ついに国外へ突入!
ついに国外へ足を踏み入れたレンたち。
歩けど歩けど赤土の岩の壁、枯れた木、疎らに生えた低い背丈の雑草しか目に入るものがなく、方向の感覚が失いそうになりかけていた。
それでも迷わなかったのは一定の方角がわかる魔道具があり、事前にそれを作っておいたおかげである。もちろんその魔道具もポチおのレシピに書いてあったもので『こんぱす』と呼ぶようだ。
理屈はレンにはよくわからないが、この魔道具は整備もしやすく方角も分かるので便利に感じていた。レンたちは半日ほど歩いたのだろう。地図を広げて『こんぱす』と地図の角度を合わせ、大体の距離を算出して位置を特定する。そうすると距離的にはそこまで進んでいないことが分かった。
それもそのはず、彼らはとても慎重に進んでいたというのが主な理由になる。もう一つ、理由として挙げるなら疲れていることも入ってくる。変わらない景色に、慣れない国外、常に魔獣や魔物に警戒を怠らないよう気を張っており、国内の時より疲弊していた。レンは口数が減ったサクラを見て、リコも見ると彼女もまた気を張りすぎて疲れが見えていた。
周囲を見ると丁度よい高台を見つけたので休憩を取ることにした。
「よし、ここらで休憩しようか。」
と声をかけると、二人は安堵したように深いため息をついた。収納カバンから敷物を取り出し、軽食の準備を始めた。とはいっても、ここまで魔獣と遭遇していないので缶詰か保存食を食べることになるのだが、それでも食事をすることで彼女たちの気持ちを和らげようとしていた。
二人が食事をしている最中、レンは地図を広げ、現在位置を確認していた。すると、サクラが干し肉をほおばりながら地図を見て、訊ねる。
「レン君、アタシたちは今、どの辺にいるの?」
「うん、関所がここにあって、このルートを通っているから、大体この辺だね。」
「この調子で進むと何日かかりますか?」
「……多分、二週間はかかるかもしれない。」
リコとサクラは見るからにがっかりしていた表情をしていた。それを見たレンは少し申し訳ない気持になっていた。レンは魔力量が少ないため、探知に割くことができない。
従って、魔獣の探知はサクラとリコ任せになる。そのことにレンは申し訳ないという感情を持っていた。
(もっとオレにも魔力があれば役に立てるのに……。)
無いものねだりだが、レンは切実に思った。
休憩を済ませ、片づけをしているとレンの何かが反応する。それはリコやサクラも同様に感じ取っており、高台から恐る恐る下をのぞくと魔獣がのそのそと歩いていた。茶色の体毛がびっしりと生えており、体は巨体ときた。魔力量はレンより多いことが肌で感じ取られ、レンはごくりと唾を飲み込む。幸い魔獣からは気づかれてはおらず、三人は顔を合わせてうなずいた。
ふくから命じられた任務の一つに魔獣と魔物の掃討があるのでサクラは高台から飛び降りて【幻揺】の魔道具で切りつける。駐在軍のゾウの皮膚より防御は薄いが、魔力の防壁でほとんど刃が通っていないようであった。レンは杖を取り出し、魔力弾で攻撃をしてみる。正面から当てたということもあり、頭に向かって打ったが、体勢を崩しただけだった。しかし、高台からリコがそれを見逃すはずもなく、岩槍を上空から落下させ胴体を串刺しにした。
それでもまだ動こうとする魔獣をサクラが魔力を魔道具の限界まで込めた斬撃で頭を切り落とすと動くことはなくなった。不意を突いたので一方的に攻撃し、難なく倒したレンたちは魔獣を解体していた。この魔獣の肉は野生の感ではあるが、美味しいと思い丁寧に肉を削いでいた。
「すみません。サクラさんの刃が通らなかったのを見て威力を調整しなくて……。食べられるところ少ないですね。」
「ううん、レン君も助太刀に入らなかったらアタシはまた怪我をしてたかもしれないし……。いい判断だと思うよ、ありがとう。」
「この肉、きっと美味しいよね?」
レンは削いだ肉を保存用の容器に入れ、ルナティクスを取り出し、複合魔法を組み上げて容器ごと冷凍する。
「これで今日の晩御飯が楽しみになったぞ。」
「レン君、昨日も思ったのだけど、その杖?の魔道具はいったい何なの?」
