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初めての戦闘訓練!

 レンは剣を振りかぶって走り出した。戦闘訓練なんて経験してないのでとにかくがむしゃらに走った。見た目なんて気にしている場合では無い。そしてレンの袈裟斬りがじゃじゃの首にあたり、鈍い音が響く。レンとじゃじゃの目が合い、彼女は笑みを浮かべた。レンの攻撃は彼女の強靭な肉体には傷はおろか打撲痕すら与えられていなかったのだ。そしてレンは考える間も与えられず競技場の壁まで吹き飛ばされた。背中を打ち付け肺の中の空気が吐き出され、呼吸ができずもがいていた。


(こ……これで手加減……!?)

 

「もうギブアップかい?まだ十秒も経ってないよ!」

 

「ごほっ……や、やり……ます……!」

 

 レンは打ち付けられ、しびれた体に鞭を打ち競技場の周りを走った。次は逃げに徹する作戦に切り替える。三分。三分間しのげば勝ちなのだ。先ほどの攻撃から推察するとカレンへの攻撃は通用しない。ならば耐えしのぐことに集中するだけだった。レンはそう考えて逃げの一手に出たのだ。カレンは競技場を走り回るレンを見て少しガッカリした様子の顔をして剣を頭上に掲げた。そして、何も言わずレンに向けて剣を振った。すると剣風がレンに直撃し、再び壁に激突した。


「げほっ……つ、強すぎる……!」

 

「君の実力はそんなものなのかい?君の魔力は中等級くらいあるでしょ?それ使わなきゃ、ミンチになるよ!」


 レンはカレンの攻撃を思い出した。最初の一撃目いくら腕力が強いとはいえ木剣を傷つけず吹き飛ばせるか。二撃目の剣風も腕力では解決できない。レンの攻撃も魔力で防御すれば効かない。身体の痛みをそっちのけで考える。そして、ある事に気づいて、顔を上げる。

 

「魔力を操って纏わせながら戦うのか……。」

 

 剣に魔力を込め、再びカレンに斬りかかった。今度は生身で受けられることはなく剣で受け止められた。その選択は正解だったようで、カレンの顔に笑みが戻る。


「そうそう、それで正解だよ!でもドラゴンはもっと強いよ。」

 

 受け止めた体勢のまま薙ぎ払い、壁に向けて吹き飛ばした。レンは激突する瞬間体中に魔力を巡らせて軽減した。それでも、ダメージは大きかった。口を切ったのか血の匂いがした。下を向くと壁の一部が壊れて転がっている石が目に入った。それを腰袋にいくつか収め、再び立ち向かった。カレンが横薙ぎの構えをした瞬間、魔力を込めた石を投げた。投げまくった。

 

「わっ!わっ、っとぉ、ほっ!」

 

 大量に投げられたすべての投石を木剣で捌くとレンは懐に潜り込んでおり、居合い抜きの要領で中段切りをカレンの鎧にあてた。乾いた金属の音が響く。カレンは鎧を確認するが、傷一つついていなかった。少し遅れて「どさっ」という音が後方で起きた。音のしたところに目をやると、レンが倒れていた。

 

「おーい、どうしたの?」

 

「じゃじゃよ。あやつは魔力を切らしておる。」

 

「魔力切れ!?え、もしかして……この子は新入学生でまだ戦闘訓練してないの!?」

 

「そうみたいじゃの。おぬしはそのような相手に木剣を使用したとはいえほとんど手加減しとらんじゃろ?相変わらずの戦闘好きじゃのう。とりあえず処置室に連れて行くのじゃ。」


「う……。なんかわるいことしたなぁ。」

 

 そう言ってカレンはレンを抱え司書と共に競技場のそばにある処置室へ向かった。


 レンが目を覚ますと処置室にあるベッドの上にいた。横には兜を脱いでいたカレンがいた。彼女はこんな時でもトレーニングなのか、硬い金属が絡み合ったものを引き千切りそうな力を込めて引っ張っていた。レンが目を覚ましたことに気が付き、それを置いて顔を覗き込む。


「あ、目が覚めた?君はまだ訓練してない子だったのね。知らずに戦わせてゴメンね。」

 

「い、いえ!……オレ、自分の魔力に過信して……。」

 

 レンはカレンの距離が近すぎて緊張し、言葉がたどたどしくなる。そんなことに気づいていないカレンは腕を組んでレンから離れる。

 

「うんうん、最初はそんなものだよ。はい、受け取って?」

 

「ど、どうして!?オレ、負けたのに。」

 

「いいの。だって通りすがりのドラゴンを退治しただけだし、君の成長に期待を込めてプレゼント!」

 

「あ、ありがとうございます!これでリコに……!」


「ふぅん、パートナーのために欲しかったの?」

 

 いたずらっぽい笑みを浮かべ、尋ねるとレンは硬直し、すぐに顔が熱くなった。


「パ、パートナーじゃないです!」

 

「パートナーになるともっと強くなれるのに?青春しなよ。」


「……たぶん、オレじゃ不釣り合いですよ。興味がなさそうですし、オレはただの助手ですし……。」


「でも、君のことを少しは信用しているから助手を頼んでいると思うよ。まあいいや、そろそろ団に帰るとしますか。」


「あ、ドラゴンスケイル……ありがとうございます。」


「どういたしまして。少年、自分の気持ちは相手に伝えないとわからないぞ。」


 そういって部屋を出て行った。一人残されたレンはドラゴンスケイルを見ていた。ベースは緑だが角度によってさまざまな色が反射してくる。曲げても割れず、衝撃にも強く、なにより軽い。鎧にすると頼りになりそうだった。戦いの影響で体が痛み始めたので再び横になった。ふと、カレンが置いた金属の絡み合ったものが目に入る。それは力を込めずとも外せるような仕組みのおもちゃであった。ひん曲がったものを見てレンは苦笑いを浮かべる。そして、頭の中で今後の予定を組み上げようと、目をつむる。


「明日材料を魔道具に突っ込んでみるか……あれを……こうして……それ……から……。」


 レンの意識は深く沈んでいった。初めての戦闘は相手が格上であったこともあったが、惨敗であった。しかし、レンは近衛師団長直々に戦闘をさせてもらうことにより、戦闘時の魔力の使い方を覚えられた。中等級のクラスではまだ戦闘訓練は行われておらず、上等級のクラスや競技系の課外活動と同じ段階で学ぶことができ、彼にとってはものすごい体験となった。


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