音と共にカレンは頭から地面に埋められていた。
「うわーん!!めえ様!ごめんなさいですってばー!!」
「誰が生徒相手に【自動】を使って相手をしているんだ!一歩間違えれば生徒が死ぬところだったのだぞ!」
「だ、だって……あの子たち超強いから楽しくなってつい……。」
「ほう……そんなに本気の相手をしてほしいのなら私が現実を思い知らせてやろうか?」
カレンは直立不動……というより頭が埋まっている状態で手足を伸ばしているので倒立不動が正しいのかはわからないが、それ以上しゃべることはなくなった。
そんな彼女を放ってめえは走ってレンたちのもとへ行く。サクラは意識があるが全身の痛みから耐えている状態であったので、サクラの治療を優先した。
レンとリコを後回しにしたのは、既にふくがレプレを連れてきており、容体を見ていたため後回しにした。サクラの体に手を触れ確認すると彼女が痛みのあまり声にならない悲鳴を上げる。巻物を七つ、肩掛けカバンから取り出し、巻物をすべて広げた。
「サクラ、お前は何という無茶を……。全身の筋繊維がほとんど千切れているな。『治癒の力よ、彼の者のけがを癒し、すべてを治せ。』」
サクラに八つの紋章が浮かび光に包まれる。それは【治癒】の魔法をレンの【重撃】のように重ね合わせて行うことで治癒力を最大限発揮できるように疑似的にしたものだ。
治療が終わり、サクラは立ち上がることができるようになった。
「サクラ、すまないが怪我がひどく【治癒】を使わせてもらった。」
めえはそう告げると深々と頭を下げる。
「い、いえ……おかげで歩けるようになれたので先生は謝らないでください。」
サクラは慌ててめえの行為を辞めさせようとしたが、彼女は意志が固いようである。
「レン君とリコちゃんは!?」
サクラがそういうとめえもハッとした表情に変わり、急いで二人のもとへと向かう。
月兎の姿ではなく、ただの兎族の姿をしたレプレが立っており、めえは事の重大さを想定する。
はやる気持ちを抑えてレプレに二人のことを訊く。
「うさ子!二人の容体は!?」
「大丈夫。普通の魔力切れだったよ!一応前もってもらっていた魔石で【回帰】を使って二人は死なないよ。猫くんは早いうちに回復するだろうけど、狐ちゃんは少し回復が遅いから安静にした方が良いかも!あと、わたしの名前はレプレだって!」
「そんなことはどうでもいい。早く彼らを保健室に——」
突如白い光がレンとリコの前に現れた。その魔力の密度からめえとレプレは動けなくなった。めえとレプレの魔力はリコより多い。魔力だけで動きを制限される程の力がこの白い光にあるという。
二人のそばに居たふくは腕を組んで眉間にシワを寄せ、牙を剥き出しにして白い光に近づく。めえがふくの姿をみて戦慄する。
(まずい……。ふく様が怒っている……!)
「くそじじい。貴様は何しに来たのじゃ?ここを誰の国と心得ておる?」
——精霊王に向かって『くそじじい』とは何たる非礼だ。相も変わらず躾のなっていない女狐よ。
白い光とふくの間にバチバチと火花が散る。何も知らないヴォルフが到着し、白い光を見て何かに気づく。
「変な魔力がすると思ったら精霊のじじいじゃねえか。何しに来たんだ?」
——神狼フェンリルか。何をしに来たというよりも、その二人が我を呼び出したのだ。我が子供の元素精霊を介してな。
「あぁ、そういうことか。ふく、もう怖い顔しなくていい。こいつ、あの二人に呼ばれたんだってよ。」
「そんなこと紋章見ればわかっておるわ。昔みたいに茶々入れてくるかと思っておったのじゃ。はよ、去ね」
そういうと後ろに振り返り、そっぽ向いてしまった。すると、【転移】の光がヴォルフの前に現れる。光の中からはたまが出てきた。周囲を見渡し、白い光を見つけると歩いて近づく。
「これは……。精霊王様ですね?お久しぶりです。今日はどのようなご用件で?」
「あ、それはこいつらが呼び出したから来たんだってよ。」
ヴォルフは倒れこんでいるレンとリコに指をさして説明をする。
「そうですか……。精霊王様を呼ぶほどの力があるとは思えなかったのですが……。あ!精霊王様、立ち話もなんですから私の家に来て一服しませんか?」
——ほう、玉藻か。時が経って美人になったの。どれ、お前の精霊にも会うとしようかの。
「はよ帰れ、くそじじい。」
「お、お母さま!もぅ!精霊王様申し訳ありません。母が不機嫌ですので早めに【転移】いたします。」
——フェンリルよ。あの二人にもっと精進せよと伝えてくれると助かる。
ヴォルフはにやりと笑って頷いた。たまと精霊王は光に包まれて姿をくらました。その後ろでふくは舌を出していた。動けるようになっためえとレプレはホッと息をついて、二人を運ぶ準備をする。
カレン相手に全力を出させていたが、レン達は勝つ事はできなかった。
めえはレンを背負いながら、笑みを浮かべる。
「お前達は最強の剣士をあと一歩まで追い詰めたんだ、胸を張って卒業するといい……!」
「そうだね、カレンちゃんが苦戦したのって新人類のヒトだからだもんね。そう思うと、この三人組はとっても強いんじゃないかな?」
めえはレプレの意見に頷いて、口を開く。
「ふく様と私の自慢の生徒だ。当然だろう。」
二人は保健室へと急いで向かった。
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