今日はゆっくり休む!
三人は駐在軍の兵士に取ってもらった宿屋に到着した。到着する頃はすでに夜になっており、三人が住んでいる町とは違い辺りは静寂に包まれていた。宿屋に入ると、鼠族の男性と女性が受付に立っていた。男性はムスッとした無愛想な表情で逆に女性の方はニコリと笑いとても愛嬌のある顔であった。
「いらっしゃいませ!もしかして学園の子たちですか?わたくしはここの宿屋の女将をしています。こちらは亭主です。」
「はい。オレたちはフォクノナティア学園からきた学生です。駐在軍の方にこちらの宿で予約をいただいたと伺ってますが……。」
「はい。連絡は届いておりますよ。学生さんなのに大変ね。お部屋とご飯も準備できているからいらっしゃい。」
三人は案内されるとまずは食堂でご飯を提供された。すべて駐在軍の経費で賄っているので好きなだけ食べてもよいと言われ、三人は満腹になるまで平らげた。それでも余る量のご飯だった。どうするのか気になったが後ろには小さな子供の鼠族がたくさん控えており、残りは彼らが食べてしまうのだろう。子供に残飯を提供するのに躊躇していたレンに気づいた女将は近づいて説明する。
「あら、残飯だからって気にしなくてもいいのよ?わたしたちは種族的にこの方がいいの。いつものことだし、ね?」
種族の特性についてはレンたちもよくわかってはいないが、そういうものなのだろうと受け入れることにした。種族で差別するのはこの国では御法度だからである。三人は宿の部屋に案内されると、サクラはあくびをしながら「おやすみ~」と部屋に入っていった。二人はその隣の部屋に入ろうとすると女将が引き留めた。
「あなたたちは番<つがい>なのよね?」
二人は頷いて、左腕に着けている腕輪を見せた。女将はそれを見てとてもウキウキした表情をしていた。
「まあ、若いのに凄いわねぇ。それでね、申し訳ないのだけど、うちは樹の家だからね、夜伽は控えてほしいの。」
亭主が歩いてきてレンの耳元で呟く。
「壁が薄いから丸聞こえだ。それに、においでほかの客も発情しては困る。」
そういわれ、レンは「ぼんっ」と何かが爆発した。恥ずかしいのか尻尾を左右にブンブンしていた。猫が鼠に負けた瞬間である。鼠族の女性はクスクスと笑う。
「若いっていいわねぇ。でも、本当のことだからお願いしますね?」
と二人に念押しられた。リコは少し照れてはいたが、平常心を装っていた。部屋に入ると二人用のベッドが一つ置いてあり、机と椅子が備え付けてある。部屋の奥には大きな腰窓があり、明るい時は町が一望できるような感じであった。床材は木の板で歩くとミシミシと音がするが、抜け落ちるような古さや音ではなかった。リコが突然振り返り、レンの足元を見た。足を気にしているようなリコの行動に戸惑っていると、リコは気になっていたことを口にした。
「レン君って、靴を履いていないと足音がほとんどしないのですね。」
「あ、うん。たぶん猫族だからかな?爪が床に当たらないから音がしないのかも。」
「うらやましいです。床材はしっかり【防護】の魔法であらかじめ強度を上げておかないとすぐにボロボロになるのです。」
レンはそれを聞いて「なるほど」とポンと手を打つ。レンは今の自宅に住んで一度も床材を張り替えたことがない。借り家で物心がついたときから借りている部屋だ。
床は傷付かないのだが代わりに柱や壁が犠牲になっていることはリコに言わず、心の中にしまっておくことにした。リコが部屋を物色して、扉を開けるとそこは浴室であった。リコは浴室を見てワナワナと震えていた。
「ち、小さい……。これじゃ、一緒に入られないじゃないですか!」
「リコさん家のお風呂が特別大きいんだよ?オレの家もこのサイズだし。」
「そうなのですか?では、一人ずつ入ることにしますか……。」
一緒に入られないことがわかり、リコはしょんぼりと耳と尻尾を下げて浴室に入っていった。レンはその間に魔道具の整備をすることにした。
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