極限魔法【煉獄】!
リコはそれを受け取ると驚いていた。
【風化】魔法。
年月による劣化を無理やり引き起こす魔法。時間魔法とは違い、風化現象を引き起こさせる魔法であり超高等魔法なのだ。ドラゴンはその紋章を見て、危機感を感じたのか咆哮を放つ。
しかしそれは、レンの魔法【重撃】の特異な能力と精霊たちが崩すことを許さなかった。
「覚悟してください。『すべてを砂に返す、その力よ。彼の者の鎧を砂と風により効力を失わせ、その輝きを消さん。そして、すべてを砂塵と化せ。』」
リコは詠唱を終え、【風化】魔法を発動させた。砂と風がドラゴンを包み込み、それを振り払わんと暴れだす。しかし、精霊とリコの連携で逃がすことを許さず、範囲内に閉じ込める。サクラが前に出てルナティクスを六つ投げて詠唱を始めた。
「『守護の力よ、その力でわれらを守り給え!』」
ドラゴンに結界が張られる。レンはサクラの突然の行動に驚いていた。【守護】を自分たちに使わず、ドラゴンに使っていたためである。何も知らないレンには突然の裏切り行為に見える。
「はぁはぁ……、サ……クラさん……!なんで……!?」
「ドラゴンを結界の中に閉じ込めてるだけ!アタシたちの攻撃はドラゴンに当たるから心配しないで!」
レンは【守護】魔法で閉じ込める使い方は知らない。普通はそんな使い方をしないから。サクラは逃げようとするドラゴンに対して結界を使って閉じ込めるのはその場で思いついたものである。
サクラの機転のおかげでドラゴンは結界に阻まれ身動きが取れていない。実際にその効果を見て、そういう魔法の使い方があるのだと実感した。サクラは深呼吸をし、魔力を昂らせた。
杖に魔力を集中し、ドラゴンへと狙いを定めた。サクラの魔力が極限まで圧縮して、ルナティクスの輝きよりさらに強かった。【風化】魔法の効果が切れる瞬間、大砲のような魔力弾がドラゴンを打ち抜く。腹部に大穴が開き、誰が見ても致命傷であることを理解する。
しかし、ドラゴンは違った。それだけの損傷を受けてなお上空へと飛び上がる。
自然の魔力がドラゴンへと集中する。大量の血液をまき散らしながらもどんどん高度を上げていく。そして、リコの射程圏外まで外れると、超高濃度の魔力を発し始めた。
リコとサクラは直感で魔法を組み上げる。リコは三人を巨大な水塊で包み、サクラはその内側で【守護】魔法を展開する。レンは残りの力を振り絞り、二人と手を繋ぎ、リンクし、【重撃】で魔法を強力にする。
そして『それ』はついに放たれた。ドラゴンから放たれるには明らかに小さい光球。しかしそれは【太陽】のようにまばゆく輝き、水の中からでもよく見える。自然落下する『それ』は速さがなく、油断しそうになったが、超高密度の魔力が三人の警戒に引っかかっているため魔法の強度を上げていく。
『それ』が地上に到達すると、音もなく爆ぜる。竜族の切り札、極限魔法【煉獄】。温暖な気候に住む竜族が与えられている魔法であり、命の危機を感じたとき、強敵と相対したとき、気まぐれで町を壊すとき、様々な状況で使ってくる。自然の魔力を取り込むことができる竜族の専用魔法でその威力は、八千度の高熱を生み出し、学園を全壊させられるほどの範囲を誇る。
前述の通り、自然の魔力を使うので魔力切れの心配はない。欠点といえば、その大きな隙ではあるが、上空を自由に飛べる種族が少なく、飛べる種族ではドラゴンにまず勝てない。従って、飛んで発動すれば欠点はなくなる。
ドラゴンは生まれてこの方この魔法を打たれて、生きていたものは同族以外見たことがない。ドラゴンは勝ちを確信していた。地図が書き換わるほどの威力と範囲。矮小な種族に耐えられるはずもないからだ。魔法の効果が終わり、炎と熱は上昇気流を引き起こし、雪雲を活発化させた。
——忌々しい。氷狼フェンリルの魔法か。しかし、この小さき者たちは中々の腕であった。この儂に風穴を開けるとは……。
雪雲に呻りを上げ睨んでいたが、今の自分では打つ手立てがないと悟り、地上へ降り立つ。着地した瞬間、ドラゴンは驚き、目を見開いた。
——ほほう!儂の【煉獄】を受けてなお、立ち上がる小さき者がおるとは!
ドラゴンの見た先には水の塊があり、中に三人の存在が確認できた。リコは魔法を解くと、反動で地面にたたきつけられた。ほかの二人も同様に地面に投げ出される。
「大丈夫……ですか……!?」
リコは片膝をついた状態で周囲を確認する。サクラは両膝を手で支えながら立ち上がる。
「多分……大丈夫……かな……?」
レンは魔力が枯渇寸前で立ち上がれなくなっていた。
「ぜぇ……ぜぇ……。」
リコは肩で息をしているレンを支え、立ち上がる。レンはゴクリとつばを飲むと血の味がしたが、気にせず決断をした。
「み……んな。オレを……置いて……撤退してくれ……!!」
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