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カレンの魔法!

 予想以上に速い攻撃にカレンは防御が間に合わないと判断し、サクラの袈裟切りに逆らわず、跳んで体を回転させて受け流す。常人ではありえない回避の方法ではあるが、カレンの身体能力がそれを可能にし、反撃へと転じる。


「すごいけど、まだまだ!」


 サクラの防御していない右わき腹に向けて鋭い一撃を押し込む。

 しかしそれは、レンに上から拳が振り下ろされ、聖剣は軌道を変えられて地面に刺さる。手甲型の魔道具であり、付与術が込められているため力で強引に軌道をそらすことが可能であったが、出力オーバーしたためかバラバラにはじけた。

 レンはそれに動じず、カレンの鎧を蹴って後ろに下がると、奥からリコの姿が見える。


「『炎の精霊、サラマンダーよ。彼の者を打ち抜く火の矢を放て!』」


 魔法を発動すると、音と同じ速さの炎の矢が飛んでいく。サクラはそれに合わせて、斬りつけに行く。炎の矢が着弾する寸前に飛び上がり詠唱を始める。


「『風の精霊様。私の力を使い、この魔道具を昇華させよ!』」


 ルナティクスに【重撃】が練りこまれているので、普段しないサクラでも複合魔法を完成させた。炎の矢を正面と死角からの攻撃も捌ききると、上空のサクラに対しカレンはニッと笑う。

 そして頭上で剣を一回転させ、逆手に持った。


「『聖剣の力よ、その力を存分に開放せよ。』」


 詠唱を終えると、後ろ髪を聖剣で切る。髪は聖剣の中に光に包まれながら取り込まれていった。カレンの魔力量が一気に跳ね上がる。


 ☆

 

 魔力が引き上げられたじゃじゃを見てポチおは思わず塀に乗り出す。


「おいおい!?ありゃ止めないと不味いぞ!」


「じゃじゃさん、本気になっちゃった!」


「ほう……あやつ、うちの生徒に追い詰められておるのぅ。」


「いやいや、ああなったじゃじゃ馬は止まらないんじゃないか?逆にあいつらが詰み始めたな。」


 ふくは不機嫌そうな顔をして腕を組んで、ヴォルフを睨む。ヴォルフはどさくさに紛れてキスをしようとすると鼻をかまれそうになる。ふく牙をガチガチと鳴らして威嚇する。

 

「くそ犬。お前はどっちの味方じゃ?」


「いや、俺はいつでもふくの味方だし……。」


「なら、あやつらを応援せい。」


 ふくはヴォルフの尻をビターンと叩き、レンたちを見た。「いてて」と尻を撫でながらヴォルフも試合を眺めることにした。


 ☆

 

 サクラは急に魔力の総量が増えたカレンに驚いていたが、それでも攻撃態勢を止めなかった。それは相手が急変わり対応ができないからではなく、攻めることで相手に手番を回させないためである。

 岩槍がサクラの足元付近に飛んでくるのが見えていた。リコが足場用に飛ばしたものであると理解し、体を回転させて岩槍に逆さまになって乗り、足場にしてカレンに高速で接近する。

 兜割の要領で斬り抜き、地面に着地した瞬間、間合いぎりぎりまで離れて、横薙ぎで一閃する。カレンは顔色一つも変えず、それぞれの一撃に【重撃】が複数乗っていた【斬撃】をすべて処理する。

 

「見えないはず一撃なのに……。——!」


 サクラは冷たいものを感じ、飛び退いた。サクラがいたところは地面が切り刻まれていた。直撃したら確実に四肢が吹き飛ぶ威力と位置であった。


「サクラさん!大丈夫!?」


「あの状態はいったい何なのでしょうか……。」


「ごめん。暴走はしなかったからいいんだけど、騎士団長に一撃も入れられなかった……。」


 レンは今まで陽気な戦闘を楽しんでいたはずのカレンは、目から光を失い、戦闘に特化した性格に変貌した彼女に恐怖心を覚える。

 横目でめえを見ると、魔力を昂らせており、いつでも止められるような態勢であることが分かり、レンはカレンをまっすぐ見る。

 

「二人とも聞いてくれ。オレとリコさんはできるか分からないけど、精霊王を呼ぶ。サクラさんはこのルナティクスを使って【万雷】を魔道具に纏わせて、時間を稼いでくれる?」


 サクラはルナティクスを受け取ると、小悪魔的な笑顔になり、手を後ろに組んでレンに迫る。


「女の子に前衛させるんだから……。あとで何か見返りはあるんでしょうね?にしし。」


 そう軽口をたたくと深呼吸をしてルナティクスに魔力を込めた。

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