サクラは腰に下げている指揮棒型の魔道具に指を指して聴く。レンは得意げな顔をしてそれについて答える。
「これ?試作型なんだけど、保健室の先生やポチおさんの持っている魔道具の再現というか真似事みたいな?そんな感じだよ。」
「試しに使っても大丈夫?」
そう聞かれたレンはうなずいて了承する。サクラは近場の岩に向かって杖を振る。高速で魔力弾が飛んでいき、岩にぶつかるすると岩が爆ぜた。レンが使用するとせいぜい岩が欠けたり、少々ひびが入ったりする程度なのだが、サクラの魔力量となると威力が桁違いであった。想像していた威力より大きく、サクラが呆然としているとリコがサクラのところに来て目を輝かせて順番待ちをしている。
「わ、私にもやらせてもらえますか?」
「ど、どうぞ。」
と渡そうとすると根元からぽっきり折れた。
「あ……。」
三人は再び調査場所に向かって歩みを始めた。レンは折れた魔道具を眺めてしょげていると、サクラがそばに来て謝罪した。
「ご、ごめんね。レン君の道具壊しちゃって……。」
「ううん、大丈夫。もともと試作品だから、いつかは壊れる運命だったんだし。また直せばきっと使えるようになるよ!」
レンは壊れた魔道具をカバンの中に仕舞い、前を向いて歩く。それを見たリコは安心したように尻尾が下がる。
「昼までと違って歩くペースが速くなったのは助かりますね。」
「そうだね、さっきの弱い魔物だったんだろうけど、オレでも知覚できるくらいの魔力放出してくれているから探知に割かなくてもいいのは二人にとってかなり楽になったんじゃないかな?」
「そりゃあ、全然違うよ!探知はずっと魔力の範囲広げないといけないし、それで精神もゴリゴリ削られるときついよ。」
「楽になって良かったよ。この調子です——」
レンは片手を上げてリコたちを止める。レンの感でも複数いるのはわかる。そして、先ほどと違い、こちらに狙いを定めているというのも察知できた。
「複数の魔獣に囲まれている。あと、すごく敵意をを感じる……。」
「そうだね、動き的には群れで狩りをするタイプじゃないかな?もしかしてアタシたち、ナワバリに入っちゃった……?」
「では火の魔法で分断を狙いつつ、サクラさんはリーダーの討伐に行ってもらえますか?」
サクラはきょとんとしていた。先ほどといい、彼女の魔道具では歯が立っていなかったことを気にしていた。それもあり、サクラは慌てて説明をする。
「り、リコちゃん!?アタシの魔道具は魔獣にも通用しなかったんだよ?アタシじゃリーダーを落とすなんて……。」
「じゃあ、これ使う?」
レンは棒状の魔道具を取り出した。それは、駐在軍のクマを切りつけたときの魔道具であった。レンは調査資源の枯渇を心配していたが、部隊が全滅する可能性を考えると、そんなことも言っていられない。昨日整備した段階ではこの魔道具に損傷もなくまだまだ使用できる状態であったので、サクラに託した。受け取ったサクラは少し嬉しそうにレンを見つめる。
「また壊しても知らないんだからね?」
「大丈夫。もともとサクラさんのために作った魔道具だから。」
サクラの胸がドキンと高鳴った。その意味を彼女は知っていたので振り払うように首を横に振ってレンに背を向ける。
「レン君の人たらし!ばーか!」
と言い、走って魔獣の群れに向かって走っていく。
「えぇー……?」
「なんでサクラさんは怒っているのでしょうか……?レン君、サクラさんの援護に入りましょう!あのままでは危ないです!」
リコに促され、レンはリコの背中に手を当ててリンクを開始した。
いつもありがとうございます!
『良かった!』
『面白かった!』
『続きを見たい!』
と思って貰えましたら、
お話の下にあります
☆☆☆☆☆
から作品への応援をお願いいたします。
面白かったと思ったら☆を5つ
つまらないと思ったら☆を1つ
正直に伝えていただけると今後の作品にしっかりと反映していきたいのでよろしくお願いします。
また、ブックマークも頂けるととても嬉しいです!
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
何卒よろしくお願いいたします。