魔獣の肉はとても美味しかった!
順調に魔獣を斃しつつ目的地まで向かっていったが、【太陽】が夜を迎えていたので野営をすることにした。サクラは広大な荒野を見渡して何かを探していた。
「この辺に手ごろな洞穴はないかなぁ?」
「それならいらないよ!待っててね……よいしょ。」
レンは収納カバンから野営道具を取り出し、魔力を込めた。するとポチお考案の魔力で開閉されるテントが出来上がった。リコは存在こそ荷造りするときには知っていたが、このように大きなものになると思っていなかった。サクラは驚きのあまり開いた口が塞がらないようで自分の手で口を閉めていた。
「これ、レン君が作ったの……!?」
「うん。ポチおさんのお嫁さんにレシピをもらって作ってみたんだ。あとはこれを中に入れると……完成!」
中では机も完備されており、ちょっとした一部屋住居のような感じだった。寝るところは大きさ上仕方がないが川の字で寝ることになるようだ。
リコは着火剤に火の魔法を放ち、キャンプを開始する。レンは報告書を書くためにテント内に籠っていた。
ついでに今日壊れてしまった魔道具の修理ができるか考えていた。サクラは今日採れた魔獣の肉を一口大に切り、それを数個串に刺して、器に入れていった。
リコは火を焚いて、キャンプの範囲に均等な距離で魔道具を六か所置き、ルナティクスをセットし、中心にも同じ魔道具を置き、詠唱を始めた。
「『守護の力よ、われらに仇なす者から守り給え。』」
白い光がキャンプを包む。【守護】魔法で夜中、魔獣による襲撃を防ぐ結界を張る。
これは魔力が一番高いリコの仕事でもある。魔力量と魔法の強度は比例しているので、レンが魔石を使って発動したところで、リコの十パーセントの強度しかない。
したがって、リコは結界係となる。
離れると魔法が中断するように思うが、そこは魔道具の力で魔法を連続使用させている。魔石を使用して連続発動しているので時々様子を見に行く必要があるが、席を離れられる。一旦、魔道具で発動してしまえばレンでもメンテナンスはできるので交代で見張りすれば寝不足になることはない。サクラはリコの発動した【守護】の魔法を見て、唖然としていた。
「すごく強い結界だね。これならドラゴンでも突破できないんじゃない?」
「レン君の【重撃】の含まれた魔法ですからね。強固ではありますが、さすがにドラゴンには対抗できないかと……。あ、いい匂いしますね。」
「でしょー。これね、夜の町でやってた『やきとり』ってやつを真似してみたんだ。鳥じゃないから何て名前なのかはわからないけど、ニオイで美味しいのが分かるよね。そういえばレン君は?」
「報告書を書いているのでもう少し時間がかかると思います。先に食べておきましょう。」
作業しているレンをおいて二人はやきとりを食べることにした。キャンプの火の脇で炙られている肉から食欲をそそるにおいがする。
リコは思わず涎が出そうになるのを堪え、それを手に取り、塩をかけて食べる。サクラも同じようにして食べる。出来立ての為二人とも口がやけどしないようにハフハフ言いながら食べる。何とか一口を食べきると二人は顔を合わせて笑った。
「おいしいですね。肉もとても柔らかいのに、油ばかりではないので食べやすいです。」
「ほんとにね~。こんなに美味しいなら、見つけ次第肉にしてやろうよ。」
「いいですね。あ、レン君。ご飯美味しいですよ!」
「めっちゃうまそうなにおいする!」
匂いに誘われて出てきたレンはフラフラと席に着席すると、リコは串肉をレンに渡す。三人は火を囲んで食事を行い、もりもりと食べていく。そして串肉は残り一本となり、仁義なき戦いが行われたのだった。
三人は食事が終わり、片づけを済ませるとレンは再び報告書を書きにテントへと戻った。リコとサクラは火を前にして座っていた。ぱちぱちと木が燃える音を聞き、日から伝わる熱を浴びて、体が温まった。その間はずっと沈黙だったのだが、サクラが耐えられなくなり、リコの方へ向いた。
リコは首をかしげてサクラを見る。
「リコちゃん。リコちゃんはどうしてレン君のこと好きになったの?」
突然の質問にびっくりしたのか目をまん丸にしたが、すぐに柔らかい表情になる。吸い込まれるような闇のような空を見つめ、少し目を細めた。
「そうですね、私が好きになったのは実はよくわかってないのです。」
「ほえっ!?じゃ、じゃあどうして、パートナーや番になったの!?」
サクラは身を乗り出してリコに詰め寄る。リコはどうして詰められていたのか戸惑っていたが、言葉足らずであったことに気づいた。
「あ……好きになった時期がわからないのです。もちろんパートナーになったときには既に好きでしたよ?」
「な、なんだぁ……びっくりした。」
ため息をこぼしながら、再び座る。
「特別な感情を持ったのは、おそらくレン君が訓練に失敗して大けがをしているのに部活に出てきた時があったのです。おそらくそのあたりからたぶん好きになった、じゃないかと思います。」
サクラは大けがをしているレンを想像すると、サクラが始めてレンを見たときの記憶がよみがえる。
「そうだったのね……。もしかしたら、アタシも同じ時期にレン君に一目惚れをしてたのかもしれない。アタシは戦闘訓練を近衛師団長としている姿を見て、それで……かな。」
「レン君はかっこよく見えましたか?」
「うーん、なんだろ?諦めないあの姿勢はとてもかっこよかった……のかもしれない。」
サクラは両足を抱えて顔をうずめていた。リコはレンのことを褒められたことに嬉しくなり、耳を垂らして尻尾をバムバムしていた。
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